あの日から聞くに聞けないままの数日がただ過ぎていた。

質問をしたのだがなんというか欲しかった答えは貰えてなかった。

記憶が無いという事を隠していたのがまずかったのかもしれない。

けれど記憶がない事を話すのは気が引けた。

怖いのだ。

覚悟もないままに私の行動に責任を取れないままの今の状態がとても、怖い。

本当の本当に私と彼はそーゆー事をしたのか?

どうしてそんな事になったのか?

もしそうなら私は何か言ったのだろうか。

疑問と不安をあげていけばキリがない。

不安は不安を増殖させてとてつもなく大きく膨れ上がる。

その大きさは私を飲み込むほどで。

そんな事態を引き起こした当事者の一人であるというのにスネイプ氏は毎日がそれなりに楽しげで憎らしい。

B級ホラーをくだらんと言いつつ鑑賞したり教材としては些か専門的過ぎる資格試験対策の教科書を読み込んだり

ウォシュレットの機能に驚いたりとなかなか忙しそうである。

あの叫び声はなかなかに面白かったと思い返すだけで笑えるが命が惜しいので口には出さないようにしている。

そして今、スネイプ氏はソファーに横になっている。

いつもきちんとしていると思っていた彼の寛いでいる姿というのはとても珍しく嬉しい気もした。

気付けば頭を撫でて髪を梳いてくれる手指はとても優しく、それが馴染むのが酷く恐ろしい。

彼はいつか帰る人なのだから。

肌の上にいまだ残る名残を指先でなぞりながら自らに言い聞かせた。















「あの日の事を説明してくれませんか」

勇気を振り絞って口にしたのは不安に飲み込まれる寸前。

スネイプ氏はあっさりと答えてくれた。

「あれは・・・単にどちらが早く寝るか競争した結果だ」

「はあ!?何ですか、それ」

思わず聞き返したのは仕方ないことではなかろうか。

というか、何その色気のない変な勝負!!

どうしてそれがアレに繋がるのだ!という心の声が聞こえたかのようにスネイプは続けた。

「お前がさっさと勝負と言い出して寝はじめてちょっと待てと起こしたら、じゃあどちらが上手く所有印を付けられるかになったのだ」

「何故にそんな流れに!?」

「単に寝惚けていたのではないのか?」

飄々として答える姿に脱力する。

あ、そーですか。と適当な答えを返せただけマシだろう。

あの悩みに悩んでいた時間はなんだったのかと思うと特大の溜息が零れ落ちた。

「まあ、最後には我輩の圧勝だったがな。ユウコが我輩に勝つなど百年早い」

訳わからない程に自慢げなスネイプ氏に私がむかっ腹を立ててクッションを投げ付けたのは数秒後。