「そろそろ帰れないかな?」

の呟きにリドルは足を止めた。

は何処から来たんだ?」

何度目かの問いに笑って誤魔化す。

相手がリドルだと難しいなあ。

でも未来なんて言えない。

何がきっかけで自分がいた現在が変わるかもわからないのだから。

「言えないって言ったでしょ?」

ごめんねと謝る。

酷く傷ついたような表情をするから。

「また会えるかどうかも駄目なのか?」

「だから私にもわからないんだし・・」

多分ここは五十年近く昔。

目の前にいるリドルだっていい歳したおじさん・・・・というかおじいさんになってるはず。

長生きしてたら会えるよとこっそり思った。

最初会った時に見て取れた瞳の中の虚無感が陰を顰めているのが嬉しい。

「でもさリドルはリドルだもんね」

笑って心に留める。

どんなに変わってもリドルはリドルだと。

この三週間一緒にいて実は我儘とかクールぶってるけど笑うと止まらないとか知る事が出来た。

「お爺ちゃんだったら笑いすぎは悪いけどね」

小さく思うのは戻っても自分とリドルが友達だって事。

「なるようになるさー」

明日があるさー

昔はやった曲を歌って勇気づける。

「珈琲飲みたい!」

「ここは寒いから寮の部屋にでも行くか」

色気より食い気なの発言よりリドルの部屋でティータイムとなったわけである。

















「もう三週間になるんですけど」

その言葉にディペット校長はふむと一冊の本を取り出した。

「これが君の現象に近いと思うんだがね」

ペラリ

栞の挟まっていたページを開ければこう書かれていた。

「逆行現象?なんらかが原因で過去や数あるうちの未来へ飛ぶこと。

身につけていた魔法が時の魔法と二重になって過剰反応することが多い?」

本当ですか、それ?

そう言って詰め寄るにこくこくと頷くディペット校長。

「でどうすれば戻れるんです?」

「先を読みたまえ」

指の先には握り締めた本の読んだ部分の続き。

「・・・期限が過ぎたら自動で戻る。前兆は現在から飛ばされたときに見た魔法発動の光・・・」

「光は見なかったかね?」

むむむむむ

思い出してみる。

杖が引っ張られて引きずり込まれた水の中。

視界の端に映った赤い光・・・・・。

「光!?」

「思い当たったかね?」

そういえばと見た嵌まったままの指輪。

石がついていたはずだが――――――

「ないっ!!!」

探してきますっと慌てて出て行ったの背中をディペット校長は優しい視線で見送った。















「ない、ない、ないっ〜!」

埃だらけの空き教室。

あるならここしか思いつかない。

「何を探してるんだ?」

後ろから声がかかった。

振り向かず答えた。

「帰る方法がわかったかもしれないの。赤い石落ちてない?」

スカートが埃塗れになるのも構わず探すにリドルは小さく舌打ちした。

「アクシオ、の赤い石」

ヒュン!

教室の隅から赤い物体がリドルの手の中へ飛び込んだ。

「ありがとう。これで帰れ・・・・」

帰れるといおうとしたはリドルに抱きしめられていた。

「ここにいる事はできない事?」

「だって私のいるべき場所はここじゃないから・・・」

そう告げるの声はとてもか細かった。

ずっと帰れないかもという思いを隠してきたのだとリドルはようやく気がついた。

「じゃあ僕が君の所に行く」

「それはできないと思う」

本に書いていたのは自動的に戻るという事だけ。

リドルだけ他に飛ばされることもありえるのだから。

「待ってて。きっと会えるから」

の手のひらに落とされた赤い石。

・・・・僕は・・・・」

「サヨナラ、リドル」

また会おうねという言葉は彼に聞こえただろうか。

かちりと嵌めた赤い石はゆっくりと光ってを包み込んだ。

パサリ

落とされ残されたのは手帳。

と書かれた彼女のモノ。

中を見てリドルは気がつく。

それが50年後のものだということに。

その絶望がじわりと彼を蝕んでいく。

翌年、留学してきた日本人にリドルが見出したのは誰だったのか。

ゆっくりとリドルが闇に浸っていくのはが去ったのがきっかけだったのかもしれない。














糸車は廻ってく

風にくるくる音立てて

枯れた音をカタカタと

糸を絡めて廻ってく

廻る

廻る

糸車

廻る因果の糸車