左手の薬指
その先にあるという赤い糸
灯りに透かして見ても見えるはずも無く
つまらないと口を尖らせた
「何をしている」
背中にかけられた言葉。
それって酷いと思うのは仕方ないと思う。
「先生が相手してくれないから一人遊びです」
むうと不機嫌そうに尖らせた少女はやはり左手を灯りに翳している。
「手に何かあるのかね」
そっとスネイプに比べれば小さな手をとって見る。
変哲も無いただの腕。
すんなりとしていて柔らかい。
愛しい少女の一部。
「ここにですね」
指されたのは薬指。
赤い糸がついてないかと思って。
そう確かに聞こえた言葉に何を馬鹿なという表情をスネイプはした。
「赤い糸だと?そんなものは本当にあるわけがないだろう」
呆れたような声にでもっ、とは言い返す。
「あると思いたいじゃないですか!」
その瞳は潤んでいて今にも泣き出しそうだ。
「な・・・何も泣く事はないだろう」
慌てて言い募るスネイプにぐすりと少女は鼻を啜った。
「だって私がどんなに先生を好きか知らないからそんなことが言えるんですよ!」
先生はいつも仕事で忙しいし
私はいつもほったらかされているし
赤い糸が先生に続いているという確証が信じたいのに
愛される理由付けが不安な心には必要なのに
「せん・・・せいにはっ・・わかんないですよねっ・・」
ポロポロと零れた涙に一つ溜息を吐く。
何を不安に思うのだ、この少女は。
こんなにも自分が涙一つに動揺し心をかき乱されるのは以外ないというのに。
「赤い糸など空想の産物ではないか」
その言葉にびくりと身を竦ませる。
「大体ありもしないモノを探すよりももっと確実な方法があるであろう?」
そういえば何?と不思議そうに不安そうに見上げられた。
「赤い糸が我輩と繋がっている保障はない」
「でもっ・・・・・!」
「赤い糸があるという確証もどこにもない」
「・・・・・・・・」
「ただ我輩は、お前を愛してる」
耳元で囁いた言葉にびっくりした様子の少女。
態度で示していたつもりだが忙しかった最近を思い出しの葛藤に罪悪感と少しだけ嬉しさを感じた。
愛するが故に不安になってくれたのだという思いが沸く。
「言葉の方が残らないが赤い糸よりもずっとはっきりしていると思わないかね?」
ちゅっと頬にキスを落とせば少しだけ涙の味。
「そうですね・・・・」
まだ不満の残る様子のに何故そこまで拘るかと疑問を抱く。
「じゃあ私の赤い糸は先生に繋がってないのかな?」
不思議そうにまたしても掲げられた左手。
それはスネイプにしっかりと握り締められた。
「馬鹿なことを。赤い糸があることは証明できないしこれからも証明されないがあるとしたら我輩に繋がっているに決まっているだろう!」
繋がっていない糸なら切って繋げてやろうではないか
そう不機嫌そうに宣言したスネイプにくすくすとは笑った。
赤い糸という観念を馬鹿らしいと言った本人が其処まで言ってくれるという事実が嬉しくて。
「先生、きっと繋がってますよ」
にこりと笑ったが愛しくてスネイプはゆっくりと口付けた。
視界の端に映ったモノ。
「・・・・え?」
しっかりと繋がれた赤い糸が見えたように思えたがスネイプのキスによって忘れてしまうなのであった。