還りたい場所
其処はとても懐かしい
足が重い。
いや、足だけではなかった。
頭も腕も身体も自分の物のはずなのに酷く重い。
ずしりと沈み込むような身体を支えて授業を受けるべく教室へ向かった。
今日も自習だろうか。
一週間前から魔法薬学は自習となっていた。
なぜならば授業を受け持つセブルス・スネイプ教授が学会のために出かけていて不在だからだ。
最初はグリフィンドールの生徒は特に喜んだものだがすぐに後悔をする羽目となった。
いない間にしているようにと出した課題が半端なものではなかったせいだ。
「2mなんてありえない」
そう呟いたのは誰だったか。
今では授業中は静かなものだ。
一行でも進めようとしているのかペンの走る音しかしない。
「・・・・・駄目かも」
体調が優れない気がしたがここまでとは思わなかった。
ぐらり
視界が揺れた。
ここ最近眠れなかったからかな・・・。
眠れない理由はただ一つだった。
スネイプは足早に教室へ向かっていた。
思ったより早く学会を切り上げたのは焦燥感というか消失感を覚えたから。
その理由は一つしかない。
憎いグリフィンドールでありながら生徒という壁を崩しスネイプの心に入り込んだ少女。
住み着いてしまった者。
たった一人の愛しい存在。
いつもの席で座っているだろうかと足を進めた。
地下室へ続く廊下。
ふと何かにつられるようにそちらを見た。
偶然としか言いようがないがこの一週間思い続けた少女がいた。
だがそれは思っていたような再会にはならなかった。
「っ!」
糸の切れた人形のように倒れている少女にスネイプは駆け寄った。
額に手を当ててみると少し熱い。
「風邪か・・・」
杖を取り出し自分との荷物を部屋に送るとスネイプはを抱き上げた。
その足は保健室・・・ではなく地下室のスネイプの部屋へ向かっていった。
カチャカチャと器具か何かが触れ合う音が聞こえた。
重い瞼を開けると会いたいとずっと思っていた人がいた。
「・・・・スネイプ先生」
喉がカラカラで上手く言葉が出なかった。
夢だろうか。
これは夢かもしれない。
ならば静かにしていた方が起きないだろう。
今は会えない人を夢の中だけでも会いたくて何かを混ぜている先生の背中をじっとは見詰めてた。
コトリ
調合が終わったのか器具を置くとスネイプは作った液体をコップに移した。
振り向いたスネイプとの視線が交わる。
「起きたか?」
「・・・・・はい」
そっと近づいてくるスネイプにそっと微笑む。
夢でもいい。
会えたことが嬉しかった。
「これを飲みなさい。すぐに良くなる」
差し出されたのは緑色の不気味な液体。
ゴポリと大きな泡が上がった。
嫌だといえば夢が醒める気がしたが飲みたくないのも事実だった。
悩んでいるに痺れを切らしたのかスネイプはコップを持ち上げ己の口につけた。
「・・・・なっ!」
・・・・・ゴクリ
唇から流れ込んだ液体が喉を通っていく。
唇はが薬を嚥下した後も続けられた。
「・・・・・会いたかった」
そっと耳元で囁かれてやはりこれは夢だと思った。
いくら交わした口付けが本物のように生々しくても。
これは自分が見せた願望。
そう思ったは襲ってくる睡魔の中呟いた。
「先生・・・私が還るのは先生の所なんですから」
はやく帰ってきて下さい。
そういってすとんと夢に堕ちていった。
残されたスネイプが苦笑しながらも嬉しそうに告げた言葉。
我輩の還る場所もの所らしい、と。
早くよくなるようにと作られた手製の薬が残ったコップ。
翌日の朝には全てなくなっていた理由は彼しか知らない。
翌日、は無事に恋人の元へと還ったのである。
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50000Hitフリードリームです。