目が覚めたのはお昼前。
休日で目覚ましをかけていなかったのを思い出す。
隣には昨夜遅くに帰ってきた恋人。
イギリスを代表する名俳優。アラン・リックマン。
このところの彼の仕事量は半端じゃない。
映画に舞台と大活躍。
監督や声優なんかもしててチャリティーにも出席してる。
全てがオフの日なんて滅多になくて。
私だって彼が頑張っているのは邪魔したくない。
アランの一番のファンは私だと思っているから。
けれどもう少し身体を労わって欲しい。
ファンではなく恋人として―――――そう、思う。
「少し痩せた?」
裸の胸に頬を寄せるととくとくと規則正しい鼓動が聞こえた。
「いや、少し太ったよ」
笑いの混じった声に顔を上げるとキスが落とされた。
「おはよう、アラン」
「おはよう」
額にかかった髪をかき上げられてそこにもキスをおとされる。
「で、私のレディーは何を考えていたんだい?」
ファンの間で呼ばれるヴェルヴェットボイスが心地よく耳をくすぐる。
マイレディーと言われるのは凄く幸せで。
「・・・・・貴方が無理してないか、ね」
「ロケ先でサンドイッチを食べ過ぎて太ったのはその中に入るのかな?」
ポーカーフェイスが上手すぎてはぐらかされてしまう。
「どこが太ったっていうの」
そう言って腕とか首とかに手を廻してみたけれどあまり変化はないようだ。
「お腹かな?」
「そう?」
触ってみてもよくわからず手のひらで撫でてみる。
「まあに嫌われたくないからすぐに戻したけれどね」
くすぐったいよと笑う彼に笑い返す。
「私がアランの事嫌いになるわけないじゃない」
アランは肩を竦めて言った。
「いや、私が凄く太ったりハゲたりしたら嫌だろう?」
「うーん、太るのはいいかな?少し前より痩せてるみたいだし。ハゲねえ・・・・隠す人は確かに嫌だな」
すっぱり自分から剃っちゃう方がカッコいいでしょ?というとアランはくすくすと笑ってた。
「でもアランなら好きよ」
ギャラクシークエストのとかげヘッドもカッコよかったし。
ぎゅっと抱きしめると彼が隣で寛いでいる現実に嬉しくなる。
「だから自分をもっと労わって頂戴」
「わかったよ、ありがとう」
アランの声に混ざった喜びの色に照れくさくなってベットから抜け出した。
「今日は私がうんと甘やかしてあげる」
だからもう少し寝ててねと年上の彼にキスをした。
キッチンで作った朝食。
二人分をトレイに乗せて寝室へと運ぶ。
ベットで台本を読んでいたアランの前にトレイを置いた。
「さあ召し上がれ」
「こんなにされると自惚れてしまいそうだよ」
そういって朝食をぺろりと食べる彼が愛しくて仕方ない。
すぐに空になったトレイを近くのテーブルに押しやった。
「自惚れ屋さん、他に欲しいものはないかしら?」
からかうとアランは面白い事を考え付いた子供みたいに口の端で笑った。
「あとは君だけかな」
広げられた腕に閉じ込められて再び眠りについた。
二人が起きるのはもう少し後の話。
あとがき:神楽様のリク「英国紳士なアラン」です。
マイレディーと言わせたかったのです。
書いてる途中チキン肌警報鳴りっぱなでしたが。
神楽様のみお持ち帰りできます。