熱い熱い日々もようやく終わる
夏の終わり
そしてまた一年が始まる
ある夏休みも残り僅かな日のこと。
いつものように研究室へ引きこもった先生を残して残ったレポートを始めていた。
「十四世紀における魔女の火あぶりの刑は無意味だったぁ!?」
新事実だとレポート課題を見て声を上げた。
ほぼマグルとして生活していた自分には嘘じゃないのとしか言えない。
魔女裁判は過酷を極めていたと様々な関係の本にあるしジャンヌ・ダルクなど聖女の話は有名ドコロだ。
「えーっと・・・Mだったとか?」
そんなマグル的答えじゃ駄目なんだろうなと思いつつ教科書を捲り適当な部分を抜粋して丸写し。
残された課題は我らが魔法薬学教授の出した課題「縮み薬」だった。
「これって確か・・・・材料はあったよね」
頭の中に縮み薬の必要な材料がはじき出される。
それもこれも漫画や小説の少ないスネイプ宅にいるからこそ。
先生は実験三昧で暇すぎて読めるものは何でも読んだ。
最近読み始めた日刊預言者新聞にウィーズリー家の皆さんがペットと一緒に出ていたのには驚いたが。
活字中毒になりかけている身には魔法薬学の希少文献ですらオアシスだ。
「せんせー!?ちょっと実験させてください!!」
研究部屋に篭っている主に一声かけてセッティング。
彼はきっと大鍋の変化を見守りつつカリカリ何かを書きとめていることだろう。
「これで後で文句はないよね」
スネイプの扱い方が知らないうちに上手くなっていただった。
「できたー!!」
完成した縮み薬は完璧だった。
難点を言うのなら
「・・・・・こんなに粘っていたっけ?」
サラサラな液体のはずが水飴のように粘っている。
「女は度胸ー!!」
ぺろりと縮み薬を舐めると視界が急に歪んでしまった。
気がつけば目の前のテーブルがやけに巨大化していた。
大鍋も。
「うわースネイプせんせー!!」
叫び声を上げれば杖を持ったスネイプ先生が飛び出してきた。
片手にはフラスコ。
「なっ!?」
絶句した先生の手からフラスコ落下。
パリンと割れたフラスコからはしゅうしゅうと緑色の煙が出て床に穴を開けてしまったのだった。
「縮み薬を煮詰めすぎたのだろうな・・・まあ一日も立てば戻る」
そう言われたのだけどまだ戻ってません。
久方ぶりに研究室から姿を現したこの家の主と向き合って朝食。
心配してくれているのだろうなと思う。
見た目は五歳児程度だし。
テーブルの上にはちょっと日本の朝ごはんが食べたくなったので和食。
小さいと中々に大変な作業でしたよ。
炊き立ての白米にお椀の中にはお味噌汁。
目玉焼きに焼き魚まで。
お味噌汁をスプーンで飲まない人だったことにほっとする。
スネイプ先生がそんな人だったら笑い死ねます!!(断言)
ドラマ、朝の連載テレビ小説とか主婦が大好き昼ドラとかにある
「お父さん(もしくはあなた)、新聞は御飯が済んでからにして」
という人の気分がよくわかる。
作った側としては非常に腹の立つ行為だ。
いつもはそんな事をしないスネイプ先生だからこそなのかと思いつつ新聞を読んでる隙に目玉焼きにマスタード塗って
お味噌汁にケチャップ投入してみようかとそんなことを思ってしまう。
その時スネイプ先生がドンっと机に拳を入れた。
ま・・・まさかサトラレた!?
う・・嘘ですよーそんなことしませんからと後ろ暗いので口元をヒクつかせて笑みを浮べるが動揺させた相手の視線は新聞に釘付け☆
そんなに美人でもいるのかなーと食べ終わったので食器を片すついでに後ろから新聞を覗き込んだ。
スポーツ新聞でもないからエロいページに釘付けということはないだろう。
贔屓のクィディッチチームが負けたとかだろうか。
嫌だな、と思う。
某球界の盟主こと〇人ファンや阪〇ファンは熱くて困る。
ちょっと九回裏で逆転されたからと言って不貞寝されるのは勘弁だ。
そんな旦那にしたくない悪癖を考えていたらスネイプ先生の手がブルブル震えて箸に抓まれて空中飛行していた目玉焼きが落下した。
ボトリ
「・・・なんてことだ」
囁くように呟かれた言葉に返事した。
「そんなに残念がらなくてもまだ卵ありますから目玉焼きくらい作ってあげますって!」
「違う」
即座に一刀両断だよ。
・・・・・腹が立つのは心が狭いからではないはずだ絶対。
落下先を見れば卵にまみれた紙面には怒りまくってる男の人。
ちょっと男前だなと思う。
まあなんか騒いでいるみたいだけど。
「・・・・卵ぶつけやがって、コノヤロー?」
アフレコしてみたがちょっと微妙。
スネイプ先生はツッコミも入れてくれず説明さえしてくれないまま見入ってる。
ヒトメボレですか?
シリウス・ブラックと名の極悪人らしい人を睨みつけてるスネイプ先生にはそんな軽いジョークさえ投げれない。
「・・・・・・ブラックめ」
呟かれた言葉の意味を聞く前にテレビ欄もない魔法界の新聞はぐしゃりと手で潰されてゴミと化したのだった。