「そんなに怒らないでくださいよ」

また敬語、と腹が立ってむくれる。

子供っぽいのは百も承知。

大人の魅力グリ江ちゃんには負けるが私だってという気分だった。

「何よ、別に貴方が陛下と下着談義をしようと構わないけど、ええ構うもんですか!」

知らないっ!とばかりに駆け出す。

逃げてると思うのだけどやはりあのままいたら絶対にひどい言葉を投げ付けていた。

「グウェンー」

半泣きで訪れた私に兄、いや父のように接してくれるフォンヴォルテール卿も慌ててた。

「なっ!どうした?何か誰かにされたのか!?」

わたわたと慌てるグウェンの胸にぽすんと納まる。

「・・・・喧嘩した」

誰と、とは言わない。

グウェンダルなら察してくれると知ってるから。

ぽつりと零した言葉と涙にぽんぽんと頭を叩かれた。

「理由を話せるか?」

グウェンダルの声にこくりと頷きヨザックがユーリと交わした会話(携帯小説 眞魔国中央文学館・出張所八月分掲載)を説明した。

「ヨザックの・・・その個人的嗜好は理解したが何が悪かったんだ?」

やはり衛生面だろうかとグウェンダルが考えているとは首を振った。

「だっていつだって臨戦態勢なんでしょう?なのに私に何もしてくれないんだもん」

ユーリにはそんな話をするのにとおさまった涙がまた溢れそうになる。

「本人に聞けばいい。いるんだろう」

疑問符さえつけず放たれた言葉を証明するかのように扉が開いた。

そこにはばれてましたかという表情のヨザック。

「何かいうことは?」

「そんなに凄まないでくださいよ、閣下。俺は確かにユーリ陛下に臨戦態勢の話はしましたがあれは冗談でして」

ヨザックの言葉に二人分の視線が集まる。

「いや、履いてないのは履いてないんですがね」

呆れたようなグウェンダルと真っ赤な少女に苦笑して続けた。

「まあ俺としてはいつだって臨戦態勢でいたいんですが俺の想い人には恐い保護者が何人もいまして」

俺も大事にしたいんで我慢してるんですよ。

グウェンダルの苦々しい声が落ちてきた。

「責任は取るんだろうな」

「喜んで。まあまだ何もしちゃいませんが」

ヨザックの言葉にグウェンダルは腕の中の少女に告げた。

「ヨザックと結婚する気はあるか?」

「え?」

話の展開についていけない様子に説明してやれと部屋から追い出された。

「ヨザ・・・」

「なんですかい、お嬢」

にっと笑う彼の頬をつねる。

「いひゃいですよ」

「現実なんだよね」

茫然と先程の話を思い出す。

誰と、誰が、結婚っ!

「えええええっ」

「まあ落ち着いて。俺と結婚して俺の可愛い嫁さんになってもらえますか?」

さらっと言われて固まっていたらグリ江困っちゃうわーとか色々言っていたようだった。

「お色直しは二人でドレス着ようか」

言えたのはそれだけ。

でもヨザックはとても嬉しそうに笑ってた。

花が咲いたみたいな笑顔。

自分もそうなのだろうとは思った。

「じゃあは俺のモノってことで」

ちゅっ

口唇に柔らかい何かが触れてヨザックの端正な容貌が間近にあった。

「唾付けとかないと取られるかもですからね」

はじめてみる満腹の獣のような笑みにやられたと少女は赤くなる頬を押さえたのだった。