ピーンポーンと間延びしたチャイムが鳴った。
これが試合開始のゴングだと気付かず私は玄関を開けて疫病神を招き入れた。
「よお、飯なに?」
「は?なんで来るの?」
扉の向こうには奴、昔の彼氏だった人間が平然と佇んでいた。
閉めようとするもするりと入られてズカズカ上がりこむ。
決断力があって真っ直ぐ進む人で素敵とか思っていた過去の私を殴って目を覚ませたい!
これはただのケーワイだとリビングに入られる前に阻止しようとするも奴は扉を開けてしまった。
「おー!鍋かー・・・ってお客さんいた・・・の?」
視界にはしっかりばっちり見えているだろう寛ぎスタイルを見てよく言えるねと思った。
なんとなくスネイプの後ろに般若が見えて自分の家だというのに逃げ出したくなった。
「・・・人の家に家主の許可もなく上がりこむとは・・・死んで詫びるかね」
お帰りはそちらと指されたのは玄関ではなく、バルコニー。
多分其処からだと天国オア地獄一直線コースだよ。
そしてケーワイ君は超ケーワイ君だった。
「あ!のお父さんか叔父さんですか!!」
もうお前の名前は空気読めなくてすいません蔵とかにすればいいよ。
吹雪が彼の背中から吹き荒んだのはきっと錯覚ではないと思う。
「さて、。説明して貰えるかね」
鍋がグツグツと煮え滾る前での冷静そうな台詞が怖い。
いつちゃぶ台返しで鍋が凶器になるかと冷や冷やしそうだ。
「えっと・・・前に付き合っていた人で・・・」
「違うだろー。お父さん、いや叔父さん?っすか。俺とは今も付き合ってマース」
もういっそ死んでくれないか。
そう思った私を許して欲しい。
だって怖い。
笑みが黒い。
さすが悪魔、なんて感心する余裕がないくらいに恐ろしい。
「ほう、面白い話だ。一つ教えてやろう、青年。我輩はと血縁関係にない」
「そうなんすかー」
「そしてもう一つ。我輩は此処に住んでいる。他人の男女が一つの部屋に住む理由はわかるかね」
にっこり。
とてもイイ笑顔でした。
「ッ!?」
私は手招くスネイプの隣に近づくとようやく気付いたらしいケーワイ君に言った。
「紹介するね。お付き合いしてるスネイプさん」
ええ、もうやけっぱちでチョーラブラブなのーと付け足しましたとも。
「あ、俺・・・え、と・・・帰り、ます」
ふらふらと退場する奴の背中にさっさと帰れと念を送っていた男は扉の向こうに姿が消えた途端塩を撒いた。
そしてこういったのだ。
「、覚悟は出来ているだろうな」
と物凄くイイ笑顔で。
そしてその翌日、スネイプは部屋から消えた。
私は広くなった部屋にただ呆然と立ち尽くしたのだった。