スネイプ先生の部屋の前で大きく息を吸う。

ドキドキと脈打つ心臓を感じながら扉に手を伸ばした。

、ちょっと待って」

リドルに呼び止められて手を下ろす。

「どうしたの?」

「僕もそろそろ行かなきゃいけないみたいだ」

ふるふると震えたリドルの身体は段々冷たくなっているようだった。

「待ってそれならなおさらっ!」

バンっ!

ノックもせずにスネイプ先生の部屋に飛び込んだ。

「先生っ助けてくださいっ!」

・・・サヨナラ」

ぺロリ

最後に小さく囁かれたサヨナラの言葉と頬に触れた猫特有のザラリとした感触。

腕の中の小さな猫は空気の中に溶けて消えた。

「・・・・ノックもせずに入ってきて手品を見せて満足かね」

珍しい魔法を眠っている間に覚えたのかね。

呆れたような声が聞こえた。

目の前に立っているのは久しぶりに会うスネイプ先生の姿。

耳を掠めた懐かしい声に感情が堪えきれない。

「リ・・・・リドルがっ・・・」

泣き出したに訳もわからないままスネイプは抱きつかれて泣かれてしまい困惑する羽目となる。






















「・・・・・・・・・という理由なんです」

「すると何かね、婚約解消したのも眠らされたのもそのリドルとか言う男のせいでありながら消えた事を悲しんでいるわけだな」

「・・・・そうです」

端的に纏められすぎだが闇の帝王とか事件の内容を詳しくわからない所は省いたから仕方ない。

「記憶の欠片なら別に消えてもかまわないだろう」

まだ本人が生きているなら会えば良いだけだ。

もっともな言葉にそうかなと呟く。

「大体満足だと言ったのならそうなんだろう」

優しい言葉に再び涙が溢れる。

ひやり

「冷たっ!」

頬に触れたのはガーゼ。

つんと鼻を刺激する消毒液の匂いに何をするのだろうと思う。

「さっきの黒猫が触れていたからな、消毒だ」

きっちり拭かれてしまってリドルの悪い虫扱いと同じだと苦笑が漏れる。

「仕上げに・・・・」

ちゅっ

頬に落とされた柔らかい感触。

「・・・・・なっ・・・・何をいきなりっ」

キスされたという事実にびっくりしてソファーの端まで飛び退る。

「消毒だと言ったろう」

カチャカチャと片付けを始めているスネイプ先生の頬も僅かに赤い気がした。

「あの・・・」

言葉は全て言えなかった。

突然の訪問者で。

のお嬢様っ!ドビーめが自由になりましたっ」

いきなり現れた屋敷下僕妖精に地下室に漂っていた桃色の空気は粉砕されてしまったのだった。

























「元ごしじん様を吹っ飛ばしてドビーはすっきりしたのであります」

「そ・・・そう」

ルシウスさんも可哀想にと思わずにいられない。

思惑は全て失敗してコレクションも没収されたらしいし下僕にも吹っ飛ばされたしなるとプライド高そうなあの人は凄い悔しいだろうなと。

ジニーに罪をきせようとしたのは許せないけど。

「ドビーからのご忠告です。元ごしじん様は欲しいモノを手に入れるためには酷いこともするはずでし。

のお嬢様を愛人になさろうとすれば何が何でもなさろうとするはず。お気をつけて下さい」

いう事は言ったという満足気な表情してE.○は還っていった。

汚い靴下を握り締めて。

「還る先はお月様だったかな?」

自転車に乗って欲しかったとつくづく残念に思う。

「・・・・今の話は本当か」

「はい!?」

ぼーっと開放されたドビーの行き先を考えていたら地の底を這うような声が聞こえた。

「・・・・愛人がどうとかいう今の話は本当かどうか聞いたのだ」

「あー・・・・本当ですよ」

何考えているんですかねと言えば我輩が知るかっと逆ギレされた。

「そんなに怒らなくても。あ・・さっきの続きですけどね、スネイプ先生」

「なんだ」

ぶつぶつ何か呟いて怒っている様子に言いにくいなと思いつつ口にする。

「あの・・・もう一度婚約して貰えませんか?」

驚いている様子のスネイプ先生にわたわたと手を振って誤魔化してみる。

「いや・・・その・・嫌だったらいいんです。ええ。ただ親が決めた婚約でしたから解消したままでもいいんですけど」

「いいけどなんだ?」

「ええっ!・・・えっと自分の意思で解消したんじゃないのが嫌って言うか別にスネイプ先生のこと嫌いになったわけじゃないし」

もう良いですっ!というにスネイプは笑みを隠せなかった。

「我輩と婚約してくれるかね」

「えっ・・・・・・はい」

お願いしマス。

深々と頭を下げるをスネイプは抱き寄せた。

「では婚約の口付けをしてくれるかね」

「えっ!そんなことしなくちゃいけないんですかっ!?」

嫌だという表情にむっとした様子のスネイプ先生に嘘です嘘ーと言い訳する。

「前の婚約の時はそんなことなかったのに」

愚痴をいうにスネイプは鼻で笑った。

「そうでもないぞ。お前から熱烈に婚約の口付けを受けたからな」

ニヤリと意地悪く笑う姿は不機嫌とは対極で。

「・・・・わかりましたよ」

ちゅ

「婚約成立、だな」

真っ赤になったにスネイプは嬉しそうにそう告げた。

ファーストキスが婚約者っていうのもいいんじゃないかとが思ったのはその笑顔を見たせいかも知れない。

「これで虫を追い払える」

その後ぼそりと呟かれた言葉はの耳には届かなかった。