くるくると絡め捕られて身動きも取れない。

戒めの言葉と同等のそれに私は一人溜息をついた。


















スネイプ先生の自室へは何度か足を運んだことはあった。

好かれているわけではなかったようすにグリフィンドールだから当たり前かと思う。

手間のかかる生徒。

それが彼の私に対する評価だろう。

私だって別にセブルス・スネイプという人間をそこまで深く思っていたわけではない・・・・と思う。

しかし何故だかよくレポートの事で呼び出されたり片づけを友人の失敗のお蔭で言いつけられたり。

果ては薬草採りをグループで言いつけられたこともあった。

皆がいつも嫌がるので集めた薬草は私が運ぶ羽目に陥るのだ。

「失礼します」

ノックを二回したが返事はない。

仕方ないので中に入って待つことにした。

ホグワーツの冬は寒く地下室はそれ以上。

そんな廊下で部屋の主の帰りを待つことは風邪を引きたがっている馬鹿としか思えなかった。

部屋は前に入ったときとそう変化してなかった。

変わったといえば机の上に散乱する古書の類。

前より増えている気がするのは多分間違いない。

暖炉の火がついていて部屋は暖かかった。

凍えた指先を火にかざすと血が流れ出したのか僅かにしびれた感覚がしてそして少しだけ薬草の匂いがした。

「・・・・・スネイプ先生の匂い」

何処かで嗅いだと薬草を採っている間考えていた答えをはじき出したことですっきりする。

ガチャリ

「・・・・・何をしている」

そんな時部屋の主が廊下側の扉・・・・からではなくもう一つの扉から出てきた。

「・・なっ・・・・なんて格好しているんです!」

眼に焼きついた姿にびっくりして慌てて顔を背けた。

暖炉の火で顔が赤くなっていることには気がつかれなかったろう。

「我輩の部屋だからな。どんな格好をしていようが我輩の自由だ」

そう言ってバスローブのスネイプ教授は机に向かい立っていた。

「それはそうですけど。せめて鍵くらい閉めてくれれば」

つい文句がでるのは仕方ないことだろう。

「忘れていたのだ。そのお蔭で凍えずに済んだのではないかね」

指先で抓んだ薬草の香りを嗅ぐと杖を一振りして呪文を掛けた。

多分鮮度を落とさないための。

そしてもう一つ。

「逃げないのなら我輩は好きなように解釈するが?」

そう耳元で囁かれた。

何を、という言葉はスネイプ先生の唇によって留められた。

「男の部屋に一人で来るとは無用心も甚だしい」

勝手な言葉に抵抗を試みるがあっさりと男の力の前に無力となる。

「先生が持って来いと言ったんですよ」

押し倒された格好で真上の顔を睨みつける。

「しかし裸同然の男と同じ部屋に留まるという愚を冒した」

さっさと逃げれば良かったのではないかね?

そう告げた声はとても甘い。

唇を割って舌を絡められて。

吐息すら甘くなる。

「もう逃がさない」

温かい体の温もりに包まれる。

「逃げないのかね?」

逃がさないと言ったくせにというスネイプ先生にずるいと思う。

ちゅっ

驚いた様子のスネイプ先生の腕から逃げ出すと扉に手をかけて振り向いた。

「それなら捕まえて見てください」

失礼しましたっ!

そのまま捕まるのは嫌だと口付けだけ残して逃げた少女。

スネイプは去った面影を思いにやりと笑った。

「楽しみにしていたまえ」

逃がしはしないから。

そう呟いてスネイプは早速さらさらと何かを書き出したのだった。




























は残るように」

ざわざわと一斉に遠のくざわめきに溜息をつく。

キス一つで逃げ切ったと思ったのは甘すぎたか。

減点ギリギリで残されないようにしていたけれどとうとう呼び出されてしまった。

待っててと言っていたのに友人は彼氏と会うからと無常にも去っていった。

「何を怯えている」

「ひゃあ」

耳元で囁かれて後ろへ飛びのく。

「な・・・何をいきなりっ」

は耳が弱いのだな」

面白そうに笑うスネイプ先生に悔しくって頬が染まる。

「何か私がしましたか?」

今日は珍しく薬も失敗しなかったのにと聞けばひらりと目の前に出された羊皮紙。

「右の者を魔法薬学助手として任命する。・・・・・・ええっ」

「助手を受けてくれるかね」

意地悪気な笑みを浮べたスネイプ先生に溜息を吐く。

「受けないっていうのは聞かないんでしょう」

「よくわかっているではないか」

くつくつと笑う姿に深い深い溜息が出てしまう。

「逃がさないと言ったであろう」

そろそろ我輩に捕まってみないかね。

耳元で囁かれて見つめられては深い溜息を吐く。

諦めとしょうがないなあという少し照れ隠しの溜息。

「捕まっても逃げ続けますよ」

「望むところだ」

その後、スネイプ教授に一人の少女が助手としてついたのはホグワーツ中の知るところとなる。