「では我輩は先に行く」
いつもの通りスネイプ先生は別行動らしい。
ようやく元の姿に戻った私は重い荷物をカートに乗せてホームへと続く入り口へGO!
「僕はちょっとこっちで行くよ」
生徒の気分に戻りたいしねと笑ってルーピン先生は鞄を手に列車へと乗り込んでいった。
生徒用の列車が無料だからだろうかと思ってしまったのは内緒だ。
「じゃあ・・・・またホグワーツで」
すぐに逢えるしねとさっさと背中を向けて歩き出した先生に手を振ってカートを押し出した。
席は何処もいっぱいだった。
ルーピン先生とははぐれてしまったけど彼は彼で座るのだろうからと探すのを諦めた。
第一知らない大人が紛れ込んでいることを隣にいたら説明せねばならなくなるのも面倒だし。
ようやく空いている席を見つけて扉を開けて荷物を放り込んだ。
「ふぅー・・・・疲れた」
荷物は年々多くなる。
今年は手荷物以外はフクロウ便も使ってる。
昨日は眠れなかったしな・・・・。
そう思ったのが最後で一人座席の気安さも手伝ってゆっくりと睡魔に引き込まれていった。
「・・・・寒っ」
目が覚めたのはまだホグワーツへ到着していないだろう時間。
服の隙間から入り込む冷気が肌を刺してくる。
凍死しそうだ。
「空調壊れたのかな?」
この部屋だけだろうかと文句の一つでも言ってやろうかと思っているとふと列車が止まっているのに気がついた。
「・・・・・・こんな所に駅なんてなかったよね?」
臨時駅なんてないだろうし新しく建設した話題も聞かない。
まあ単にスネイプ先生の家が情報から遠い場所って可能性も無きにしも非ずだけど、と肩を竦めた。
もしかして故障だろうか。
なんだか嫌な予感に襲われて窓を見ればわずかに凍っていた。
「何これ」
誰かと一緒にいれば良かったと思いつつ廊下に続く扉を開けようと立ち上がった。
ふと疑問が浮かんで消える。
ていうかまだ夏の終わりなはずなのに何故こんなに寒いんだろう?
冷夏どころでない寒さは環境破壊が進んでいるせいなのかはたまた魔法界に突如雪女でも現われたかと考えていたら
開けた扉の向こう側、廊下に立っていた黒いものを見つけた。
スネイプ先生?
と黒つながりで連想したがそれはボロボロのゴミ袋のようだった。
「なんでゴミ袋が立ってんの?」
恐怖、ゴミ袋の怪!?なんて今時都市伝説にだってないよねーと考えた時。
ゆらり、とゴミ袋が近寄ってきた。
身体がどんどん凍える。
体温も思考も凍りそうだ。
「ディメンターだっ!」
何処かで声がした。
ディメンター?
なにそれ?
聞きなれない言葉に疑問譜が飛ぶ。
もしかして目の前のこのゴミ袋のこと?
パカリといった感じで大きな赤いものが目の前に現れる。
・・・・ああ、口か。
そんな風に思った。
濃い、濃い霧が思考へと靄を掛けていく。
真っ白になって悲鳴すら凍ってしまったみたいだ。
「・・・・・・っ!」
『 サ ガ レ 』
自分の息を呑む音と誰かの叫び声に混じった声が聞こえた気がしたが凍り付いた思考では何も判断できない。
暫くしてふっと電気が消えた。
何処からか忍び寄る影。
何より心を蝕む寒さが身体を震わせる。
ふいに戻った温かさに助かったのかなと思いながらそっと意識を闇に落とした。
『お前は・・・・・・・・・・・・だ』
『・・・・・・・助けて・・・・・・』