「スネイプ先生、ナマハゲー?」

ノックもなく入ってきた少女の言葉にスネイプはひくりと口元を吊り上げ皮肉の笑みを作った。

「我輩はハゲてなぞないが?」

ナイス突っ込みな教授を無視して少女は今日も元気だった。

「間違えました。ナマステです、ナマステーvv」

「悪意しか感じ取れないが」

苦虫を噛み潰した方がまだましな表情に少女はちょっとだけ不服そうだ。

「その位我慢してくださいよ、私はもっと大変だったんですから」

ゴソゴソとポケットから取り出されたのはダーツの矢。

「開けますよ?」

返事を待たずにスネイプの私室を開けたは扉をそのままにソファーまで数メートル下がった。

トストストス

「・・・・・逃げた」

笑顔を無駄に振りまいていたロックハートが消えたポスターの顔があった部分に刺さる矢が三本。

「何かあったのかね」

いつもと違う様子にやや驚きつつペンを置く。

内容次第ではただでは置かんと心に決めて。


















がジニーに会えないかとグリフィンドールの前をうろうろしていたら声をかけられた。

フレッド・ジョージ辺りなら良かったんだけど。

「ミス・じゃないか!こんな所で私を待っているなんて君は恥ずかしがりやなんだねv」

はあ!?

アイシールドの十文字並みの返事を教師に言うわけにも行かず曖昧な微笑み、怒りの為にアルカイックスマイルを繰り出す。

「さあ私の部屋へ招待して差し上げよう、これはとても名誉な誘いだから他の子には内緒だよ」

バチンと綺麗に決まったウィンクにゲロゲロとカエルの歌が歌えそうなくらいの吐き気。

歯を磨いていたら絶対うがいで三回くらい演奏したはず。

スネイプ先生がそんなタイプじゃなくて良かった。

こんな人とは付き合いきれません。

「あのー私用事があるんですけど・・」

ジニーにそろそろ理由を聞こうと思って来たのだからそれが実現しないうちにロックハートなんかと喋る暇はない!

そういうつもりでいったんだけどこの目の前のキンキラ君は聞き耳持たず。

とっても特殊な補聴器か翻訳機をつけているらしい。

犬語がわかるとかいうのじゃないよね?

人間の言葉もきちんと伝わらないのだから。

「いけませんね、日本人は慎ましやか過ぎます。私の部屋に遊びに来れて嬉しい時はただお礼を言ってくれればいいんですよ」

嫌だというわけにも行かず、連れて行かれた部屋。

NOと言える日本人はまだまだ遠い。

あちこちに貼られたロックハートのポスターが目に痛い。

精神的にも痛いけど。

「ミス・は決闘クラブには興味があるかね?」

「いえ、特に」

何、それ?が正直なところ。

決闘クラブよりクラブサンドが食べたい。

「嘘はいけませんね。貴女も私の戦っている様子を見たらきっと入りたくなりますよ」

「へぇ〜」

「それに私は狼男にも吸血鬼にも勝った男ですから」

「へぇ〜」

「これはサイン用の特製ペンなんです」

「へぇ〜」

自分がへぇボタンになった気分。

現在三へぇ。三シックルって所だろう。

こんな相槌で嬉々と喋れる目の前の男にぐったりと疲れを覚える。

天気の話で二時間話せる人と比べてみたい。

「じゃあロックハート先生とスネイプ先生が対戦してください」

ハリーの腕がロックハートによって骨抜きにされたと聞いたのを思い出す。

「ロックハート先生ならスネイプ先生よりもお強いでしょう?」

メロメロって意味じゃなくてよかったねと思ったものだ。

スネイプ先生ならそんなことにはならないだろうし。

思ってもない言葉はある考えが閃いたから。

というかメロメロになったスネイプ先生はみたいようでみたくない。

怖いもの見たさは確かにあるけど。

半径五メートルは離れて観察が基本だろう。

手には双眼鏡。首に掛けたカメラで観察記録もばっちりだ。

「それはいいですね。私もそうしようと思っていたのですよ」

嬉々として乗ってきたロックハートににこりと笑いかける。

ロックハートの頬が赤らんだ事など全く気付かず。

「私はスリザリンですからスネイプ先生を応援しますけど楽しみにしてます」

では失礼しますとぼーっとしているロックハートを残しグリフィンドールへ向かったのだった。

「え?ジニーならさっきどっか行ったよ」

「ああ、あいつ様子がおかしいんだ」

きっとコリン・クリービーが襲われたのがショックだったんだぜとハモった声にふうんと返す。

「あのカメラ小僧君でしょ?」

ハリーハリー煩いとドラコが言っていたような覚えがある。

「そうそう。あいつ」

「で、はジニーに何の用?」

伝言ならキス一つでするけどという言葉にじゃあ遠慮しとくと断って後にした。

ジニーはさっきまでは寮にいたらしい。

全くの無駄足。

それもこれもあいつのせいだと足早に地下室へ向かったのだった。













「・・・・・・・という理由です」

「で、我輩に何をしろと?」

スネイプ教授、グリフィンドールの双子を心の中で大量減点。

不機嫌そうだが話のわかる展開にはにっこりと笑う。

「ロックハートをやっつけちゃって下さいvv」

そう、ロックハートの部屋で考え付いたのはスネイプ先生にあのロックハートを吹っ飛ばしてもらおうというナイスでグッドなアイディア。

スネイプ先生ならできますよね?ロックハートくらいなんて軽いはずです!

駄目ですか?と見上げてみれば先生の頬が僅かに赤い。

「・・・・・・風邪でも引いたんですか?」

「いや・・・なんでもない」

「ならいいですけど」

淹れた紅茶に口をつけて一口啜る。

こくりと喉を通る温かさに落ち着きを取り戻したスネイプはゴホンと一つ咳払いをした。

小娘ごときの上目遣いなどと言い聞かせて。

「そうだな・・・考えてみてやらないことも・・ない」

「やったー!先生好きーvv」

絶対吹っ飛ばしてくださいよというにまあ見ていろとやる気のスネイプ。

吹っ飛ばして良心が痛む相手でもない。

ニコニコと上機嫌で笑ってこんな魔法はどうですか?と提案する少女を見て胸に湧く思い。

「我輩の婚約者に手を出しおって」

ぽつりと呟かれた言葉はの耳には入らなかった。
















それから魔法薬学の時間に膨れ薬がなぜか爆発して大騒ぎする事件があったりしたけれど犯人が見つからなくて。

流石のスネイプ先生にも減点が出来なかったみたい。

実は私、見たんだよね。

ハーマイオニー・グレンジャーがこっそり教室を抜け出すの。

皆、ふくれ薬かかって大騒ぎだったから気がつかなかったみたい。

だとしたらきっと犯人はハリーかロン。

双子と違って理由もなくそんな事はしないと思えて黙っていた。

ちょっとだけスネイプ先生に教えてあげたい気はしたけど。

怒りすぎで血管切れそうだったからなあ。

どうか決闘クラブでロックハートをぶっ飛ばすまでは倒れないで下さいね。

酷いとは思いながらも開幕を楽しみにし始めている自分がいた。