普通なら、ひとは見たくないものは見ないのだ。
見れない、といった方が正しい。
つよくなく、そして自分に甘いから。
あの子の好きなミルクティーよりも甘い甘いのだから。
けれど貴方は違うのだ。
真っ直ぐ真っ直ぐ。
ひとが見ない、目を背ける真実をその強い眼差しで見つめてしまう。
いや、探り出してしまうのか。
その好奇心と貴方なりの正義感が貴方をつよくし目を開かせ秘密を暴いてしまうのだ。
薄い瞼を閉じてしまえばいいのに。
何度そう思っただろう。
その暗い双眸を瞼と闇で覆い、真実を見ないですめば貴方は傷つかなかったかもしれない。
真実こそが何よりもつよく酷く貴方を傷つけるのだから。
それでも貴方は真実を見つめ続けるだろう。
それが彼なりの正義であり、彼なりの真実から受けた痛みへの仕返しなのだ。
ささやかでありながら貴方をなおさらに傷つける行為だというのにやめないのはきっと。
貴方が強いひとだから。
その傷ついた心を、今も止まらない血潮を曝け出せば傷もふさがるだろうに。
誇り高く、大人な貴方は強い人であり続けるのだろう。
差し伸べられた手を貴方はきっと掴まない。
それは貴方なりの自らの守り方。
貴方と貴方の周りの者を守るための。
ただ向ける眼差しだけが酷く強くて私は酷く落ち着かない。
嗚呼、貴方が弱い酷いひとだったらよかったのに。
そう言って泣いても貴方はただその黒い眼を向けてくるだけなのだろう。
貴方は強いひとだから。
私は愛したのだ。
貴方は強いひとだから。
願わくばいつか私の手を取ってくれる勇気を持ってくれることを私は信じてる。
貴方は強いひとだけど私にとっては愛しいただの愚かな大人の男のひとだったという話。