私に触れる冷たい手がスキ
薬指に嵌められた冷たい指輪の感触がキライ
冷めた口付けがスキ
冷めたココロがキライ
私達は不実の二枝
屋敷には誰もいない。
月に一度の逢引の日。
最小限の明かりの中浮かび上がる銀の髪。
そっと腕を伸ばし首に廻した。
「裏切り者には死を?」
その言葉に彼が口の端だけで笑みを象ったのがわかった。
「形だけの結婚でもか?」
そういって落とされた口付け。
嘘吐き。
ずるくて酷くて愛しい人。
「指輪を外すくらいは我儘言っても構わないかしら」
にこりと笑うと面白いという瞳で見返される。
「お前が外すか?」
差し出された手に光るエンゲージリング。
自分で外そうともしない目の前の男は傲慢に笑う。
「切り落としたいわ」
薬指を掴み口に含む。
長く男性にしては細い指。
「そのまま噛み切ればいい」
頭を撫でた彼の右手はsakuraの左頬を撫でた。
「そんな事をいってもいいのかしら」
視線を合わせば冗談など言いそうにない男の姿。
「噛み切ればソレはお前のものだぞ」
甘い誘惑の言葉。
「ただし私のモノでもなくなるが」
付け加えられた一言に興味が失せる。
「要らないわ」
指輪が嵌ったままの薬指に嫌悪感を感じながら彼の一部分であるという事実にキスを送る。
「約束など要らない」
月に一度の逢瀬もルシウスの気まぐれで良かった。
ただ彼が来なくてもsakuraは待ち続けるだけだ。
息が止まりココロが彼を求めなくなるまでは。
「そういえばスネイプが此処に来たらしいな」
「二週間くらい前かしら」
ぐいと引き寄せられた。
「抱かれたのか?」
耳元で囁かれた言葉に驚く。
答える前に奪うような口付けで黙らされた。
「他の男に抱かれてみろ」
殺してやる。
そう言われてなんて勝手だろうと思うと同時に嬉しさが胸に込み上げる。
ずるくて酷くて愛しいルシウス。
「貴方は他に浮気しているのに?」
知らないなんて見くびらないで自分の他にあと二人はいるのを知っているから。
「それでも・・・だ」
一人は闇の陣営のため、一人は仕事の都合上だと言われると本当にずるいと思う。
自分といて彼が得られる利益なんてないと知ってるから。
「sakuraが嫌なら二人とも別れるが」
本当はそんな事思ってもないのでしょう?
私は彼が求める答えを差し出す。
「良いわ。別に気にしないから」
そういえば貴方は満足なんでしょう?残酷な人。
「ねえ、私達実をつけない二枝ね」
肌を滑る手に震えながら囁く。
貴方の子供は彼女しか産めないから。
「詩人だな」
「ふふ・・」
耳元で全く気がつかないルシウスに、そして気付いて欲しいのかわからない自分に笑った。
不実の二枝に実がなる日は永遠に来ないのだろう。
彼が自分から去る日をカウントダウンし始めた日の思い出。