「ロックハート・・さんって意外と良い人ですね」
の言葉にスネイプはやや憮然とした表情をした。
「可愛いと褒められたせいであろう」
「それもありますけど、あのなんていうか普通の人だったから」
鼻につく自慢気な所がなくなったロックハートは爽やかに笑う好印象な人だった。
なんでも逆噴射した忘却術にかかったらしい。
なんかあの人の魔法で効くものもあったんだなあと変に感心してしまった。
「だってあの人自分のサインみて『何書いているか全く読めないですね』って言ったんですよ」
その上自分のポスター使って爪切ってたし。
「大馬鹿返上ですね」
沢山の著書に呆れていた表情が印象的だった。
「グリフィンドールに今年も負けちゃいましたね」
「まあリドルとかいう奴を倒してくれたのだから文句は言えんな」
スネイプ先生の言葉に酷いと文句を言う。
「婚約者の前で他の男の話をするお前が悪い」
なんだか強気なスネイプ先生にそういうものだろうかと思う。
だってリドルは友達だったのにとブツブツ文句を呟いた。
「ルシウス・マルフォイも理事を辞めさせられたからな」
ふふんと嬉しげな様子に溜息が出る。
「ドラコが可哀想じゃないですか」
拗ねたドラコの様子は見るも哀れだ。
だからというわけではないけれど仲直りを先日したのだった。
スネイプ先生の部屋に持ち込んだものを見せた。
「これがその魔法のかかっていた指輪なんですけど」
じゃらりと音がして現れたのはただの錆び付いた鎖。
「魔法は全て解けたみたいだな」
とにかく預かっておこうとスネイプ先生の手のひらにペンシーブも渡す。
手帳だけは残していた。
あれはリドルとの過ごした数週間の思い出だからと。
「そういえばお前宛の荷物が届いていたぞ」
差し出された箱には送り人の名はなくただ・へと書かれていた。
恐る恐る開けると中には綺麗なドレスローブと手紙。
「・・・・・綺麗」
手紙を取るとゆっくりと封を開ける。
『・・・・・この服が着れるようになった貴女はどんなに大きくなったのかしら。
私は小さい貴女を見てそう思うの。髪は?瞳は?どんな素敵な女の子になるか見れないのが残念だわ。
私はずっと昔から長く生きられないって言われてたの。魔法も数回しか使えなかった。
身体の負担になるからって。でも貴女を産めたのは貴女のお父さんと出会えたことと同じくらい幸せなことと思っているわ。
好きな人がもういるかしら?
貴女が好きになる人だもの素敵な人だと思うわ。
お母さんは貴女の幸せを遠くて近い場所から祈っているわ。貴女と貴女のお父さんを愛してる。
・・・・・・・じゃあね』
便箋に書かれているのは愛に溢れている言葉。
涙が溢れそうになって必死で押し留める。
封筒にまだ何か入っていることに気がついて取り出すと一枚の写真。
若い時の父親と若い女性と小さな赤ちゃん。
若い女性は父が飾っている写真の母と同じ女性だった。
「・・・・・・・・父って変わってませんね」
「ああ、学生時代と全くな」
幸せそうな様子に堪えていた涙が溢れる。
「なんだか私・・・涙脆くなったみたいです」
そう言って泣くの背中にそっと腕を廻したスネイプの背中にも細い腕が廻されたのだった。
「スネイプ先生、暫くのお別れです」
父親からの連絡で少しだけロンドンで生活できるらしいと聞いてロンドンのホテルに夏の何日か泊まることになったのだ。
「ああ、課題はしっかりしたまえ。あとお前の父親に母親がつけた名前だったのだろうといっておけ」
「え?あ、はい。わかりました」
なんでもスネイプ先生にって良い名前だろと父親は自分でつけたと言ったらしい。
一言は嫌味を言わねば気がすまないと言っていたのを伝言で有言実行する気なのだろう。
・・・・・・・・・・有言するのはスネイプ先生でも実行するのは私じゃないか!?
『来年は今回よりも大きな波があんたを襲うのが見える。心に素直であれば乗り切れる波だがね』
とノクターンの占い師に言われたのをふと思い出した。
確かに大きな波に襲われたものだと思う。
でも今此処にスネイプ先生と笑っていられる日常があるのは心で素直にあった結果だと素直に思った。
「浮気しないでくださいね」
「する暇がない」
はっきりと愛想のない言葉にそれもそうかと笑う。
ホグワーツを旅立つ時間は迫っていた。
「お前が帰ってくるのは我輩の元だと思って良いのだな」
「今の所そんな感じです」
胸元でキラリと日の光を浴びて光るブローチが眩しい。
「お前こそ悪い虫に気をつけろ」
リドルみたいな言い方に苦笑してしまう。
「待っている」
思ってもいなかった言葉に驚きつつはいと頷いた。
「スネイプ先生が迎えに来てくれることを期待してます」
甘えるもの忘れない。
結婚生活は50/50で行きたいし。
研究で篭りっぱなしの旦那だったら捨ててしまおうと心にこっそり決めたりして。
捨てるときは生ゴミか燃えないゴミか、粗大ゴミかのどれ?と迷いそうだけど。
「気が向けば、な」
汽笛がなってゆっくりとホグワーツ特急が走り出す。
「また、会いましょうねー」
遠くなる黒い影のようなスネイプ先生に叫ぶ。
きっと聞こえないだろうけど。
気持ちが大事だ、こういうことは。
見えなくなる前にスネイプ先生はくるりと帰っていったけど。
今度会った時には愛が足りないと怒ってみようと思う。
コンパートメントにはまたドラコがやってきて夏の予定を楽しげに語ってくれた。
「もし良かったらも誘ってやらないこともないが」
「私パス!」
ルシウスさんのアジトに足を踏み入れるほど無謀じゃないですと心の中で付け足して。
愛人候補と本妻さん、ご面談ーは是非とも避けたい。
傍から見るのは楽しそうだが。
まさに昼メロの世界。
この豚と罵られるのは遠慮したい。
牡丹と薔○って魔法界並みにありえないよね。
まだ何か言いたそうなドラコを余所に廻ってきたお菓子の山盛りになった台車へ走っただった。
「なんかデジャヴ?」
段々と列車の速度が落ちてくる。
ロンドンが近いのだろう。
食べていたお菓子をジャイアンズにあげた。
箒とかと押し込められたと聞いてまさかと良心が痛んだから。
ガタゴトと音を立てて荷物をカートに載せた。
荷物には今学期の思い出が詰まってる。
遠くにハリー達三人組が見えた。
「ハリー!また来学期会おうねー」
大声で叫んだら聞こえたみたいで手を振ってくれた。
一足先に柵を越えると其処はマグルの世界で人で溢れていた。
「っ!こっちだよ」
父親の声がしては足を速めた。
「久しぶり、お父さん」
「久しぶり」
久しぶりの父親ににこりと笑って荷物を押し付けた。
「たっぷりと父さんには聞きたいことがあるから」
「なんだか、母さんに似てきたね」
嬉しい半分怖い半分という表情の父親に当たり前でしょと返事する。
「だって私はお母さんの子供だもの」
そしてスネイプ先生の婚約者。
唇を触れてふふと笑う娘を父親は笑いながら荷物を抱えて駅を後にしたのだった。
黒猫が一匹片隅にいたことは誰も気がつかなかった。
夏の始まる少し前の出来事。