ハロウィーンのお祭りは日本にはない行事で。

あのカボチャがジャックなんて名前なのも知らなかった。

正式名称はジャック・ザ・ランタン。

「カボチャの煮物が食べたい」

醤油が懐かしいと愚痴る。

パンプキンパイを頬張りながら呟いた台詞に誰もツッコミは入れてくれなくて。

つまんないと席をたった。

「何処行くのー?

「えーとそこら辺でご馳走消化してくるー」

膨らんだお腹を指して言えばわかったと言った友人は再びとなりのコと話しはじめて。

だからその後どんな騒ぎがあったのか知らなかったのだ。











ゴゴゴゴゴ

気まぐれに動く階段をどんどん上がっていくとぴたりと三階で止まった。

「四階は行くなって言われたしね」

ホグワーツはダイエットには調度いいかもとうろうろと空き教室を廻ってた。

宝探し大会したら十年後とかに忘れられた宝の一つが出てきそうだ。

タイムカプセル並だわ。

全部見るのは無理だからと右手を見てしまったら大広間に戻ろうとしていた時、何かが聞こえた。

「誰か上がってきたとか?」

階段は酷くゆっくりと動いてた。

怒られる前に下に降りようとしたけれど階段は機嫌を損ねたのか上りだけ。

「仕方ない。あっちの階段から降りよう。不可抗力ってことで」

あっちとは四階で何故だか階段は反対の端で一階から四階まで普通の階段のように揃ってる。

「どうせならこっちで止まってくれたらいいのに」

ぶつぶつ文句を垂らしながら上がった四階は普通で他の場所と何処が違うのか検討もつかない。

「ここを開けると怪物が――――なんてね」

ガチャリ

開いた場所には部屋はなく廊下があった。

思いがけない人の姿も。

怪物より怖いんですが。

「スネイプ先生!!」

怪我をしたのか足を引きずっていて後ろには三つの頭の犬。

平たく言ったら怪物に分類されるモノがいた。

「え・・えーと。ウィンガーディアム レヴィオーサ!」

習いたての妖精魔法を使うと怪物は浮かんだ。

いや、天井に激突したの方が正しいのかもしれない。

「あはははは」

くたりと気絶したのか動かなくなった怪物達はほっといてスネイプ先生に手を貸した。

「・・・・・何故ここにいる?」

「偶然です。魔法、先生にかけなくてよかったー」

全くだと言いたげな表情にとにかく部屋を出ようと肩を貸した。

妖精魔法で運び出すのは(危険すぎて)無理だと判断して。

扉から出る時どこかで嗅いだ匂いがした。











「我輩は行かねばならん。後で部屋に来るように」

一階まで肩を貸して階段を降りるとスネイプ先生はそういった。

というか怪我の治療くらいすればいいのに。

「トロールの退治が先だ」

心を読んだような返事に呆れつつ先に一度寮に戻る事にした。

あの時、あの四階の廊下で嗅いだ匂いが思い出したかった。

コンコン

「開いている」

愛想のない返事に開ければ椅子に座っているスネイプの姿があった。

「失礼します。もう治療しまいました?」

ちらりとみればズボンの裾は裂けて血が滲んでる。

「いや・・・それよりも・・・」

「消毒液、あと包帯を貸してください」

戸棚にあった傷薬を塗り包帯を巻き終える。

「何故お前が四階にいたのか教えてもらえるかね」

早速デスカと内心の動揺は押し隠し正直に告げた。

「・・・・で階段を降りるために四階に上がって手近な扉を開けたらビンゴだったんです」

怪物にスネイプ先生がついてくる。

グリフィンドールには悪夢のセットメニューよね。

いくらバリュー価格でも謹んで遠慮したい。

「我輩はなんと言ったかね」

「えっとクィレル先生に近づくなーと四階に行くなーですっけ?」

「語尾は延ばさなかったがな」

苦々しく呟く姿はいつもの先生とは違って学校が始まる前の彼を思い出させた。

「先生はなんであの部屋にいたんですか?」

その問いは無視された。

その後寮まで送ってもらって部屋で眠りについたけど黙秘権なんて無視すればよかったと後悔をする。

好奇心は猫も殺す。

だけど知りたいと思うことが罪とは思えなかった。



















クィディッチなんて何処がいいのかさっぱりわからず話題から取り残された。

スリザリンではシーズン到来で今度のグリフィンドール戦でハリー・ポッターがデビューすると話題になってる。

いや、アイドル鮮烈デビューとかじゃなくてマットレス抱えてグリフィンドール生が走り回るとか。

「魔法界なんだから魔法でしょ」

マットレス飛ばすのよ、マッハ555ならぬマットゴーゴゴーよ!!と言えばツッコミずれてるからと突っ込まれた(痛)

クィディッチ馬鹿が多すぎる。

巨人ファンの中のゴルフファンみたいだ。

そんな雰囲気に馴染めなくて図書館へ行った。

目的はあの三頭頭犬。

人面犬みたいな響きは嫌だが名前がわかるまで都合上そう呼ぶことにした。

世界の珍獣とかないかなあとたくさんの本から色々探してた。

見つけたのは世界の呪い辞典初級者編と世界の魔法食物店。

呪いの辞典がこんな絵本っぽい装丁でいいのかと黄色のカラフルな無駄に明るい色調の表紙をめくり目次を読んだ。

『1・恋人を作る呪い―あなたから30pも離れられない!!
 2・呪いのお菓子―語尾にダネっをくっつけちゃえ!!
3・人形の髪を延ばす儀式―こっそりイタヅラ大成功!!
 4・始まらないゲーム―クリアできないゲームを作ろう!!
5・杖に花を咲かす魔法―これで相手も大恥!! 』

「・・・・・・なんか全部ビミョー」

どちらかといえばこの書いた人物は自分が使ってしまった恥ずかしい魔法紹介とかで

本を書いたほうが人気が出たのではないだろうかと考えてしまう。

もう一冊の本を開けば小太りなおじさんがぱちんとウインクしてドラ声で話し出した。

「これからいる物はバターとクリーム・・・・あとなんだっけ?」

度忘れしたらしく考え込んでいたがじっと見つめていたら恥ずかしくなったのか出てこなくなった。

・・・・・いい加減にしてくれ。

なんだか探す気力もなくなってそこら辺の本棚にぽいと本を放り込む。

シャララララ

鈴というかもっと繊細な何かを鳴らしたような音がした。

振り向いて辺りを見てみれば切れた鎖が落ちていた。

ただの変哲もない鎖。

誰かの落し物とも思えなくてそっとポケットに滑り込ませた。



















「そこで何をしているのかね」

振り向けば相変わらず不機嫌そうな面持ちのスネイプ先生。

傷でも痛むのだろうか。

左腕を擦ってこちらを睨んだ。

「自寮の応援には行かないのかね」

「スネイプ先生は行かないんですか?」

問いかければ嬉々とした答え。

というより何処にでも出没するよねこの人。

「行くとも。行って我がスリザリンが圧勝し、ポッターがスニッチを取り損なうのを見届けねばならんからな」

「そうですか、じゃあ私は行かないんで」

どちらかと言えばスポーツは見るよりする方が好きなんです、マット運動と鉄棒以外と言い添えて言えばつれない答えが返ってくる。

「来なければ十点減点だ」

「なんでですか!?」

歩き出したスネイプ先生の背中に問いかければ答えは簡単に返ってきた。

「クィディッチを好きにならない奴はいない」

・・・・・ここにもクィディッチ馬鹿がいたみたいです。