ドリーム小説






目眩坂




 慣れない人は目眩を起こすという



 でもアタシは今日も      くら          くら
                       くら







 



 中野の目眩坂、という坂をのぼった先にその古書屋 京極堂 はある。



 商売をする気があるのかないのか。


 
 アタシが行く時は大抵骨休めという上手なのかそうでないのかよくわからない筆跡で


 
 書かれた札が下げられている。





 「こんにちは」




 玄関を開けて言う。



 何も返事はない。千鶴子さんはいないのだろう。



 アタシは誰も出てこないので靴を脱いでそろえあがりこんだ。


 
 ――――――いた



 不機嫌そうな面持ちでこの家の主、京極堂こと中禅寺秋彦はいつものごとく本を読んでいる。



 そして隣には小説家 関口巽もいた。



 「もう!いるならいるって言ってくださいよ」



 アタシがそういえば関口さんはうぅとうなった。


 
 「言われなくても君はあがってくるじゃあないか。僕が出て行っても同じ事だ。


 そんなに問い詰めると関口君がまた唸りだすじゃないか」



 たしかに言われた通りだし、関口さんは唸っていた。



 「関口さん! 気にしないでください。アタシはこの人に言ったのであって関口さんに


 言ったんじゃあないですから」



 でも関口さんに歓迎されるのも捨てがたいですね、とふざけて言うと



 「この関口君にそんなことができるわけがないだろう」



 と不機嫌さを増した中禅寺さんに一蹴された。



 関口さんはまたううと唸った。






 他愛もない時間。





 アタシはただそれが嬉しくて。












 アタシは今日も      くら          くら
                    くら
 




 
      目眩 を 起こす








あとがき
これは誰夢なんでしょね。