「・・・・っ!」
息を呑む。
そして寝る前、つまり昨夜の事がフラッシュバックする。
嗚呼、夢オチじゃなかったかー。
しぶとく残っていた希望の光も隣の温もりによってぷちっと潰された瞬間だった。
最近の冷え込みは酷い。
火の気のない部屋に帰ってくる度に思い、毎朝目覚める時にも約束のように思うのだが今日は違った。
「・・・あたたかーい」
つい口に出してしまったが致し方ない。
ついでに目の前の温もりに擦り寄ったのも許して欲しい。
寒いのは嫌だ。
布団の中は私一人ではなかった。
魔方陣から呼び出された悪魔・・・のような男、スネイプが死んだように眠っていた。
こんないい歳したオッサンがくうくうと可愛らしく寝ていても恐いが地蔵のように動かないっていうのも恐いな。
日本人にはあまり馴染みの無い濃い顔と呼ばれるだろう容貌を見つめながら思う。
っていうか死んでないかこれ。
あまりの寝息のなさに恐くなった私は手を伸ばした。
それは心配から等と言う可愛らしいものでなくここで死なれたら困る、という身勝手すぎる理由からだったりする。
身元不明の男が同じ布団で死んでました。
なんて誰に言える。
最悪の場合、殺人罪だしそうでなくてもさん家のお嬢さん、見ず知らずの男を泊めてその人亡くなったそうよ。
人は見かけに寄らないわねー、あんな普通のお嬢さんなのに。
そんな噂が立ったら見合いも来ない。
別に見合いがしたい訳ではないがこれからの人生真っ暗になるのは間違いない。
むぎゅ。
だから摘んだのだ。
無駄に高くて形のいい鼻を。
「いーち、にー、さーん・・・」
あ、眉間の皺が増えた。
「っ!やめんかっ・・・貴様は我輩を殺す気かっ!」
だからこんなに怒る事はないと思うのだという説明を正座して怒られた時に言えば何故だかがっくりと肩を落とされた。
「いやー、スネイプ先生が生きてて良かったです」
「今、お前に殺されそうだったのだがな」
そんな男の言葉はあっさりとスルーされたのであった。