「このホグワーツではよくあることじゃから」

どこかから紛れ込んだみたいだというに校長先生はそう言った。

「私はディペット。このホグワーツで校長をしておる」

コンコン

ノックの音と共に入ってきた二人の人物。

「ああ来たかね、アルバスにリドル」

開かれた扉から入ってきたのは長い鳶色の髪と髭の背の高い魔法使いとスリザリンのタイをした男の子。

「・・・・・・・ダンブルドア先生!?」

自分の名を叫んだ見知らぬ少女ににこりと若き日のアルバス・ダンブルドアは笑った。

「はて?君とは初めてではないかね?」

その言葉に口を噤む。

ここは過去だとわかった。

どうしてか知らないけれど自分は過去に飛ばされたらしい。

ならばむやみな事を口走らないことだ。

過去が変わると自分の存在もなくなるかも知れないとドラえもんで知っていたから。

ああ、なんて為になるアニメだ。

さすが国民的アニメ。

日本人特有の笑顔で誤魔化しているとディペット校長先生は笑っていった。

「この子はちょっとした手違いでホグワーツへ来てしまったようだ。迎えが来るまでスリザリンにいて貰うことになったよ」

その言葉にリドルと呼ばれた男の子が視線を上げて目が合った。

「・・・・・・・なんて深い瞳なんだろ」

ぽつりと呟いた言葉は他の人には届かないほど小さかった。

「アルバスは授業の時にリドルは生活習慣を手助けしてやってあげてほしい」

授業は自分のには出なくていいからリドルと一緒に受けてみなさいという言葉に頷く。

帰れないことはないだろうと高をくくって楽しむことにする。

「では僕はレポートがあるので失礼します」

「私も行きますっ!失礼しました」

パタンと閉まった扉を背に隣の男の子に話しかけた。

「私はっていうの。よろしくね」

手を差し出すとにっこり微笑まれた。

「僕はトム・マールヴォロ・リドル」

よろしくと言って背を向けた少年に引っかかった。

「ねえ、リドルって他人が嫌い?」

階段を歩いていた足がピタリと止まる。

「何故そう思う?」

笑ってない瞳がを見つめていた。

「スキンシップ嫌いな人みたいだから」

握手しなかったでしょ?

こっちじゃ珍しいもんと言えば肩を竦められた。

「気のせいだと思うよ。僕は他人嫌いでもないし握手が嫌いな奴だっているさ」

その言葉と向けられた笑顔に他の人間なら騙されたかもしれない。

ずっとホグワーツで生活していた人間ならリドルに対してそんな事を思いもしなかっただろうけれど。

「ううん。笑顔が嘘っぽい」

瞳が笑ってないよ?

そう言ってしまったと思った。

纏う空気ががらりと変わったのだ。

「カンがいいね。君みたいな他人は嫌いじゃないよ。ただ僕には関わらない方がいい」

そう言い放って立ち去ろうとするリドルの背中を必死でついて行くしか今のには方法はなかったのだが。

















「ね?僕に関わらない方が良いって言っただろう?」

勝ち誇ったように告げるリドルに埃塗れのは憎憎しげに言った。

「どうせあんたが言ったんでしょ『纏わりつかれてあの子には困ってるんだ』って」

取り巻きがいくら私が目障りだからってあんたが何か言わなきゃここまでしない!!

そう言うとスカートについた埃を払う。

「全く。私以外の女の子だったら逃げて告げ口してるわよ」

全く動じてない様子のにリドルは面白そうに笑った。

「何故君はそうしない?」

「あなた相手に無駄とわかっているから」

スリザリンの監督生で成績優秀、校長の覚えもいい生徒がイジメしますって言っても大人は信じてくれない。

手を出す女の子達は上手く使われているだけで可哀想だし。

そういうとリドルはいきなり笑い出した。

「ハハハ!君は変わってるよ」

楽しそうに苦しげに笑うリドルの姿にも苦笑した。

なんだか目の前で笑ってるリドルのせいでこんな大変な目にあっているのに気にもならなかった。

すっと笑ってるリドルの顔に手を伸ばす。

びくり

一瞬にして固まったリドルの頬にそっと手を添えた。

「そうやって笑ってる方がカッコいいよ?」

私は澄まして喋らないリドルよりよっぽど好きとが言えばふん、と鼻で笑われた。

「笑ってばかりだったら馬鹿と思われるじゃないか」

反らした顔が赤くなっていたことをは知らない。

そうかも、そうだねとくすくす笑うの声にリドルがそっと笑ったことも。















「アンタいい気になるんじゃないよ」

ドンっ

壁に身体をぶつけられた。

油断した。

トイレから出てすぐに武器解除の魔法をかけられるなんて思ってもなかった。

スリザリンのリドルの取り巻き達は最初はリドルに頼まれてやっていたようだが今では自分の意思でに手を出していた。

リドルがに手を出すなとわざわざ言った事が発端だった。

「リドル様はアンタなんかに釣り合わないっ!」

「様って・・・・痛いっ・・・お腹、笑いすぎて死んじゃうっ」

あははははは

リンチしているのに笑っているの態度が火に油を注いだ。

「オスカー様ならわかるけどさあ・・・・っ・・・・」

もう一度強く壁に叩きつけられて息が止まる。

「何馬鹿にしてんのよ!私達の方がアンタとは比べ物にならないくらい上なんだよ」

くすとの口元が笑いの形をとる。

「馬鹿だね。リドルは普通の男の子なのにあんたたちがそんな風に祭り上げるから笑えなくなる。

上とか下とか言ってるとね本当に大事なものを見失うんだよ」

大体それじゃ自分が下ですって言ってるようなもんじゃんと冷静に突っ込んだのもまずかった。

「黙れって言ってんの!!」

飛んできた机に頭を抱えた。

これ以上馬鹿になるのはごめんだ。

「何をしてる!!」

扉の方から声がした彼女達が最も聞きたくなかっただろう声。

「・・・・・・リドル」

「こっ・・・・これは彼女からして来たんです」

必死になって言い訳する彼女達に溜息を吐く。

身体中が痛いけどリドルにバレたのは同情モノかも。

「言い訳は・・・・」

「リドル。いいから彼女達用事があるって」

「そう・・か・・・」

バタバタバタ

遠ざかっていく足音。

溜息が響いた。

どちらのものかはわからなかった。

「これ」

差し出されたのは飛ばされた杖。

「ありがと」

ついでに手を引いて起こしてもらった。

「全くドジった」

助けてくれてありがとう。

その言葉に泣きそうな笑顔を向けたリドルにへらっと笑うの姿。

時は優しく静かに流れていた。













廻る因果の糸車

複雑に絡む運命の糸

交差する想いと願い

過去と現在と未来を結びまた切り離していく

廻る

廻る

糸車は廻ってく