「何してるんだ!?ポッターの奴」
嘲笑する声が飛ぶ。
いや普通は敵でも心配してやれよ。
スポーツマン・・・スポーツウーマンでもいいけど・・らしくない!!
きっと仲良さそうな二人は心配しているだろうとグリフィンドールの方に視線を向けた。
「・・・・あれ?」
走ってく二人の姿が見えた。
向かう先は教員席。
なんで?
慌てている先生たち。
じっとしているのは二人。
ハリーを凝視してるクィレル先生とハリーを見て何か呟いてるスネイプ先生。
怪しすぎる。
特にスネイプ先生は危ない人みたいだ。
日本だったら警察に通報される怪しさですよ。
二人が何するのかと観察してたらスネイプ先生のローブから火が出た。
「・・・・・自然発火現象」
ミステリー・・・な訳でなく逃げる二人の姿。
スネイプ先生は生徒に火を付けられるほど嫌われているのだろうかと
婚約解消を視野に入れようとしたら(なんたって新居を放火されたりイタ電されたら嫌だし)
慌てて火を消すスネイプ先生の肩がどんとクィレル先生の身体に当たった。
バチン
何かがはじけた感じがした。
慌てて火を消す先生達に押さない・走らない・喋らないの三要素を教えてあげたいと思った。
人間パニクったら負けです。
魔法使えばいいのに。
どこかから出したクッションでスネイプ先生を叩いてる先生達にそう言ってみたかった。
絶対忘れてるよね。
いつの間にかハリーの箒は元通りになっていた。
地面に降り立つと口から金のスニッチを出して高く掲げる姿は正にヒーロー!!
ギリギリと歯噛みするドラコはきっとハリーの人気上昇を心配してるのだと思う。
「後で先生の所へ行こう」
符号が合いすぎて気に入らない。
四階の怪物にハリーの箒、クィレル先生に近づくな。
全ての謎の半分は先生が知ってる。
そんな気がした。
クリスマス前。
日本に帰っても父親はいない。
今度はエジプトで仕事だという。
何をしてんだかあの人は。
この前はギリシャでオリーブ油に当たったらしい。
グリフィンドールに最悪な魔法薬学の後。
ドラコもハリーに素直になればいいのに。
好きな子いじめなんて子供よね。
図書館で相変わらずくだらないと思われる本を発見し続けた。
「脛毛と髭の育毛法?こっちは魔法界における髭歴史?」
貸し出しカードをみれば校長とハグリットの名前。
「・・・・・なるほど」
がいた本棚は校長の趣味の本棚だったらしい。
仕方ないので暗黒の魔法使い時代とかいう本を借りることにして図書館を出た。
どん
「・・ごめんっ。前見てなくて」
ぶつかった人を見ればハリー・ポッターだった。
「僕のほうこそ・・・」
にこりと笑おうとした彼だったけどネクタイの色を見て顔色が変わった。
「ああ。嫌だな〜ハリー君は寮で差別するの?」
ショックという感じで言えば慌てて否定する。
素直な子だ。
「ゴメン。なんだか僕、スリザリンアレルギーになってたみたいだ」
「まあドラコが素直じゃないから」
「?」
「スネイプ先生も悪い人じゃあないんだけどね」
間違ってるよというハリーの表情に苦笑する。
グリフィンドール生にはわからないだろうなあ。
「私は・っていうの。スリザリンだけどグリフィンドール生とも友達になりたいんだけど」
駄目かなと笑えば笑顔が返ってくる。
「全然駄目じゃないよ。僕はハリー。・・知ってるだろうけど」
嫌なことをと呟きが聞こえて笑い飛ばす。
「知らないの」
「嘘だ!?」
その言葉にむっとする。
「あのね、君が例のあの人だかその人だかどの人だか知らないけど倒して英雄になったことと
スネイプ先生に目の敵にされてる事とクィディッチが上手いことしか知らないの」
私、スリザリンの広間には馴染めなくってさ。
馴染んでても悪口は信用していないしと言えば
「君、本当にスリザリン?」
自分でも思ってる事を言われた。
「そうなんじゃない?とにかくハリーの事はあとウィーズリー家の男の子とふわふわ髪の可愛い子と仲がいい位だから」
これから教えてよと手を差し出した。
「じゃあ僕ものことを教えて」
ぎゅっと握るとぱちりと痛みが走った。
「あれ?静電気?」
「うん・・・まあいいや。私、行くね」
また今度〜と手を振って走り去る。
今、何か感じた。
理由を知りたくて最初に疑ったのは手に持った本。
何もなくてローブのポケットに手を入れた。
かちり
「・・・・・何これ」
指に感じた違和感に引き出してみれば右手の薬指に嵌った指輪。
「確かここには拾った鎖しかいれてなかったはずだけど・・・」
とにかく指輪を引き抜こうと手を添えた。
ぎゅううううう
力一杯引っ張ったんですけど。
「・・・・・・・抜けない」
困った時のスネイプ先生。
調度聞きそびれていたこともあるしと地下室へと足を向けた。
「なんだこれは?」
顰められた眉。
視線の先には嵌められた指輪。
「ボーイフレンドでもできたのかね。それとも父親からの早いプレゼントか?」
我輩にも強請ろうという魂胆かねと嫌味たっぷりにいう姿にハリーにフォローしてやるんじゃなかったと思う。
「残念ですが全て外れです」
実はと図書館で拾った鎖からいつの間にか嵌った指輪まで一気に喋った。
「・・・で外れないんです」
どうしましょうと言えば右手をとられた。
「・・・・・何も象徴はなし。シルバーか・・・」
ぶつぶつ言いながら部屋の片隅から百科事典並のぶ厚さの本を出してきた。
「取れないのなら何らかの呪いがかかっているのだと思うが・・・」
「ハリーと握手した時に気がついたんです」
「ポッターと握手だと!?」
「ええ。友達になったんです」
「帰りたまえ」
向けられた背中には拒否の色。
「何でですか?先生は何を知ってるんです?」
いきなり不機嫌になったスネイプに部屋を叩き出されて仕方なく寮へ戻った。
「・・・・・ばぁか」
ぽつりと呟いた言葉が地下牢の廊下に響いてた。
「は帰らないのか?」
荷造りの済んだドラコが聞いてくる。
「日本に帰っても日帰りだもん」
旅費が勿体無い。
すっぱり切り捨てればそうかと笑われた。
「僕の家に招待すればよかったな」
ほろりと来ましたよ。
でも無理なんです。
「ありがと。クリスマスのプレゼントだけで充分よ」
じゃあまた休み明けと手を振った。
スリザリンは殆どの生徒が帰省していて他の寮もそうなのかなと考えた。
右手を見れば誰のモノかわからない指輪。
しかも呪いつき。
縁起悪。
ケーキでも作ろうと父親から送られてきた簡単お菓子魔法の本を開く。
明日はスネイプ先生にもケーキぐらい持って行ってあげようかと思っていたのに。
「機嫌が直ってるといいなあ」
甘いモノは駄目かなあとぱらぱらと捲ってみる。
何も考えずにメレンゲ泡立てていたら天窓からノックの音。
「半地下だからフクロウも大変よね」
父親からかなと窓を開けて見れば知らないフクロウ。
「迷子?」
運んできた手紙のあて先は確かに自分で。
開けばただ一言。
『明日、また来るように S.S 』
「仕方ないなあ」
ほんの少しだけ浮上した気持ち。
ハイテンションにはまだ遠いけど。
フクロウに返事を運んでもらう。
『プレゼント受け取りにいきますね』
その夜の部屋からは甘い匂いが漂っていた。