「先生、このロックハートって言う人は闇の防衛術の第一人者なんですか?」

教科書リストに載っている本の筆者。

あまりにも多い購入冊数に疑問を口にする。

大体日本は義務教育なら教科書は国から・・というか税金からだし。

「それは自分で確かめろ」

意味がわからず足早になったスネイプ先生に慌ててついて行ったのだった。



















フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店。

その本屋の前には奥様方が行列を作っていた。

ここは本屋と見せかけて路地裏には行列のできる相談事務所かラーメン屋でもあるのかと思ってしまう。

並ぶのが好きな日本人と言われるがは待たされることはあまり好きではなかったので興味を持ちはしたが並ぼうとは思わなかった。

「今日は何かあるんですか?」

付き添いの先生に尋ねると忌々しそうに鼻で笑って視線で示した。

「ギルデロイ・ロックハートサイン会?」

チラシが窓に貼り付けられていた。

時間は十二時半から四時間も。

「私はマジックだって。マッキーかなゼブラかな?」

書き心地はゼブラが好きだがサインペンならマッキーだろうか。

意外性を狙って筆ペンで達筆なのも捨てがたい。

がどのマジックでロックハートなる人物がサインするのかと考えていたらスネイプは壁にかかっている時計を見て舌打ちした。

!始まる前に買って来い」

「はーい」

急いで書かれていた本を手にとっていく。

「一冊、二冊、三冊・・・・四冊目っ!」

最後の一冊を取ろうとした時いきなり男が出てきた。

キャアー!!

黄色い、いや黄色だった声が書店に響いた。

奥様達の悲鳴だ。

忘れな草色のローブを纏った男はを見て微笑んだ。

「お嬢さんは気短と見える。私のサインを貰う前に買ってしまおうなんて恥ずかしがりやなんだね」

バチンとウィンクされては?と固まった。

いつ、誰が、何処で貴方のサインが欲しいといったんだー!!

と言いたい気分だったがファンで溢れる此処では自殺行為かと我慢した。

腕には鳥肌が立っている。

「そこで!この自分からサインしてくれと言えないお嬢さんに特別に私のサインをしてあげようと思うのです」

ワァアアアと歓声が上がる。

ここでいりませんと言ったら血を見そうだ。

危機回避能力はそう告げていた。

ノーと言える日本人には明日からなろう。

そう心に決めて完璧な恥ずかしがり屋のお嬢さんを演じる事にした。

ガラスの仮面読んでて良かった。

「まあ・・・・・嬉しいです」

頬を染めるにうんうんそうだろうと誰もが微笑ましく思った。

一部を除いて。

「さあ、頑張って勉強するんだよ」

そう再びウィンクしたロックハートにこくりと頷いて静かに書店から抜け出した。

「・・・・・・・あー気持ち悪かった」

ぶるりと背を振るわせる。

本の表紙には先程であったロックハートがニコニコと笑いかけていた。

「どうだ?感想は」

表紙を下にしていたら一部始終傍観していたらしいスネイプが聞いてきた。

「確かに馬鹿っぽいですね」

本当にあの人の教科書が役に立つんですかと聞いてみた。

「仕方なかろう。奴が教壇に立って使うというのだからな」

忌々しそうに告げられた言葉は爆弾のような威力があった。

「あの人が先生ですか?」

絶対最悪だと新学期の授業へと思いを馳せる。

とにかく一度は教科書となった本へ目を通しておかないと。

読む気は全くなかったのだがなんとなくそうしていた方が後々いいような気がしてきて実行する事にしたのだった。














キャアキャアと奥様達があげる歓声を背中に足を返したスネイプと

「あっ!ちょっと待っててください」

出てきた本屋へ踵を返したはもう一度出てきたときには大きな巻いた紙を抱えていた。

「・・・・なんだ、それは」

不審そうなスネイプににこりと笑い唇に人差し指をつけた。

「それは秘密ですvv」

ホグワーツについたらわかりますよと言って歩き出すについていくスネイプ。

その頬は僅かに紅い。

「これから薬草のお店ですか?」

振り向きもせずに尋ねるに否と答えた。

「まずはお前の洋服からだ」

その言葉に何故?という表情の

「通販だけでは良いモノがないといっていただろう」

確かに夏の間通販に色々な文句は言ったのだが。

「先生が覚えていてくれるなんて思っても見ませんでした」

驚きがまだ抜けない様子のを追い抜かす。

「行くぞ」

スネイプは自寮の少女達が噂していた店に足を向けたのだった。

「可愛いっ!!」

ピンクやブルーの色とりどりの服。

魔法界の服のみならずマグルの服も置かれている。

「これは・・・・サザエボン?」

修学旅行の時に見たサザエボンが魔法界にもあるとは。

居心地悪そうなスネイプが口を開いた。

「我輩は薬草店にいるから終わったら来なさい」

「はーい」

もスネイプに選んでもらおうなどと期待は全くしていなかった。

真っ黒な男がこの店にいるのはなんとも不気味だし。

「先生ーありがとー!!」

遠ざかっていくスネイプの背中にお礼の言葉を叫んだ。

変わらない背中だけどきっと彼には届いてる。

そう判断してお財布の中身を確かめた。

「すいませーん!!流行の服ってどれですか?」

魔法界の流行は魔法界の者に聞け。

キラキラ文字が光るローブを纏った店員さんに色々アドバイスを受けたのだった。