「なんだその、ハローウィーンとかいうものは」

「違います、ハロウィン!日本ではまだメジャーじゃなくてマイナーだけどね。仮装するの。魔法使いや魔女にカボチャのお化け。

ちょっぴり間抜けな可愛いミイラやカッコいい吸血鬼」

「それは・・・可愛いのか?」

何処がと眉間の皺で聞いてくる相手にはまた何か別のものを想像しているのだろうなと思う。

「仮面舞踏会のようなもの、なのか」

「ううーん・・・仮装パーティーの方が近いかなあ」

コスプレとはまた違うんだけどと言えばコスプレとは何だと聞いてくる。

こんな所は彼の弟にそっくりだと思う。

男か!!と詰め寄られないだけマシだが。

「あのね、ハロウィンって言うのはTrick or treat!!、つまりお菓子をくれなきゃイタズラするぞって言われたらお菓子をあげなきゃ駄目なの」

ふふっと楽しげに笑う婚約者の様子にグウェンの表情も知らず緩む。

「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ〜って子供たちが家々を回ってお菓子を貰える素敵なお祭りなの」

「ではそのハロウィンとやらのパーティーを開くか」

「え、・・・いいの?」

覗き込む二つの漆黒の瞳にはどんな宝石も叶わない。

「調度ユーリ陛下も此方にいることだしな」

息抜きも必要だろう、そんな事を言いつつも一番には愛しい人の喜ぶ姿を見るためにグウェンダルは行動に移したのだった。




















「はぁ〜流石閣下、グリ江惚れ直しちゃったわん」

そんな言葉を呟いたのはお庭番ヨザックで本日も素晴らしい上腕二頭筋を強調するかのようなデザインの踊り子衣装に身を包んでいる。

脚がスケスケなブルーの布地を幾重にもしたゆったりパンツに包まれていて見えそで見えないというちょっと見たくないものとなっている。

「やっぱりなんというか・・・コスプレ大会になっちゃったわねえ」

隣のは会場の様子に溜息を吐いた。

黒い服に骨飛族を縫い付けている男の人やなんだか貴女は湯婆○ですか?と聞きたい魔女ルック辺りはまだわかる。

ただ、アレはいただけない。

「ギュンターは何をイメージしてるの?」

「あーギュンギュン閣下は何処かの噴水にいる愛の泉の精らしいっすよ」

それは小○小僧じゃなかろうかとなんて事を思いついてひくりと頬が引きつった。

まあ垂れ流すのが汁だから・・・いや、それも、かなり嫌か。

は結局見なかったことにしてユーリの格好を見た。

「ユーリは蝙蝠モチーフの小悪魔ちゃんみたいね」

「陛下はこの後皆にお菓子を配っていただきますからね、動きやすい格好なんでしょう」

可愛いっすねと言う言葉に頷く。

「でも子悪魔ならヴォルフが地で行くと思うけど」

「ヴォルフラム閣下は猫ちゃんでしたよ。まあお二人が並んでる所は微笑ましいですよね」

「あとで絶対見よう」

の言葉にヨザックは苦笑しつつ女性陣の固まっている辺りを指した。

「隊長は吸血鬼らしいですけど血を吸って欲しいって人でモテモテですよ」

「だって・・・なんかエロかったしねぇ」

牙までつけていた次男坊のフェロモンは半端なかったけれど。

「でもやっぱり一番は・・・」

の視線を確かめるまでもないヨザックは参ったなと苦笑して上司の下へとをエスコートしたのだった。





















「グウェンダルっ」

「・・・

腕の中に飛び込んできた恋人はとてつもなく可愛らしかった。

背中には白い翼。

白いドレスはふわりと靡きまるで天使のようだった。

「グウェンは何の格好なの?とっても素敵だけど」

「海賊らしい」

片目を眼帯で隠しているので従兄弟であるグリーセラ卿にそっくりだ。

けれど自分を見つめてくれる瞳の熱さは確実に彼が恋人のグウェンダルだと物語っている。

「ねえ、素敵な海賊さん。Trick or treat!!」

両手を差し出して言えばグウェンダルはびっくりした表情の後、困ったように笑った。

「すまない。先ほど子供たちに全部渡してしまったようだ」

部屋に帰ればあるのだがという言葉には笑った。

こうなることは予想済みだ。

いや、待っていたからこそグウェンダルと離れていたのだ。

「ね、こっち来て」

ぐいっとグウェンを柱の影に引き寄せた。

誰にも見えない死角。

「お菓子をくれないなら悪戯しちゃうんだから」

まだわかってない様子の恋人がいとおしくてはしゃがんで頂戴と言って

顔を寄せて来たグウェンダルの口唇にちゅっと一つ可愛らしいキスを落としたのだった。





















そして子供たちや大人たちにお菓子を配り終えてユーリ達が帰って来た時に見たものは顔を真っ赤にして怒っているようなグウェンダルと

にこにこと上機嫌な可愛らしいの様子で。

何があったのだろうかと首を傾げたのだった。



























「ねえ、グウェン。ヴォルフの猫ちゃんの格好してあげようか?寝室で」

「なっ!!」

ハロウィンが過ぎても悪戯される閣下の姿があったのは一部の者しか知らないこと。