吐いた息が白く染まる。

ふるりと震えた肩にローブを改めて着込む。

空には数え切れないほどの星が宝石のように瞬いていた。






















天文学は得意ではない。

どれがどの星座でありどういう逸話がある等という知識は齧ったくらいしかなく見上げた星空に名前がわかるものなどほんの僅か。

その僅かな中でも一際夜空に煌めく星を見つめる。

チカチカと瞬く星はポラリス。

北極星と呼ばれるものだ。

そしてその近くには北斗七星。

天候状態がいいのか普段では識別できない星々も闇を切り裂き数千、数億光年昔の光を送ってくる。

ベッドを持ってくればよかったな。

毛布よりもこの満天の星の下で寝転び、星の落ちてくる様子を見たいとそう思った。

夜空を時折横切る流星は銀の輝きで一瞬の煌めきの後は闇に融ける。

その一瞬に星は何を思うのかと心を馳せる。

燃え尽き堕ちるその時に何を望むのか。

問えば答えてもらえるものでもなく想像すら追いつかない。

視界に広がる夜空は日本と同じもので繋がっているのだというのにホグワーツの十月はやはり寒く冷たく冷え切った指先をそっと擦り合わせた。



















「気が済んだかね」













背に掛けられた声は不機嫌そのものである。

それは生徒が夜中に抜け出したことよりもの体調を気にしてのこと。

気管支のやや弱い傾向のあるこの少女はよく熱を出しやすい。

冬用のローブを着ているとはいえ防寒の甘い様子に溜息を吐きながら自らのマフラーをかけてやる。

手袋は持ってこなかったなと内心で舌打ちしてそれから仕方ないと手を差し出した。

全く、手間が掛かる。

そう思いながらも手を差し伸べずにはいられない自らに呆れながら。











「・・・我輩は貴様の携帯カイロではないのだがな」

手だけのつもりが何故だか抱きつかれ全身で暖を取られた男は疲れたとでも言う様に息を吐いた

「ホームシックでしたけどもう大丈夫です」

だってあっちには先生がいませんから。

そう告げた少女の瞳はどこか決意の色があった。

何かと決着をつけ何かを選んだ者のみが持ちうる想いの色が。

それに何も言わず男は華奢な身体を抱き寄せた。




























星達が燃え尽き、堕ちていく夜はゆっくりと終焉の朝を迎えようとしていたのだった。