「先生ー?教科書とか買いにいつ行きます?」

そろそろ日程が・・とカレンダーを見て告げた。

先日届いたリストを見て購入予定のモノがいくつかあることを確認する。

「闇の防衛術の先生変わるんですよねー」

ギルデロイ・ロックハートが不慮の事故で記憶喪失になったのは皆知っていることで。

あっけらかんとした様子の彼にフレッドとジョージは「惜しい人を亡くしました」なんて拝むブラックなジョークを飛ばしてもいた。

ピクリ

単なる疑問を口にしただけなのにスネイプ先生の眉が跳ねた。

「スネイプ先生の知っている人なんですか?ロックハート先生よりまともだったらいいんですけど」

「・・・・・・・まともといえるかどうか」

コンコン

スネイプの呟きはノックにかき消された。

「はーいっ!どちら様ですか〜」

先生に食べた後の食器は下げておいてくださいねと言いつつ玄関へ向かった。

魔法界にはフクロウ便が発達しているのでノックをして荷物をお届けする魔女の宅急便やクロネコの使者などは来ない。

そしてスネイプ先生の家に来る客は少ない。

友達いないのかなと思うほどには。

だからノックの相手が扉を開ける前から気になるのは仕方ない。

こんな所に来るなんて保険の勧誘かリフォーム詐欺か宗教関係か。

宗教関係ならスネイプ先生に出てもらおう。

貴方は神を信じますか?vs不機嫌なスネイプ先生。

ハブvsマングースより面白そうだ。

レジャーランドのステージ程度には個人的に大盛り上がり。

「はーい。お待たせしました」

・・・・・宗教関係だろうか。

扉を開ければ笑顔が素敵、でも服装はぼろぼろな男の人が立っていた。

もしかして貴方の信じている神は貧乏神ですかと失礼でなければ聞いてみたい程度の服の草臥れ方だ。

宗教は儲かるって聞いたのだけど。

日本では税金掛からないから。

イギリスでは税金が掛かってあんまり儲からないのかな?とか他人様の懐具合を検証中。

実録24時!?カメラは見た!貧乏神を祭るジャングルの奥地の住人たち、なんてテロップが脳内を流れそうだ。

あれ・・・・でも何処かであったような・・・・?

「えっと・・・此処セブルスの家だよね?娘・・・はいないはずだし親戚の子?」

「いえ、私は・・」

「なんの用だ、ルーピン」

ぐいっとスネイプ先生の背中に隠される。

スネイプ先生には娘どころか奥さんもいませんよ、甲斐性ないからと言いたかったがいえなかった。

今までの経験上これはスネイプ先生が注意している人物、危険を伴う人物相手にしかしなかった。

そんな相手に冗談を飛ばしている暇はない。

逆にスネイプ先生から殺されてしまいそうな冗談だ。

でも目の前のにこやかな人は何処が危険かサッパリわからない。

うーん、誠実そうな借金取りとか?

結婚詐欺師とかなら似合いそうだが。

ドンっ!!

扉を閉めた!

幾ら借金取りだからってその対応はどうだろうか。

誠心誠意膝詰め談判でスネイプ先生が泣き落とせばきっとわかってくれますよと言おうとしてみれば扉は僅かに開いていた。

視線を下に向ければ扉の隙間にこれまた履き潰されたような靴が挟まっていた。

穴が開いてないのが不思議なくらいだが。

この方法は悪徳商法のセールスマンの手口!

ていうかあの靴で足挟まれて痛くないのだろうか。

浮べている笑顔はスネイプ先生と比べるのが申し訳ないくらいに爽やかで。

1tの重さに耐えるという鉄板入り安全靴疑惑が渦巻いていく。

いや、普通に1tもする扉のある家には住みたくないけど。

「チッ」

舌打ちしたよ、この人!

あんまりなスネイプ先生の態度に目を丸くする。

「いや、今年から僕もホグワーツで働く事になったから挨拶と例の薬を頼むよ」

僕が薬を作るのが苦手だったの覚えているだろう?

スネイプ先生の後ろから覘いていればにこやかに言うお客人、ルーピンさん?に対するスネイプ先生の態度は最悪。

「ああ、覚えているとも」

苦々しそうな口調に心配になる。

借金取りではなさそうだが何かわけ有りなんだろうか。

「そういえば奴が脱獄したらしいな。我輩が捕らえてもう一度アズカバンへ送り返してやろう」

友人を裏切るとは心底見下げ果てた男だ、と吐いて捨てるような台詞に意味がわからずいるとルーピンという人は寂しげに笑った。

「僕には未だに信じられないことだよ・・・・自己紹介が遅れたね。僕はリーマス・J・ルーピン。今年から闇の防衛術の担当することになったんだ」

「あ、私はです。スリザリン生で今年三年生です」

ぺこりと頭を下げるとルーピン先生は少しだけ驚いたような表情をした。

「え・・・っとってあの・・・・?」

「そのの娘だ」

あの、とかその、とかつけられるなんて父さん、貴方は何したんですか!?と言いたくなるのはなんでだろうか。

身体がどう見ても小さいことよりも父親の方で驚かれては仕方ないかもしれない。

「父が何かしたんでしょうか?」

「あははっ・・いや・・・・いやいいよ。うん」

口に出すのも恐ろしいという感じのルーピンの様子にスネイプすら溜息をついている。

「・・・・・・まあ、いいです」

立ち話もなんですしどうぞ、お茶出しますからと言えばルーピンは目を丸くした。

「・・・・我輩の婚約者だ」

「へぇ・・・セブルスの」

「父が決めたんですけどね」

「ハリーと同じ歳・・・・なんだよね?」

「はい。ハリーとは友人です。彼はグリフィンドールでクィディッチのシーカーしてますよ」

ルーピンの嬉しそうな笑顔に釣られてハリーの自分が知りうることを話す。

「ポッターの話など聞きたくもない」

すぐにスネイプ先生に中断させられたのだけど。

「もしかしてセブルスって・・・・幼女趣味?」

「誤解だ!!」

「この格好は縮み薬の副作用です」

慌てるスネイプ先生を横に説明をしつつ、誤解も何もやっぱりそう普通なら思うよなーと他人事に考えてしまうだった。