「コレだけは使いたくなかったんだけどねー」

どうにもこうにもボガード退治が進まずには最終奥義を出すことにしたのだった。
















「できるならしたくなかったよね」

今更、という気もするがやはり気が進まないのだから愚痴が零れるのも致し方ない。

バッサバッサと景気良く飛び出したのはホグワーツお抱えのフクロウだ。

そう、は父親の元に手紙を出したのだ。

ホグワーツに入って三年目にして初めて自ら進んで連絡を取った理由は課題が全くもってクリアできないせいだった。

いくら考えても赤、という色しかない世界を、映像を見せられても何も浮ばない。

ただ胸の奥がざわめくだけだ。

そんな恐怖に晒された覚えも無いので幼少時期のトラウマかと思ったのだ。

「あんなに意気込んで大丈夫かな。・・・絶対力尽きそうだけど」

何せ娘の自分でも何処にいるかわからない人なのだ、父親は。

優秀な魔法界のフクロウとて探し出すのは難しいだろう。

が選んだフクロウは遭難を考慮して少し太り気味の強そうな一羽だった。

これで砂漠で遭難しかかっても自前の脂肪で何日か保つね!!

という理由である。

そんな酷い選ばれ方をしたとは露知らずフクロウは意気揚々と飛び立った。

姿も羽音さえも無くなった窓辺から暫く夜空を見上げていたがゆっくりと閉めた。

シリウスがハリーを襲いに侵入したとホグワーツ中が騒然としている。

自身は違うとシリウスを信じているがなんとなく嫌な予感がする。

「両親の仇って奴だもんね」

ハリーは多分真実を知ったなら自ら飛び込んでいきそうだ。

どうも彼、というかあの年頃の男の子は自分の力を過信してるよなあと自分を棚にあげて思う。

自分を大事に思っている人がいると省みることもなく。

むしろ命を投げ出すことを惜しんだら恥ずかしいとでも思っているような。

男の人にもそういう傾向はあるみたいだけれどと脳裏を過ぎった黒衣の男にううんと唸る。

けれどその違いこそが歯痒くもあり愛しいものではなかろうかとも思うのだ。

男の子は難しいねと苦笑して机の端に置いてある砂時計に視線を向けた。

「私にはこれがある」

使ってはいけないと言われたけれど人の命には代えれない。

もし彼がハリーを傷つける時があれば・・・






そんなこと、ない







何処かでそう呟く声が聞こえた。

いや、そんな気がしただけか。

「考えすぎかな」

そう一人呟いて、こんなにもシリウスを信じている自分をとても不思議に思ったのだった。






























「いいかね。危険な事には近付くな、巻き込まれるな、飛び込むな」

「いや、いいかねも何も巻き込まれたらどうしようもないかと」

思うのデスガ、と言い返すとギロリと睨まれた。

心配してくれるのは嬉しいけれどもう自ら関わりましたなんて言えそうにない雰囲気。

藪蛇ドコロかバジリスクが出そうですよ。

スリザリンだし。

「それと・・・最近、ハッフルパフの生徒と仲が良いらしいな」

スネイプの少しだけ棘のある声には気付かずああ、と返事をした。

なんというか話題がそれたのが嬉しかっただけなのだが声が弾んでしまった。

「セドリックですね。あんなイイ人初めてです。頭は良いしカッコいいし王子とか騎士とか呼ばれてるみたいですね」

ファンまでいるという男の子に裸を事故とはいえ見られちゃったのかーとぽっと頬を染めたの内心を知らずスネイプの手に力が入る。

よく見れば額に青筋が立っていたりも、する。

「・・・ふん。優しいだけの男など性質の悪い。少しばかり親しげにされたからとてあっさり信用するのはどうかと思うが?」

「えーセドリックは優しいだけじゃないですよ?爽やかで誠実でスポーツマンの模範生ですってー!!」

今度のグリフィンドールvsハッフルパフも応援してくれって言われましたとは笑うが勿論対するスネイプの顔には笑いの欠片すらなかった。

あるのは忌々しそうな嫌味ったらしいグリフィンドールもしくはハリー用の顔。

「ほう。自寮より自分の応援してくれと良くぞ図々しく言ったものだな」

「大体スリザリン対ハッフルパフって訳じゃないし。私、そんなにクィディッチ自体好きじゃ・・・」

ないですよと言う前に可笑しいとようやく気付く・・・が遅すぎた。

スネイプ先生、なんか怒ってる?

「・・・次の試合の日は我輩の研究の助手をして頂こうではないか」

低い低い声で下された寮監命令にセドリックごめんと内心で謝っただった。
























「それはが悪いよ」

ルーピンはお菓子を食べながらあっさりと言った。

ボガート退治の練習に訪れたのだが何故だかお茶になってしまっている。

そして先日の話をすればあっさりポテトよりも軽いスネイプを擁護する台詞にええっと過剰反応してしまう。

「私デスカ!?」

学生時代からスネイプ先生を知っているらしいので代表として相談したのだがぐっさり言われてしまった。

何故に!?

顔に出ていたらしくこれまた簡単だよと言われた言葉。

「だってそのセドリック?その子は爽やかで誠実な人気者なんだろう?」

コクコクと頷く。

というかそれで人気者でなかったら可笑しいだろう。

「で、はその人気者な男の子を褒めた。自分と正反対な男を恋人が手放しで褒めたら流石にセブルスも嫌だと思うよ」

「確かに――」

この確かには誠実かもしれないが爽やかで人気者でないスネイプに掛かっている。

「それでクィディッチの代表選手だろう?」

再び頷けばルーピンは苦笑するばかりだ。

「セブルス、箒は苦手だったみたいだけどクィディッチは好きだったみたいだしね」

「あー・・・・・・・なるほど」

先生のプライドを傷つけちゃったのかなーと反省する。

そして飛行術が苦手だったのかとつい笑ってしまった。

なんだか微笑ましく思えるから不思議だ。

「あ、でも恋人じゃないですよ」

「そうなのかい?」

意外そうな表情にそうなんですとは返事をした。

だって別に付き合おうとか言われた訳ではないしと現在の状況を考える。

どう考えても普通の生徒以上、恋人圏外だろう。・・・うん、多分。

「それにしては縛ってるね」

ぎっちぎちにと言われては苦笑し返した。

それはスネイプが危険より守る者として自らを扱ってくれてる事で少し過剰防衛な気もしたがその気持ちは嬉しいと感じているから。

「想定の範囲内、ですかね。嫌な事は嫌って言いますし」

むしろ、クィディッチ観に行くのが嫌ですねと言う少女にセドリックという少年もセブルスも報われないよねとルーピンは苦笑して

から相談代として差し入れられたクッキーを美味しそうにぱくりと口に放り込んだのだった。