しんしんと降りしきる雪
ホグワーツ魔術学校教員、魔法薬学スネイプ教授は静けさを味わっていた。
常日頃生徒達が溢れているホグワーツは騒々しい。
そんなに何が楽しいのだと常に苦々しく思うのはスネイプ自身が静寂を好む性質だからだろうか。
そんな生活の中スネイプの周りは他よりはいくらか静かだったのだが。
とある少女の存在がその静寂を壊したのだ。
「スネイプ先生が好きです」
ホグワーツの大広間で告げられた言葉はあの大広間を静寂で満たし
その後阿鼻叫喚を引き起こした。
阿鼻叫喚の一例を挙げるなら
「なんでそんな陰気くさいのがいいんだぁ」
「僕の方が将来有望だ!」
「趣味悪過ぎる」
・・・・・・・・・・である。
スネイプが一言でも喋った生徒に減点をしたのは言うまでもない。
「何を言っている。寝言は寝てから言え」
そう言ったのだがその告白をした・へ心を寄せているらしい生徒の一部が
スネイプのわずかに(憤りのため)染めた頬やいきなりな告白に驚いて(いつもより)豊かになった表情に勘違いしたらしい。
『・に近づくな!』
といったスネイプとしては勘違いも甚だしい無記名の手紙が届くのである。
「向こうが近づくの間違いだろう」
毎日のようにやってくる少女に溜息をつきつつ質問に返答する毎日が続いていた。
「残念だなぁ、はクリスマス帰っちゃうんだ」
そんな声が聞こえたのはスネイプが大広間を退出しているときだ。
は仲のいいウィーズリー家の誰かと喋っていたのか。
これで静かな休暇になる。
そう思ったスネイプだった。
暖炉に燃え上がる火がスネイプを暖めていた。
クリスマス休暇で生徒の少ない静かな空気の中研究書を読み進める。
新年を迎えるにはふさわしいとスネイプは半ば満足しながら394ページを捲った。
コンコン
ノックの音が静寂を遮った。
「開いている」
静寂をかき乱される事が不快で自然と眉間の皺が増える。
「失礼します」
「なっ・・・・・・・・」
入ってきた人物にスネイプは驚かされた。
その人物とは帰省しているはずの少女だったのだから。
「・・・。何故貴様がここにいるのだ」
ローブや長い髪に雪が降り積もっていてそのままだと風邪を引くことは間違いないように思われた。
「先生と新年を祝いたくて」
にこりと笑う顔は寒さのせいか赤くなっていた。
「風邪を引かれても困るからな」
魔法でローブを乾かすと髪を拭けとタオルを渡した。
「ありがとうございます」
受け取り髪を拭く少女を待ち手が止まったのを見計らって口を開く。
「拭き終わったなら自分の寮のベットに戻る事だ」
さっさと出て行けと言う態度のスネイプには嫌ですと返事をした。
「私は先生と新年を祝いたくてホグワーツまで戻ったんです」
「我輩は頼んだかね?『ミス・我輩と新年を共に祝ってくれ』と」
「いいえ」
俯いて呟いた返事は擦れていた。
「大体冗談で好きだと言われても我輩は迷惑なだけなのだが・・・」
ふうと溜息をついて少女を見やれば肩が震えていた。
「冗談だと思っていたんですか」
その言葉にスネイプは僅かにだが瞳を眇めた。
「ずっと私が先生をからかって好きだと言っていたと思っていたんですね」
返事を求める強い口調にやや気圧されながら言葉を紡ぐ。
「あんな人前でグリフィンドールのしかもウィーズリー家の者と仲の良い生徒に告白されても信じれる方が不思議だろう」
「・・・・・・そうですか」
スネイプはの長い髪や白い肌を見下ろしながらどうしてこの・という少女がいるだけでこうも静寂が乱されるのかと考えていた。
ホグワーツの時計が一斉に十二時を示し新年の幕開けをカウントダウンし始める。
「それなら・・・・・」
「どうした?」
「私がどれだけスネイプ先生が好きか教えて差し上げます」
「な・・・・・・・んっ・・・・・・」
いきなり押された反動で後ろのソファーに座る形になりそしての唇が追いかけてスネイプのソレと重ねられた。
「・・・・・っ・・・」
がいるのに静寂とは珍しいと止まった思考はよくわからない感想をはじき出した。
「・・・・これで私がどれだけ好きかわかってくださいましたか?」
真っ赤になったはまだ驚いてるスネイプにそっと囁いた。
「A Happy new year ミスタースネイプ」
その後スネイプが訪れた静寂にどう対処したかは二人だけの秘密。
とにかく休暇が終わった頃スネイプと・の交際がホグワーツ公認になっていた事だけ記しておく。