「ただいまー」

帰ってきた我が家・・・というか我が部屋に転がり込む。

後から続く男が慣れないというように靴を脱ぐ。

彼の手には今日買い込んだ彼の必要とする日用品や服が紙袋に大量に入っているのだ。

そしての手には近くの店で予約しておいた料理があった。

の住んでいる近くに凄く美味しいイタリアン料理のお店がある。

午前中は近所の奥様がゆったりタイムを過ごし、お昼のランチは近くの会社勤務のお姉様が溢れ、夜は恋人達や出会いを求める男女の出会いの場となる。

だからクリスマスなんてイベントはそのお店の席取りは凄く競争率が高いものになる。

幼稚園などで行われる椅子取り合戦なんて目じゃないくらいには。

だから彼女も予約を入れていた。

二ヶ月も前に。

流石に学生なので席の予約する度胸はなくて料理テイクアウトの予約だったが。

なので今、テーブルの上にはとても美味しそうな料理が並んでいるわけだ。

「此処のパスタは言うまでもないですがピザは凄く美味しいんですよ」

開けてもらったワインをグラスへと注ぐ。

私は簡単に作れるカクテルでアルコールというよりジュースだが気分は満点だ。

「ではメリークリスマス」

「メリークリスマス」

イブだがなと言う男に日本ではイブの方が盛り上がるのでと笑う。

取り分けたパスタの皿を渡して自分の皿にピザを取る。

サクサクの生地と濃厚なチーズに太るなぁと思うのだが今日だけは目を瞑ろうと苦笑した。

カクテルの中にゆらゆらと揺れるさくらんぼがツリーに飾られた電飾みたいだなんて思う。

「迷惑ばかり掛けるな」

魔法界の話をしてもらっていた時にふとスネイプ先生がそう言った。

ワインはもう半分くらい減っていてそれでも酔っているようには見えないのがすごい。

「迷惑・・・ですか?」

「ああ、我輩を呼び出したのはお前だが。それでも色々金銭面や生活面でも迷惑を」

続けようとした男の言葉を失礼だと知りながらわざと遮った。

酔っていたのかもしれない。

「迷惑なんかじゃないです!スネイプ先生、貴方は私へのクリスマスの贈り物なんですよ」

カクテルやそれに含まれるアルコールにではなく、その場の雰囲気に。

「クリスマス・・・プレゼント、か」

暫く驚いた様子だったスネイプはそれからゆっくりと口を開いた。

「我輩など贈られて喜ぶ女はお前くらいだな」

その時の呆れたような、でも何処か楽しそうな笑みに私も嬉しくなって笑った・・・ような気がする。

気がする、というのはそれからの記憶が曖昧だからなのだが。

「あのー・・・これは一体どういうわけですかね」

翌朝のクリスマスの朝に首筋にはっきりくっきり着いていた所謂、所有印というものの存在の意味を聞いたのは言うまでも無い。