よく晴れた日に雨

ぱらぱらと降る慈愛の雨は狐の嫁入りとそう呼ばれた












「狐の嫁入りですよ」

少女は秋のにわか雨を見てそう呟いた。

「なんだそれは」

薬草をいれた籠を濡らさぬようにしていたスネイプは怪訝そうに少女へ視線をやった。

少女は雨を降らせる空を見上げたまま呟くようにつげる。

「日本の昔の言い伝えです。晴れた日に雨が降るのは狐の嫁入りだ―――って」

異国の言い伝えなどに興味を覚えるなどかつてなかったが少女の言葉には興味を覚えた。

「何か理由でもあるのかね」

にわか雨を避けるために木の下でかわす会話はきっとこれ位が相応しいとそう言い訳して。

「呼ばれることの・・ですか?詳しくは知らないんですけど私はずっと幸せと別れと祝いの涙と思ってました」

好きな人の所へ行く花嫁の

娘と離れる両親の

美しい花嫁と迎える花婿の未来を祝福する周囲の

「涙・・・かね」

「はい。涙だけどお祝いだから雨になるんです」

慈愛の雨になって作物へ優しく降り注ぎ日を遮ることはない。

そう言われて見ればそうかと思えてくる自分に苦笑する。

自分の半分も生きていない少女の言葉を素直に聞いている自分に笑いが込み上げる。

ここまで骨抜きにされているとは思わなくていきなり自覚した思いに息を吐く。

どうやら自分はこの少女に心を占められていたらしい、と。

先程までは薬草を台無しにすると雨を嫌がっていた自分は何処に行ったのか。



「・・・・・スネイプ先生?」

いきなり呼ばれた名前にビックリしてはただスネイプを見つめていた。

「どうやら我輩はお前のことが好きらしい」

それだけ告げてそらした視線。

少女の反応が怖くて見れなかった。

情けないと思いつつも言い訳のように口にした言葉。

「嫌だったら忘れてくれて構わない」

ただ知っていて欲しかっただけだと告げて雨宿りの木の下から出ようとした。

ローブが引っ張られて出ることは叶わなかった。

「私も・・・好きです」

だから忘れません。

そう告げられた言葉に口元が緩む。

きっと自分はいつも以上に厳しい表情をしていると思う。

「・・・・何を泣く!」

の目尻から零れた涙。

慌てていれば抱きつかれた。

「これは嬉しいんです」

私のも雨になってますよ。

そう笑った少女が愛しい。

「狐の嫁入り・・・か」

雨が上がるまで二人はそっと佇んでいた。

縮まった距離を感じながら。