「秘密の部屋は開かれたり、継承者の敵よ、気をつけろー?」
よくよく読んでみるとさっぱり訳のわからない文だ。
「それはスリザリンの継承者を指しているんだ」
上機嫌でドラコに話しかけられた。
久々だなとか思っていたら聞いてもいないのに説明してくれた。
「秘密の部屋って言うのは前回開かれたのは50年前らしい。継承者しか入れないって言うんだ」
『穢れた血』が一人死んだらしいという言葉は耳に入らなかった。
「・・・・・50年前」
ズキン
頭痛がした。
思い出すキィーワードになるのだろうか?
「聞いているのか、!」
「ああ、ごめん。聞いてなかった」
けろりとした表情で謝れば毒気を抜かれたようなドラコの表情。
「ともかくホグワーツの何処かにあるっていう部屋が開かれたのは確かだね」
自慢げに笑っているドラコの後ろにフィルチが見えた。
「あ、ミスターフィルチ!」
機嫌の悪そうなフィルチを避けてかさっさと立ち去ったドラコとは別にはフィルチへ話しかけた。
「ミセス・ノリスの様子はどうですか?」
「ああ、薬ができるまではあのままだそうだ」
しょんぼりと肩を落としながらも目は悔しさでギラギラしていた。
「早くマンドレイクができるといいですね」
「ああ」
虚ろに答えるフィルチを置いて立ち去る。
忌々しそうに壁に書かれた文字を消そうとするフィルチだったが効果はあまりみられなかった。
ピンズ先生がグリフィンドールに言ったという言葉を知って驚いた。
いまや秘密の部屋は皆に探されている場所ナンバーワンかも知れない。
・・・・・・スネイプ先生の部屋の方が秘密の部屋って感じがするんだけど。
誰も好んで行かないし。
組み分け帽子がなんで自分をスリザリンにいれたのかがとても気にかかった。
自分は確かあの時はグリフィンドールと思ったのに。
「勇気は人一倍ありそうなんだけどなあ」
それより狡猾ってこと?
グッて詰まった帽子が今思えば面白かったからいいやと思いなおす。
マグゴガナル先生は厳しいから進級できないかもだし。
スネイプ先生は贔屓が過ぎるけど・・うん、まあいい所もあるし。
一応婚約者だもんねと肩を竦めた。
スリザリンでも悪くない。
むしろスネイプ先生に出来が悪くても減点されないから良かったかもとプラス思考で考えた。
楽天家なのはきっと父譲り。
ふと足元を這っている虫の行列に目が留まった。
「蟻の大群何処いくのー♪・・・・って蜘蛛じゃん!」
調子に乗って歌い始めたらすぐ突っ込みの合いの手を入れる羽目に。
蜘蛛がぞろぞろと列を作って引越し?
ぴたりと止まったのは見覚えのある場所だったから。
「・・・・・マートルのトイレじゃない?」
こんなに近かったっけ?
前に通った時は遠回りしたのかなと前をスルー。
「ジニーに会いに行ってローブ返してもらわなきゃ」
そのままはグリフィンドールへと足を向けたのだった。
クィディッチシーズン最初の試合は土曜日だった。
マーカス・フリントはスリザリンの生徒に今年こそは優勝だなと言われてにやりと笑っていた。
「グリフィンドールのキャプテンの方がカッコいいよね」
つい呟いてしまう。
だってフリントはどちらかといえば悪役の小物って感じ。
スポーツマンとしてはグリフィンドールのオリバー・ウッドの方がイメージ通りだろう。
「父上が買って下さった箒があるんだ、ポッターの奴なんかに負けるものか」
ドラコが白い頬を高潮させて喋ってる。
ドラコはハリーが好きだと思っていたのは幻想だったんだなと思う。
ドラコの恋をそっと見守ろうの会は本日をもって解散決定。
「これでグリフィンドール・・・・」
まだまだ続きそうな大騒ぎの中こっそりと廊下へ出て行ったのだった。
「そう言えば去年の飛行術の授業の時に設立したんだっけ?」
ドラコの恋をそっと見守ろうの会の会長として何をしたかといわれれば会の名の通りそっと見守っただけだった。
「何かしてあげた方が良かったのかな?」
例えばドラコの名前でハリーにラブレター出してあげるとか?
浮かんだ疑問は犯罪だと気がついて却下。
偽造文書とかいうやつだよねとラブレターだとそうなるのだろうかと考えてみる。
どちらかといえば私的に詐欺の方が犯罪名としてしっくり来るんだけど。
薄暗い廊下を考えながら歩いていればとんでもないことになる。
ドテっ
・・・・・・・・躓いて転んだよ。
「もう!廊下に誰がモノ置いてるのよ!」
機嫌の悪いフィルチに言いつけようかしらと擦り剥いた膝の痛みから考える。
何に躓いたかとよく見れば襤褸ぞーきん。
・・・・・・・・・ではなく古いボロボロの枕カバーを来た未知の生物。
「もしかして・・・・・○.T?」
もっと頭が大きかったような・・・・・・・・・。
まあいいかと彼、彼女かも知れないそれの腕を掴んで引きずった。
足を引きずらなかったのはカバーの中身を見るのは遠慮したかったから。
ズリズリという音に未知の生物は声も立てず引きずられるままだった。
「先生ー!開けてください」
よいしょと開けられた扉から入って自慢する。
「見てください、火星人が落ちてました」
E.○はいつのまにかリトル・グレイになったらしい。
ほらと示せば頭痛でもするのかスネイプは額に手をやった。
「・・・何処で拾ってきた」
「なんですか!その今にも拾ったところへ捨ててきなさいって言うような口調は!」
ビックリすると思っていたのにウンザリな表情で返答されて少しだけ腹が立つ。
「飼いたいとかいってませんよ、私は。大体拾ったら交番に届けて一割が妥当じゃないですか!」
頬を膨らまして抗議をすればますます呆れたような表情。
「我輩の言っているのはそういう意味ではない。それは下僕妖精だ」
「下僕!?」
驚く所を間違えた気もするけど持った疑問はその時に消化しておきたいタイプ。
「下僕って女王様に鞭で打たれる下僕ですか?ってこれってカップヌードル盗み食いする奴でも駅前留学する奴でもないんだ!」
一気に捲くし立てたにスネイプは訳がわからないといった様子だ。
「・・・・・下僕違いだ」
律儀にそれでもわかる範囲を応える所は教師魂百までもって事だろう。
「とにかくそいつは何処かの家の召使いだ。何処で拾った」
「スリザリン寮からでて廊下を三本目です」
転んで擦り剥いたんですよと見せれば戸棚から取り出された薬。
また何か変なもの混入されてそう。
「けけけけ結構です!こんなの唾つけといたら治りますって!」
血も出てないしとソファーに座って指につけた唾をつけようとしたら目の前にしゃがみ込んだスネイプ先生。
ぺロリ
足を僅かに持ち上げられて・・・・・・・・舐められました。
「な・・・・・・何するんですか!」
ゴシゴシゴシ
ローブで必死に拭うけど温かい感触はなかなか消えてくれない。
「唾をつけるならこの方が早いだろう」
さらりと言われた言葉に返す言葉もなくて赤くなってるだろう顔を元に戻すのに一生懸命で
むくりと襤褸ぞーきん・・・じゃなかった下僕ちゃん?が起きたのに気がつかなかった。
「此処は何処でありますか?」
おずおずと問われた高く細い声に振り返るとぎょろりとした目がこちらを見ていた。
「気がついた?あなたは廊下で倒れていたみたいなんだけど」
「用事があるのではなかったのかね?」
冷ややかな声に下僕ちゃんはおどおどしている。
スネイプの不機嫌な様子には理由を気付くはずもなく。
「そうでし!ドビーは悪い子!ごしじん様に頼まれたのです、様のお嬢様にこの手帳をお渡しするようにと」
出されたのはぼろぼろの手帳。
挟まれている便箋が見えた。
「早く、様にお届けしなければっ」
慌てるドビーに声をかける。
「あの・・・私が多分そのなんだけど」
「貴女様がでしか!ごしじん様がおっしゃった通りの方でしっ」
その言葉にスネイプ先生の眉間に皺が増えた。
「なんと言ってた」
どす効かせ過ぎですよ先生。
「ごしじん様はお嬢様をお坊ちゃまの婚約者にしたいとおっしゃってました。とても美しく気品あるマルフォイ家にふさわしいと」
「あははー。ルシウスさんもお世辞が上手いねー」
まだそんな冗談言ってるのと笑えば冗談ではないのですとドビーは小さく呟いた。
大きい声で言えなかったのは隣にいる黒ずくめの男の不機嫌指数が急上昇している事がわかったから。
ごしじん様がこんな時、近づかないですむのなら近づかないに限る!
「で・・・ではドビーめは失礼します」
そそくさとに手帳を押し付けると逃げ出したのだった。