クリスマスの朝。

枕元に毎年ある贈り物がなくてここは家じゃないんだと思う。

いつだか幼い頃サンタは紅い服着た変質者だって言う友人の言葉を信じて夜中寝た振りしていた事がある。

窓から二階なのに入ってきたサンタクロースに感動してた。

今ならわかる。

あれが父親だった事。

不思議に思ったプレゼントを持っていないほうの手に抱えていた箒は二階へ飛ぶためだったのだろうと。

「私ったらそれから一年近くサンタって掃除屋かと思ってたのよね」

その前はKFCのおじさん。

道頓堀に放り込まれたりするカーネルおじさんが動き出すと思っていたのだ。

「・・・・・ホラーだわ」

着替えを済ますと階下へ向かった。

暖炉の前には積み上げられたプレゼントの山。

そこから自分の物をいくつか探し出して近くのソファーへ腰掛けた。

赤い薄い箱と靴下の形の箱とカード。

大きいのからと開けてみた。

!メリークリスマス!!」

「・・・・何?」

「ビックリしたかな?今年のプレゼントはがレディーになった時に渡してくれって言われたものだよ」

懐かしい父親の声に箱の中身を見て絶句した。

「選んだのは僕だけどセブルスのど真ん中だと思うよ」

長々と続く話を手紙をたたんで暖炉に入れた。

結構しぶとく燻っていたけど燃えてく紙片。

「あの人は娘を何だと思ってるんだか・・・」

疲労という重石が溜息となって零れ落ちた。

入っていたのは可愛らしいドレスだがどう見てもメイド服。

「先生にそんな趣味が・・・・」

レディーと何処が関係あるんだと思いつつ箱を閉める。

我が父親ながら訳がわからないと靴下の形の箱を開けた。

「キャンディーだ!!」

誰からだろうとカードを見れば

『良いクリスマスを  D.M』

とある。

「ドラコ〜〜〜vv」

ドラコの株は一気に上がった。

父親のサイテーな贈り物の後だからなお更に。

早速飴を一つ口の中に放り込むとカードに触れた。

「誰からだろ」

手をかけるとピリッと右手の指輪に刺激が走る。

「痛っ」

何?電気刺激カード!?とか思いながら裏を見れば真っ黒な夜の景色に星一つ。

署名はなし。

「イタヅラかなあ」

『Find』

手の中の夜空に瞬くそう書かれた言葉に私は気付けなかった。






クリスマスのご馳走は凄い。

クリスマスキャロルのスクージーおじさん結構好きなんだよねと思い出す。

顔はいつでもアヒルだが。

ディズ○ーの名作でしょう!!!

丸々太った七面鳥のローストを前に思い出すのは拙かった。

ついでに何かの本で読んだ『七面鳥のローストは微生物の繁殖場』とかが頭をよぎる。

「七面鳥はパス」

ソーセージを口に入れたときマクゴナガル先生にハグリットがキスするのが見えてむせてしまった。

だってあのマクゴナガル先生が頬赤らめたんですよ、奥さん!!

ドラコがいればツッコミがいたのにと寂しく思いながら食べていた。

「「メリークリスマス!!」」

「・・・・フラッドとジョーイだっけ?」

ウィーズリー家の双子達は揃いのセーターを着ていた。

「違うよ。僕はフレッド」

「僕はジョージ」

「メリークリスマス。フレジョ 、そのセーターよく似合ってるわ」

「「フレジョ?」」

「間違えないように短縮したの。それともFGって呼ぶ?」

「僕はスイートハニーでいいよ」

「僕はマイハートでいいや」

勝手に言ってる双子に呆れて言い返す。

「じゃあウィーズリーA・B決定ね」

「「酷いよ!!!」」

声を揃えて非難する表情があまりに面白くて噴出すと双子も笑っていた。

「なあこんなシケた場所じゃなくて僕らのテーブルにこないか?」

「兄弟も紹介したいし」

「ハリーと一緒にいる子なら知ってる。話したことはないけど」

いまからちょっと用事があるからまた今度ねと二人に言って大広間を出た。

向かう先は地下室にあるスネイプ先生の部屋。

一旦スリザリンの寮に戻ってケーキを持つと足取りも軽く歩いていった。







「失礼しまーす」

扉を開けると黒ずくめのスネイプ先生。

クリスマスなんだからもう少し派手な服でも着ればいいのに。

虹色のローブとは言わないから。

毎日が葬式だよと思っても口には出さない。

黒が似合う事は似合うのだ。

似合いすぎてたまには違う色を着て欲しいと思うだけ。

着替えているのか甚だ心配になるので(余計なお世話)

「先生!メリークリスマス!!」

差し出したケーキの箱を恐る恐る受け取るスネイプ先生に爆発なんてしないですよ、多分と笑って言う。

「あけてもいいのかね」

「ええ」

中からは甘さ控えめブッシュ・ド・ノエル。

バタークリームは本当に甘くしませんでしたよ。

ドキドキと口へ運ばれるフォークを見つめる。

「・・・・・甘い・・・が嫌いではない」

「まだ甘いんですか」

スネイプ先生に注いでもらった紅茶を飲みながら聞きたい事をどう切り出すか迷ってた。

「我輩からはその机の上にある」

示された場所には確かにチョコレート色の箱。

包装紙のりぼんに手をかけた。

其処には真っ白なテディベアが居た。

「・・可愛いッ」

ありがとうございますと笑顔で言えばそうかと安堵してる様子のスネイプ先生。

喜怒哀楽、機嫌のよさは眉間のシワで測ってます。

「あ、知ってます?テディベアってリボン付けた日が誕生日なんですよ」

「知るわけがないだろう」

それもそうかと包装紙のリボンを手に取る。

色はくしくもグリーンで見事なスリザリンカラー。

「じゃあ名前はセブルスで」

「何でそうなる・・・」

だって先生から貰ったからですと「ね、セディ」と笑いかける。

どんな顔して買ったんだろ。

そう思うと笑いが漏れそうで必死ににやける頬を噛み締めた。

スネイプ先生の顔がいつもより血色が良かったことは全く気付きもせずに。

その後父親から貰った最低な贈り物の話をしながらクリスマスの幸福な時間は地下室でゆっくり過ぎた。