ポコポコと水が泡立つ。
生きるためとはいえ水の中で生きていくのはひどく暇だ。
見えるのは数値を読む研究者達。
その視線の先に自分がいないことをよく知っていた。
その熱心な視線の先にはこの珍しいらしい研究対象の実験数値だけ。
白衣の彼らは酷く似通っていて違いがわからない。
個性もないような彼らは同一の視線しか向けないから。
ある日突然彼らは消えた。
いつもなら一人は数値を読みにくるのに。
決まった時間に記録を取る為かくる人影が現れないことが酷く不自然に思えた。
不思議に思いながらも水に包まれ眠る。
ポコポコと泡立つ水音だけが私を包む。
静寂が私を満たす。
「こんな所にいたのか」
聞こえた声に視線を向けると漆黒の男が立っていた。
白衣とは相容れない闇色の男がじっと私を見ている。
知らない男は吐き出し続けられる数値に見向きもせずに隠されたボタンを押した。
存在だけ知っていたけれど研究者達はないかのように振舞っていたボタン。
一度も使われなかったボタン。
カチリ
無機質な音がして私を包んでいた水が上がった透明な円柱の壁と床の間から零れていった。
肺に空気が入ってきた。
ぽたぽた滴る水滴を纏い私は裸足で床へ降り立った。
ふるりと空気に晒された肌が震えた。
「これを着ろ」
差し出された服を受け取らない私に男は苛ついて身体に巻き付けた。
「いくぞ」
掛けられた言葉を理解するのに暫くかかった。
付いていくのが当たり前のように歩きだした男に問い掛けた。
「私は何?」
男は呆れたような表情を見せた後言った。
「我輩の観用人形だろう」
プランツドールという言葉はしっくりと馴染んだ。