蛇、とは魔法界の純血主義には特別な生き物であり隠語でもある。
蛇とは闇の主を、もしくはその部下を指しまたはホグワーツという魔法界屈指の学校の中の寮をも示していた。
それは一重に寮のモチーフが蛇であるだけでなく、集まる生徒達の気質故のものでもあった。
スネイプの腕の中には女がいた。
柔らかい透き通る白い肌は心地よい温もりを与え僅かに甘い香りを放ちながらそこにあった。
彼女は蛇食らいと呼ばれていた。
強さと美しさから女王などとも崇拝者に呼ばれる彼女はスネイプと合間みえ何を思ったか彼の元へとやってきたのだ。
彼女の言い分は興味がわいたという単純なもので照れや恥じらいなどはなくそこをまた男は訝しく思いながらも
彼女と関係がある事は仕事にマイナスではなかった為に受け入れることとなったのだ。
「何が目的だ?」
我輩の命か?それとも貴様等の言う汚れた血の無数の命を奪う方法か?
スネイプは女のあまりに無防備なようすに苛立ち問い質した。
理由を聞けずとも釘をさしておこうとしただけだったのだが。
「別に前に言った通りだが?それと命などいらない」
そんなものなんの役にも立たん。
まどろみを邪魔されたせいか些か不機嫌な色を含む声がスネイプの耳を打つ。
またかと男は溜息を噛み殺した。
女は何も言わないのだ。
愛だ、恋だと青臭い言葉を吐かれても困るのだが真意も見えないままで抱き合えるほど擦れていない自らへの不満故だ。
そして女が自らの目的を知っていたことに対しても不審を拭えないでいる。
「お前が何を思って何を為すかはお前の自由だ。私は何も言わないし聞かない」
お前が話したがらない限りは。
そう言って再び眠ろうとした女の肩に手を伸ばした。
「我輩の目的を悟っているのに何故それを帝王に話さない」
これは一種の賭けだった。
あまりにも無防備すぎる女の真意を知るための。
「私は好きで蛇に属するわけではない。そして他人にプライベートを話す趣味はないからな」
これはお前と私だけのものだろう。
にやりとした艶やかな笑みにスネイプはくらりと眩暈がした。
ずきずきと頭痛がしそうな状態に頭を抱えたくともそれが出来るほど彼の矜持は低くはなかった。
「・・・流石は蛇喰らい、だな」
心の臓を喰われた蛇は小さく呟いて、それからゆっくりと女の身体を抱きしめた。