廊下を歩いていたら泣いてるジニーとぶつかった。

「どうしたの!?誰かに苛められた?」

スカートの裾が僅かに濡れててそういえばこの前もこんなことがあったなと思う。

「こっちに来て」

有無を言わせず空き教室へ飛び込むと持っていたハンカチを差し出した。

「・・・・誰にも内緒にしてくれる?」

大分経った時に零れた言葉に即頷く。

「約束する」

その言葉にぽつりぽつりと途切れがちながら聞こえる言葉の意味を理解して腹が立った。

「・・・・寮まで送っていくわ」

剣呑な瞳をしたにジニーは気がつかずグリフィンドールへと帰って行ったのだった。

















「リドル!あんた何してんのよ!」

筆記しながらも怒鳴ってしまう。

誰もいない部屋というのが唯一の救いか。

『それが僕に課せられた使命の一つだったからね』

「だからってジニーを利用するなんて最低だと思わないのっ!?」

書きなぐった文字は怒りの度合いを表している。

『君の妹分だって知らなかったんだよ』

「そういう問題じゃないでしょ!」

『・・・・・』

「何か言いなさいよっ!」

『僕ちょっと用事があるから』

またねという文字が浮かんで消えては用事ってなんなのよ!と手帳に書き込んだが返事は現れはしなかったのだった。












「リドル・・・本当のことを教えてよ」

じゃないと返事ができない。

そう書き込んだ。

スネイプ先生は不機嫌で私とは今、視線も合わせない。

リドルが一方的に身体を乗っ取って宣言した婚約解消が理由だと思う。

婚約解消するなんて思ってもなかったから焦った。

『どうして?親が勝手に決めたことだろう』

『そうだけどっ』

『それに選ぶまでの事だよ』

『・・・・・まだ返事は用意できないのに』

それでもいいよとリドルは言ってスネイプ先生とは返事が決まるまで話すなと言った。

だから話しかけられても無視して逃げていたら物凄くスネイプ先生が機嫌悪くしたのよね。

きっと。

『わかったよ、でも全てが終わるまでは手を出せないようにするから、いいね?』

浮かんだ文字にYESと書く。

身体の重さがふっと消えて眼下には浮かんでる自分の姿。

・・・・・・・・幽体離脱ってやつだろうか。

不思議体験を体験中。

「こっちだよ」

「え?」

引っ張られる力と一緒に声が聞こえて目の前の風景が一変した。






















「ようこそ。ここが秘密の部屋だよ」

マートルのトイレの蛇口に蛇語を話すのが継承者の証明らしくドロドロとした部屋へ繋がっていた。

「サラザール・スリザリンって変態だったの?」

どこの世界に女子トイレに隠し部屋作るヤツがいるよと呆れる。

しかも趣味が悪い。

「リドルって趣味が悪い。こんなジメジメな部屋一日も居たくない」

その言葉にくすりと笑ってリドルはの腰に差していた杖を持って一振りした。

「ゴメン。ハリー・ポッターを招待するとき用に変えていたんだ」

悪役ってこんな雰囲気の方がいいだろと笑った時には部屋は綺麗とまでもいえないがそこそこ清潔感のある部屋。

「で、ここで話してくれるのよね?」

半分ずつ実体化しているとリドルは向かい合ってソファーに座った。

「何が知りたい?」

その言葉には言葉を選んだ。

「スリザリンに入ったのは何か関係があるの?」

「僕は知らない。でもリドルだった彼が何かしたと思っているよ」

魔法で出した紅茶をカップに注ぎ飲む様は余裕があるように思えた。

図書館で拾ったただの変哲もない鎖。

ハリーに会った後右手の薬指に嵌ったシルバーの指輪。

いつのまにかついてた赤い石。

「あれはどこまでリドルが関係してる?」

「ほぼ全部」

指に嵌まった指輪を見て薄く笑うリドルをは見つめた。

「君に会うためにしたことだよ」

「金ダライもリドルね」

「ペンシーブ?あれには指輪と連動した時間逆行魔法を掛けたよ。君の残した手帳が唯一の手がかりだった」

赤い金属輪のペンシーブ。

の懐から出されたソレをリドルは懐かしそうに見つめて笑った。

「50年前秘密の部屋を開けたのね」

「開けたよ。君がいなくて暇だったからね」

「マートルを殺したのもリドルなの?なんで皆を石にしたの」

質問が次々と出てくるけれどリドルはただ淡々と答えた。

「マートルを殺したのは僕だ。誰も寄り付かないトイレから蛇を出した時に彼女が運悪く居合わせた。

皆って言うと猫や幽霊や生徒の事か。あれは僕の意思じゃなく必要だったんだ」

必要という言葉に引っかかるものを感じた。

リドルの歯切れが悪いように感じるのは多分気のせいじゃない。

「あの手紙はリドルが作ったの」

「僕はあんなもの作らない」

リドルはキッパリとそう言った。

「僕が求めているのは君だけ。君を傷つけるつもりはないよ」

少し眠ればいい。

そっと翳された右手が視界を遮るとふっと意識が途切れるのを感じた。

遠くで誰かが呼んでいることには気がつかずただ意識を闇へ沈めたのだった。























「・・・・・・・っ!」

聞こえた声があまりに悲痛の色を帯びていて。

その人の傍らにいて何かをできるならと思った。

自分を呼んで欲しい、求めて欲しいと思ったかはわからない。

ただ、声の持ち主が誰かのことで悲しんでいる。

その隣に居てあげたいと思ったのは確か。

あの時聞こえた声が彼のものだったのかと知る。

「彼はずっと君を心配してる」

「スネイプ先生・・・・」

秘密の部屋の壁に映し出されているのは保健室だろうか。

ベッドで眠る自分にスネイプ先生が傍らで名前を呼んでいる。

「・・・・我輩はまた間に合わないのかっ・・・」

くっと噛み締められた唇から零れた言葉。

手の甲で優しく触れられている様子に泣きそうになる。

「そろそろ答えは出たかな?」

今はもうすぐ六月と聞いて自分が四ヶ月近く眠っていたと知る。

「僕は課せられた使命を果たさないといけないんだ」

秘密の部屋はまたしても悪趣味な部屋へ変わっていた。

「答えは出たわ」

ゴクリ

静かな部屋に響いた音はどちらの息を飲む音だったのだろう。