日本から持ち込んだマーブルチョコレイトを頬張りながら
これから始まる生活を楽しみにしてる自分を感じる。
なんたって魔法使いは貴重だし。
上手く行けばジブリの主役になれるし。
でも宅配便は厭だな。
黒猫とペリカンとフンドシ飛脚とかけっこは遠慮したい。
「まずは寮決めか・・・」
ドラ子はなんて言っていたっけ?
「スリザリンにグリフィンドールにレイブンクロー・・・・あとなんだっけ?」
「ハッフルバフよ」
開けっ放しにしていた扉の所にふわふわの髪の毛の女の子が立っていてにっこり笑った。
「ここにネビルのカエルはいないかしら?」
後ろから涙目の男の子が出てきてその子がネビルっていうのだろうと推測できた。
「ううん、いないと思う。いるとしたらさっきカエルのチョコが飛んでたくらいかな」
窓にべちゃっと付いたから食べたのは内緒だ。
結構美味しかったけど日本のチョコとやはり違ってて口直しにマーブルチョコ食べていたのだ。
てか、乗り物酔いにチョコはきつかったかも。
「私はハーマイオニー・グレンジャーっていうの」
「私は。・」
よろしく〜と挨拶しとく。ネビルにも。
うぷと喉元に競り上がった吐き気にごめんっと二人を押しのけて走り出した。
トイレまで間に合うか。
ぐるぐる回る胸やけに左手がじっとりと汗で濡れた。
「大丈夫?」
心配そうに見てくる保健室の先生。
マダム・ポンフリーが処方してくれた飲み薬は飲むと乗り物酔いは消し飛んだ。
「はい、大丈夫です。ありがとうございました」
ぺこりとお辞儀するとあらと珍しげに見られた。
お辞儀は日本人の礼儀作法だからだろうか。
「あらあら、もうこんな時間だわ。あなた、早く大広間に行きなさい」
そこの廊下を真っ直ぐ行けばわかると思うわ、という言葉を背に廊下に出て真っ直ぐ走る。
日本じゃ廊下は走っちゃいけませんとか怒られるのよね〜。
「そこの生徒!!何をしている!!!」
・・・・・なんか、物凄く聞きなれた声がしたんですけど。
振り向けばヤツがいた。
「・・・・スネイプ・・・先生」
「・・・・か」
ちっ
今、舌打ちしたでしょ!!
最低だ!!!
「大広間に行くのなら同じ方向だから連れて行ってやろう」
「アリガトウゴザイマス」
すたすた歩く隣に足早に付いて行く。
本当にこの人は足速いな。
脚が長いと暗に言いたいのかって切れたくなるよ(泣)
「間に合ったようだな」
あそこに行けと指差されたのは多分新入生の塊。
・・・・・・ぴちぴちがいっぱい。
スネイプ先生と比べると際立つな・・・。
余計な事を考えているうちに先生はどこかに言ってしまって私は仕方なく一年生の群れに潜り込んだ。
「・・・・ッ!・ッ!!」
「・・・はいっ!いますっ!!」
ぼーっとしていたら私の番が来ていたみたいで皆の前であの古い帽子を被ればいいらしい。
・・・・ちょろいな。
ドラえもんの四次元ポケットかなと腕を帽子の中に入れてかき回したらくねくね帽子が動いて気持ち悪かった。
『君が擽るのが悪い』
声がした。
「誰?」
周りには聞こえてないみたいで。
『帽子だよ。頭の中で考えたら通じる。君はここで何がしたい?』
『何ができるの?』
『君がしたいことは何でもできるよ。選んで努力すれば相応の望みは叶えられる』
『う〜ん。今は特にないんだけど』
『勇気もあるし、頭も悪くない。才能も夢もある』
『ミニスカは野望じゃないわよね』
『それは・・・・難しいところだの』
クククと帽子は笑った。
『スリザリンは厭かも』
『何故?』
『だってロクデナシは入れないんでしょ?』
ロクデナシ一人inスリザリンは厳しいなあと頭で考える。
『ロクデナシをどう定義するかにもよる』
『ま、それもそうね』
『では・・・グ・・・』
『どうしたの?』
「スリザリン!!」
帽子が叫んだ瞬間何故、と問いかけたけど帽子はもう語ってくれなかった。
ロクデナシinスリザリン決定かよとやさぐれたくなった入学当日。