世の中の主婦の皆さんこんな便利グッズありがとう!!

少女はリーマスから借りたタッパーを握り締めて感激しつつ食べ物を詰めたのだった。

















犬・・・いやシリウスを部屋に匿って早数日。

今だスネイプ先生には言えないまま。

このタッパーを思いつくまで苦労したぜと思い出すのは試行錯誤の日々。

ビニール袋に牛乳とオートミール入れて歩いてたら破れてローブが腐った雑巾臭になったとか

パンが湿ってハ○ジの気持ちがわかったとか。

聞くも涙、語られるも涙な物語だ。

爆笑の末の涙だけど。

育ち盛りだからとお菓子をたくさん持ち帰ろうとしたらドラコに「横に成長するぞ」と言われてシめた事もあった。

いつの日かスネイプ先生にキメてやろうと密かに練習していたジャーマンスープレックス。

「レディーに向かって失礼ね!」

「ぐはっ」

周りからは拍手喝采貰えるくらいの見事な冴えだったというのに拍手よりも先に

「ジャーマンスープレックスキメるレディーはいねーよ」

とか突っ込まれてしまったり。

結局マトリョーシカに魔法を掛けて肉を詰めて魔法で動かして帰ったらスネイプ先生から厳重注意を受けたり。

どうやら見かけがコケシだったのが恐怖だったらしい。

中にトマトジュース入れててちょっと零したこともあったし何より食べる本人からキモいと言われた。

我侭な男はこれだから困る!!

飯抜きの刑を言い渡した翌日にルーピン先生が朝食をいそいそと詰めているのが見えてこれだ!と閃いたのだ。

がよければ貸してくれないかと言えば足元から十数個空のタッパーの入った紙袋を出してきたのは驚いたが。

ああ、文明の利器っていいねとタッパーの素晴らしさを語る所帯染みた風景がその日ホグワーツではみられたのだった。












がスネイプにシリウスの存在を言わなかった理由はいくつかある。

その一つはお互いをどうも天敵と思っているようであるから、である。

ハブとマングース?と思えるほどだ。

まあシリウス・ブラックが極悪脱獄犯人ならば迷わず言っただろうなと思うのだ。

か弱い女の子である自分に極悪な犯人に勝てる方法なんてない。

プロレス技があるじゃないかとは此処では言いっこ無し、である。

杖を持たない脱獄囚であっても生きている分、学んでる知識は彼の方が多い。

杖無しでも何かされれば抵抗は無理だろう。

その危険を放置しているたった一つの理由は彼を見た時違うと感じたのだ。

彼は、違うと。

確かに出会いが好意的であったからという指摘を受ければ好意的ではなかったと否定は出来ない。

けれどあの出会いでなくとも彼が纏う空気は何処かが違う。

どちらかと言えば信じていた相手に裏切られたような、そんな悲しみを逸らすために此処にいるような。

元々は屈託無く笑う人だったのだろうけれど今は部屋でジリジリとしている。

食事時以外は。

ガツガツと食べている様子に肩を竦めた。

「シリウス、私は貴方がハリーに危害を加える人じゃないと思ってる。だから本当のこと教えて」

犬の姿をしていた彼は暫く聞いてない振りをしていたが後ろ足でガシガシと耳を掻くと人間の姿となった。

「確かに俺はハリーには手を出さない。けどこれ以上お前に迷惑も掛けたくない」

「十分掛けられてるって!気にするくらいならぺろっと喋ってよ」

すまんと言いながらも胡散臭そうな視線に何?と返した。

「あー、あのな、うん。俺の勘違いだったら気にしないで欲しいんだが・・・お前スネイプとどういう関係なんだ?」

ただの寮監と生徒ってわけじゃあない・・・よなと指された先にはマグルや魔法界の写真。

動いてにこりとたまに笑いかけてくれる魔法界の写真が一番のお気に入りだったりする。

シリウスが居ついてからは写真のスネイプ先生は何時だって睨んでいるのだが。

「言ってなかったっけ?えっとねー親の決めた婚約者、なんだなー」

自分でも選んだことは伏せてあははと笑う。

シリウスも一緒に笑っていた、のだが。

「あー・・・じゃあ尚更言うわけにはいかねー。この借りは返すからもう少し待っててくれよ」

その彼が右手に持っていたのは。

「・・・私の、杖」

眠りに誘う魔法の呪文にしまったなーと思いつつ、それでも彼を、シリウスを信じている自分が、居た。