沢山の宝の中からそのランプを選んだのは特に理由などなく。

いや、単に長い買い物をさっさと終わらせたいというささやかな願いの末の結果である。
















母の親戚の友人という薄い繋がりの知り合いの店に行った時に一つだけ選んでいいと言われて選んだもの。

「汚いランプ」

油で汚れているランプをローブの裾で拭く。

キュッキュッといい音がして錆び付いたランプが少しだけ綺麗になる。

「これは磨き粉とかないと駄目かな?」

歯磨き粉じゃ代用できないだろーか。

うーん。

考え込んだ少女はすぐにその考えを中断させられた。

モクモクモクモク

いきなりランプから出た煙。

「なっ・・・・・・・!」

げほげほげほっ

火災訓練かと言いたくなるほどの量の煙に咳き込んだ。

「マスター、我輩はランプの精。いわゆるジンだ。願い事を言いたまえ」

目の前に立っているのは筋肉ムキムキのマッチョで愛嬌のある大男・・・・ではなく顔色の悪い不機嫌そうなスネイプ先生。

愛嬌なんて欠片も見つけられないし。

「マ・・・・マスターって私!?ご主人様って言うわりには態度大きくないデスカ?」

苦手な人物の登場に押されつつ突っ込むと眉間の皺が+2増加。

「我輩はジンだからな。それ相応の態度をとるのだ」

いや、ディ○ニーのはも少し腰低かったような・・・とは言えなかった。

出てくるなら紅茶の精とか葡萄の精とかの方が良かったなぁ。

可愛いし面白いはず。

「さっさと願い事を言いたまえ。我輩は研究を置いてまでわざわざ出てきてやったのだからな」

迷惑だという口振りに速やかに帰ってもらえないとお説教が始まってしまう!と焦る。

生憎お小遣いを貰ったばかりでお金が欲しいとは思わない。

昨日までなら「お金が欲しい」って言ったのに。

「じゃあ彼氏!彼氏が欲しいです」

友人が彼氏欲しいと言っていたなあと思い出して慌てて口にする。

・・・・・・あれ?

何か忘れたよーな?

「了解した」

「ちょっ・・・・待ってください。友人です。友人っ!」

「願いはもう聞き届けられた。変更は駄目だ。だがジンは人の心を動かす魔法はタブーだ」

「あ・・・・そっか」

そういえばそんな事言っていた気がする。

「だから我輩がお前の恋人になってやろう」

「・・・・・・・・・・・えー!!!!」

ビックリしたが見上げると一段と不機嫌そうなスネイプ先生。

「何か文句でも」

「い・・・・いや・・・」

あります!とかいやデス!とかいう言葉は一睨みで喉の奥に仕舞い込まれた。

「では恋人なのだから名で呼ぼうか。、二つ目の願い事はあるかね」

「じゃ・・・じゃあ今の願いはナシにしてください。それが二つ目の願いです」

これで0に戻るはずとあと一つと脳内の願い事を検索始めていた。

「我輩はそんな適当な願いは聞きかねる」

「えー!」

ランプの精が願いを選り好みするってどーよ!?

「しかし他の願い事ならばきちんと叶えてやろう」

にやりと笑う姿は正にスネイプ先生。

ないのか?というスネイプ先生にくっと屈辱を感じる。

こうなったら叶えられない願い事を言ってやろうと考える。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「まだか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「まだかかるのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「そろそろ研究に戻りたいのだが」

「五月蝿いですっ!少しは黙っててくださいっ」

・・・・・・・・あ。

「了解した。黙っていよう」

簡単に叶えられる願いを口にしたは悔しさに歯噛みする。

むっつりと口を閉ざしたスネイプ先生はの椅子に座って手近にあった本を読み始めた。

凄く違和感を感じるのにどうしてこの人(ジン)は態度が大きいのだろう。

「・・・・・・・あった!」

「なんだね」

ん?と視線だけで問われる。

「スネイプ先生を解放します」

ジンの契約を破棄しますからと言えば驚いたような表情をした。

「三つ目の願い事はそれでいいのかね」

「はい、お願いします」

ホグワーツにいるわけでもないのにスネイプ先生と向き合うのは遠慮したい。

「了解した」

モクモクモクモクモク

スネイプ先生が出たときと同じような煙が現れた。

もうサヨナラなんだなとかこれで悩まなくっていいんだとか少しだけ・・・寂しいとか思ってる自分がいた。

「サヨナラっ・・・・スネイプ先生・・」

涙が浮かびそうになるのは嬉し涙だと言い聞かせる。

お茶のひとつも出せばよかったなんて思ったり。

「残念だが、まだいるぞ」

「はい?」

感動の別れ・・・・・のはずがなぜだかまだいるスネイプ先生。

しかも本物のようだし。

「あのー・・・まだよく理解できないんですけど」

?が頭の周りを飛び回っているのに気がついたのかスネイプ先生は苦々しげな表情でこう言った。

「新しく手に入った古書にかかった魔法に捕まってしまってな。ジンにさせられていたようだ」

助かったといわれて目を丸くする。

「あとあの願い事だが喜んで我輩が叶えてやろう」

「え?」

一つ目の願い事だといって扉をかちゃりと開けた。

「お前の両親に挨拶の一つでも恋人ならばすべきであろう?」

ちょっ・・ちょっと待ってくださいよ!と止めるの言葉も聴かずスネイプは

の両親からなし崩しに娘の恋人だと認識されたのだった。

クリスマス休暇中に起こった出来事である。