父から明日のクリスマスプレゼントだと送られたのは茶色のワンピース。
それと・・・・・箱?
手紙に書いてある通りにしてくれないかと書いてあるので仕方なくローブを着こんで先生の部屋へと向かったのだった。
「先生ー!開けてくださいー」
両手が塞がっていて大声で呼べばガチャリと開いて不機嫌そうな表情のスネイプ先生が出てきた。
新聞の勧誘とかNH○の集金の人とか問答無用で退散させることができそうだ。
未納問題とか大変らしいよね。
未納三兄弟が懐かしい。
年金生活するようなイメージはあいにくスネイプ先生には皆無だが。
クリスマス・イヴなのに恋人がいない独身男(しかも30代)にはぴったりの表情かも知れない。
まあ、私っていう婚約者がいるわけだけど。
この人の不機嫌な表情は形状記憶かも知れないと思っていたこともあったとしみじみ思い出したりしてた。
「この箱を何も言わずに受け取って開けてください」
差し出した箱を不審そうに受け取る先生。
「まさか・・・これは・・・・」
「聞こえませんでしたか?『何も言わず受け取って開けて』と言いましたよ?」
私の言葉にむっとした様子だが黙って箱を開けるスネイプ先生。
うーん、素直でちょっと可愛いかも?
ボワン
もくもくと煙が出てきてそれが消えた時に現れたのは恐怖赤男!
・・・・・ではなくサンタコスのスネイプ先生。
いつも黒ONLYだから赤一色は目に痛い。
精神的にもイタイかもしれない。
「やはり・・・・。こんな事だと思った」
嫌な予感がしたのだと声には怒りながらも諦めの色が滲んでる。
学習能力ってヤツだろうか。
「とにかく、まずは座ってください」
箱に入っていた指令メモを思い出し指示通りにすべきだろうとソファーを指差す。
先生が座ったのを確認してローブを脱いだ。
「お前・・・・・・・っ!」
先生が驚いてまじまじ見ている視線を無視して膝に腰掛ける。
えーと首に腕を廻すんだっけ?
「・・・・・・先生顔赤いですよ?」
スネイプがのむき出しの腕やら脚やらを見てしまっていたのに気付かず少女は上目遣いで言う。
「何のつもりか聞いてもかまわんかね」
スネイプの葛藤も知らずには手紙を取り出した。
「父からの任務です」
ちなみに封を二人で開ける前にすべき事というメモも見せる。
今までのの行動にやはりかと苦々しげの息が吐かれる。
カサリ
ピリリと音を立てて封がペーパーナイフで開けられて中から出た手紙を手に取った。
それからはいつも通りにワンマンショー。
『やあ、セブルス!元気かい?
今頃は感謝していると思うけど。どうだい、は?可愛いだろう!
結構コスプレ衣装どれにするか悩んだんだがね。茶色のミニワンピースに白いフワフワなボンボンが愛らしいと思うだろう!?
膝に座って貰ってドキっと実はトキメいちゃったりしてたら笑い死ぬかもだけどね。
オプションのトナカイの角つけたら超絶可愛いと思うけど手は出さないでくれよ?
それともセブルスはセクシーサンタが好みだったかな。
君もクリスマスくらいは仕事を休んで婚約者に甘い囁きの一つでも送ったらどうだい?
先日マルフォイ先輩から息子さんとの縁談を頂いたよ。
まあ「セブルスよりいい男だったら考えますよ」と言っておいたから。
がその子を好きになってセブルスと解消したいならそれでも構わないけどね。
他の男達より前進していることを願っているよ。
君は僕の友人だからね。
サンタクロースとトナカイの服を着た写真を送ってくれ。
あと、贈り物は届いたかい?
いや、あれはまだかもしれない。
・・・・・うん、まだだね。
多分もう少ししたら届くと思うから絶対受け取って欲しい。
中身はよくは知らないけれどある人にとって君にあげるべきものだと聞いてるから。
それをどうするかはに任せるよ。
じゃあメリークリスマス』
ボン
派手な音を立てて破裂した手紙を間一髪で話したスネイプ先生は呆れた表情。
「お前の父親は・・・・」
何を考えてると言いそうになって噤む。
確かにほんの少しだけこのプレゼントを喜んだ自分がいたから。
「?・・・・まあ気を取り直して写真撮りましょう!」
パチリと取った写真はまるで心霊写真。
・・・・・・くらい危険物。
スネイプ先生みたいなサンタクロースがいたら子供は絶対泣き出すって!
「あと一日早いけれどこれ、私からのクリスマスプレゼントです」
写真をポケットに入れたついでに差し出すのは小さな箱。
「・・・・・・・」
「受け取って貰えないですか?」
先日の感謝の気持ちと今までのお礼とこれからもよろしくという思いが詰まった贈り物。
仕方ないかとポケットに戻そうとしたら慌てて手首を掴まれた。
「有難く・・・・・受け取っておこう」
「はい」
いつもより小さな言葉で告げられた感謝の言葉ににこりと笑った。
贈り物を渡せる人がいるってことは素晴らしい事だと実感する。
そして受け取ってくれることも。
「開けてもいいかね?」
「もう先生のものですから」
丁寧に包装紙が開かれて中からはスネイプ先生に似合いそうだとが選んだ懐中時計。
大事にすると言われて「じゃあそろそろ帰りますね」と立ち上がる。
「ちょっと待ちなさい」
引き止められて、はて?と立ち止まる。
何かあっただろうか?
「いや、クリスマスなのだから一緒に祝うのもいいかと・・・・」
思ったのだがとぼそぼそと言う先生に喜んでと返事をする。
「我輩も渡して置こう」
そういって机の引き出しの一番上から差し出されたもの。
ひとつは闇の防衛術の参考書。
もう一つは・・・・・・・片手に乗るくらいのこちらも小さな正方形の箱。
「開けてみないのかね?」
その声に促されてゆっくりと開かれた包装紙。
箱を開けたら綺麗なブローチが入っていた。
「これ・・・・」
「ローブを留めるのにでも使いたまえ」
宝飾品には興味は無いが一目で気に入ってしまった。
「でも高いんじゃ・・・・」
「我輩は似合うと思っのだが・・・・」
気に入らなかったか?
その言葉にふるふると首を振った。
一目で気に入ってしまったのだから。
「大事にします」
ありがとうございます、スネイプ先生。
そう笑ったの笑顔にスネイプは照れを隠しながら杖を一振りして部屋にクリスマスのケーキと
二人分のティーセットを用意した。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス、です」
紅茶で祝った二年目のクリスマス。
はその後オプションのトナカイ角をスネイプにつけてぱちりと写真を撮ったのだった。
「スネイプ教授、悪いのですが少しいらっしゃって貰えませんか?」
ひらひらと現われた紙がマダム・ポンプリーの声でスネイプ先生のことを呼び出してる。
「誰かが怪我でもしたのであろう」
ちっと舌打ちをしたスネイプ先生は傷薬といくつかの不気味な液体をローブに仕舞った。
「私、お邪魔ですよね」
「いや、・・・我輩は行かねばならんから飲んでしまったら気を付けて寮へ戻りなさい」
扉を慌てて出ようとしたスネイプ先生は同じくらい慌てて引き返してきた。
「あと机の一番上の引き出しに預かっていた手帳があるから持って行きなさい」
風邪を引かないようにな。
その言葉に頷いてスネイプ先生の後姿を見送った。
ぽつんと一人残された部屋はなんとも寒い。
紅茶の最後の一口をこくりと喉へ流し込み立ち上がると机の方へ回り込む。
一番上の引き出しから手帳を出すと主が不在の部屋を後にした。
「また来ますね」
返事がないとわかっていたけど呟いた言葉はそっと静寂へ消えて行った。