「!」
名を呼ばれて振り向けば似てねえ三兄弟が揃っていた。
DNAって凄いよねと思ってしまう似てなさなのだ。
呼んだのは一番下のヴォルフラムだった。
「なあに?あ、ツェリ様は帰られたの?」
彼らの母親には到底見えない美女ツェッツェリーエの熱い歓迎は忘れられない。
あの抱擁で死ねたらと思う男の人は数知れない・・・かもしれない。
彼ら三人を除いては。
「母上ならによろしくと言っていたよ」
コンラッドがにこりと如才ない答えをくれる。
「慌しかったわね」
なんでもギュンターが異世界から来た自分の存在を知らせた所自由恋愛の旅に出かける日を延ばしてわざわざ来てくれたらしい。
「母上らしいがな」
苦笑しつつ告げる声は柔らかくてグウェンダルがいかに母親を大切に思っているかを知らせていた。
「そうだな」
コンラッドが頷く。
「お茶が冷めます、兄上。おいっ!勝手に飲むなっ」
キャンキャンと騒がしい末っ子と不機嫌そうな長男と爽やか次男。
本当にDNAって凄い・・・・。
「で、は何処が保護することに?」
「だから私は希少動物じゃないって」
コンラッドの言葉に突っ込むがスルー。
「我がヴォルテールが候補に挙がってるが。ギュンターの所はギーゼラがいるしな」
「そうか」
勝手に話が進むのを黙って聞いてる訳にはいかない。
「だから私は希少動物じゃ・・・・むぐっ」
「僕の好きな菓子だ、黙って食べていろ」
口の中に押し込まれたのは焼き菓子でクッキーのような甘いお菓子だった。
もぐもぐもぐ
美味しい。
ヴォルフラムに餌付けされているようだ。
まあこんな美少年から構われることはあまりないだろうからと差し出されるクッキーを食べていたら視線を感じた。
向けばなんだか不機嫌そうなグウェンダル。
「まずは障害を取り除くべきか・・・。今から向こうへ行って来る」
ぐいと引かれた腕。
「向こうとは・・・兄上!!」
ヴォルフラムが追いかけようとしていたけれどコンラッドに止められたようだ。
コンラッドってばいい人だと思ってたのに〜〜〜!!!
遠ざかる扉を眺めつつ心の底から恨んでしまった。
異世界って行こうと思って行けるものなの???
と思いつつも抱き上げられて一緒に服を着たまま私が現れた大浴場に入るグウェンダル。
「ちょっと!服が濡れちゃうって!こんな高い服弁償できない!」
「それはもうお前のものだ。替えも用意してある」
用意周到という言葉がぴったりだがこの状態は何なのだろう。
どんな斬新なプレイですかと冗談の一つでも飛ばしてみたいのだけど冗談でなくなりそうで言えない。
「どうした?」
深いブルーの瞳がを映した。
「・・・・・」
言いたかった言葉は再び起こったスターツアーズで飲み込まれてしまっていた。
瞼を開ければ見覚えがある場所だった。
「あー・・・変な夢見ちゃった・・・」
白いタイルは自分の家のお風呂場でどうやら自分はお風呂に浸かったまま寝ていたらしい。
・・・・水風呂なのに。
「・・・洗濯してなかったっけ?」
「そろそろ退いて欲しいのだが」
幻聴が聞こえた。
幻聴。
うん、幻聴に決まってる。
女子大生の一人暮らしの部屋、しかも浴室でなんで耳元に物凄く好みで腰にクル低音ボイスが聞こえる!?
聞こえるわけがない!!
「現実逃避もいいが風邪をひくぞ?」
ちゃぷん
抱きかかえられるように腰を引き寄せられて自分の状況に気付く。
お風呂なのに着衣。
しかも夢の中で見たドレスのまま。
ギギギというロボットのような動きで振り向けば呆れたようなけれど何処か優しい視線を見つけてしまう。
「夢オチじゃないのぉ〜〜〜っ!!!」
涙混じりの声は浴室に見事に響き渡ったのである。