待ちに待った・・・っていう表現はあまり正しくは、ない

というか全く正しくない

けれどこれでも遅いと言われれば嬉しくないわけではないのだ

複雑な女心、である
















とりあえずどーしようもない元彼氏とすっぱりきっぱり別れて国へと戻った。

スタツアってコースも慣れれば楽しい、かもしれない。

それもがっちり手を握る長身で渋めの素敵な異性がいればだけど。

青い目が心配そうに隣にあればなんでもできそうな気さえした。

到着したのはどうやら中庭の噴水でがっちりホールドされていた腕から抜け出せば高い日が日中であることを示していた。

「その格好でうろつくつもりか」

ばさっと被せられたのはグウェンの上着でどうやら透けた服を心配してくれたらしい。

ほっといてもこの好天候だったら乾くのに。

紳士だなあと思いつつ羽織ってトコトコと歩幅の違う同行者と共に部屋へと向かう。

グウェンは何か用意があると言って何処かへ行ってしまった。

がクローゼットに用意されている服の中からそれほど派手ではない服を纏って部屋を出れば何故だか多くの人たちがいた。

「おめでとうございます!ようやく赤い悪魔から閣下は解放されるのですね!」

様!貴女のその男気に感服しましたッ」

「私もです」

「私もです」

男気?と思わなくも無いがなんでか褒められているらしいので曖昧に笑ってみた。

するとまたおおーッと声が上がるのはなんでだろうか。

しかもどうやら兵士達の目には英雄に映っているようだ。

ここまでむさ苦しいとちょっと困るというか嫌だ。

閣下というのは多分グウェンダルなのだろうが彼がどうしたのだろうか。

そんな疑問はその数分後氷解・・・というか撃破されることとなる。






















「えーと、なんですか。これ」

いきなりメイドさん部隊に着せ替えさせられ地味ーーーーではない黒いドレスに着せ替えられた。

レースとフリルとに溢れた洗濯に向かないドレスだ。

まあ黒だから汚れは目立たないだろうけど。

男の人だったら手荒な真似もできるのだがか弱そうな女性にとんと弱いはずるずるとひっぱられ礼拝堂のような場所につれてこられていた。

何処かで見たことがある、ような?

既視感にうんうん唸っていればいつのまにか壇上で隣にはグウェンダルの姿があった。

深い青の軍服が長身によく似合っていた。

「では、これからフォン・ヴォルテール卿グウェンダルと双黒の様のご成婚の儀を執り行います」

双黒フェチのギュンターさんが言った言葉が引っかかった。

今、彼はなんていった?

後精根?

新しい大根の一種かしらねーあははー。

と現実逃避をできるほど彼らは待ってはくれない。

「ご成婚って結婚ってことですかッ!?」

この黒い呪いのドレスは魔族流のウェディングドレスだったのか!?

今更な衝撃を受けている最中だったが隣の男はそれ以外に何があるという雰囲気でさっさと誓いの言葉を告げての左手に指輪を填めてしまっていた。

様、止めるなら今ですよ」

そして私、ギュンターと結・・・ッ!!

ギュンターさんは最後まで言えずに地に飲み込まれていった。

彼の足元だけ地殻変動が起こったのだろうかと慌てて駆け寄ろうとすればちょっと青い顔をしたコンラッドとヴォルフラムが

彼(奴)なら大丈夫ですから続けてくださいと言って来た。

仕方ない、ここで止めれば女が廃る。

そう腹を括った。

「私、は・・・」




















「双黒の魔王陛下が人間の国に現れました!」




















飛び込んできた兵士はグウェンダルの視線にヒィと息を呑んだがそれでもコンラッドに詳細を話した。

天晴れな心意気だとが思っていたら隣から声が掛けられた。

「中断した続きを言わないか」

「え?魔王陛下を迎えに行く仕事があるでしょう?」

だから式は延期。

その一言で場は一気に温度が下がった・・・らしい。

にはあまり実感は無かったのだが。

「・・・ふふ。魔王を盛大に歓迎してやろう」

ユーリ陛下のご帰還に長男閣下の態度の理由がこれだったとユーリが知るのはまだ先の話。


















はどうして続きを言わなかった?」

哀れな新郎は自分で聞けないからと言って優秀な部下に問わせたらしい。

お庭番からメイドさんまでこなすヨザックは苦笑しながら言った。

『まだ恋人の期間を楽しみたい』と。

そして可愛らしく照れていた少女の姿はヨザックの中ではトップシークレットに。

あんな姿を独り占めしてしまったと知ったら上司に殺されかねない。

なんといってもこの目の前の上司は彼女にメロメロなのだから。

「これでも待ち続けて、ずいぶん遅いと思うのだがな」

その言葉をまたまた伝えたヨザックは真っ赤になって小さく笑ったを見て一人身にはキツイわ〜と思った事も内緒である。