「・・・かっこいいの忘れてた」
あんまりな言葉と思う無かれ。
だって魔族は美形が一敗・・・違った一杯。
はっきり言ってハリウッド級な訳ですよ。
だから今の状況に陥ることは想像もしてませんデシタ、ハイ。
近くの公園と言ってもそれは自転車での距離だ。
歩いたら三十分くらいは掛かる。
「ちょっ・・・グウェ・・・早・・・」
競歩大会か何か?と思えるほど早い連れに息切れしながら文句を言った。
「・・・すまん」
ぴたりと止まった姿にほっとする。
「第一、脚の長さから違うのよ。種族っていうか性差っていうか」
ぶつぶつ文句を言いながら息を整える。
一刻も早くと焦ってそうなグウェンダルの服を掴んだ。
「これで少しはゆっくりになるでしょー」
見上げて笑えばまたしても視線を逸らされた。
・・・なんで?
顔を抑えているグウェンダルがの可愛らしさに理性と戦っているなんて微塵も気付いてない辺り天然だった。
「・・・借りた服が伸びるから・・・こっちにしておけ」
「あー、うん」
差し出された手に恐々と乗せてきゅっと握る。
「あ・・・」
「どうした?」
なんとも可愛らしいものだなと思っていたグウェンダルはの様子に声を掛けた。
「ううん、なんでもないよ」
行こうか、と言うに促されて歩き出したグウェンだがはある事を思い出していた。
その人はとても大きなけれど温かい手の持ち主だった。
頭を撫でて貰うのが大好きだった。
『・・・・・のお嫁さんになるっ』
待っててねと約束した人は誰だった?
「うわー・・・なんか忘れていたかったかも」
呟いてしまったのは致し方ない。
「おい」
「でもでもっ!小さい頃は・・・」
「おい」
「うーん・・・でも結構いい趣味してたのねー」
「おいっ!!」
痺れを切らしたような声に五月蝿いっとばかりに言い返した。
「おい、じゃないわよ!何、私はちゃんと名前があるのッ!おい、なんて呼ぶなら結婚なんてしないからっ!
おいなんて奥さん呼ぶ亭主関白ぶりたい夫なんて肥料になる生ゴミどころかお金払っても引き取ってもらえない電化製品並に性質が悪いわよっ」
「・・・すまん・・・ではなくて、。なんだか私達は先ほどから見られているのだが」
「は?」
無意識に脱・亭主関白宣言をしたせいでパチパチパチと拍手まで貰ってしまった。
気が付けばスーパーの前。
此処の前を通らなければ公園には行けないがスーパーは人が集まる場所である。
そして今日もまたオバちゃんたち・・・いや、年上のお嬢ちゃんやレディ達が大勢いた。
「あの人何処のモデルかしらー」
「素敵ねえ。隣の女の子は彼女かしらぁ」
「いいわねーウチの旦那と代えて欲しいわね」
彼方此方でそんな声がしている。
恐るべし。
聞こえないならともかくバッチリ聞こえる声で言ってるから凄い。
早々に立ち去ったが後ろから「イイモノ見て目の抱擁になったわぁー」なんて声に脱力してしまったのだった。
「グウェンダルはモテるね」
「私より弟の方が女性には人気だ」
後で知ったがアニシナさんの壁のせいでグウェンはどちらかと言えば女性よりも城の兵士扮するオネニーサンに人気らしい。
・・・それもどうよ、な話だよ。ヨザック。
「ふうん。まあ人当たりが良さそうよね」
タイプじゃないけどと言ったらほっとした様子のグウェンに全く可愛いなと思ってしまう。
「ねえ、もし私がタイプって言ったらどうしたの?」
「・・・好みと好きになる相手が一緒だとは限らない」
「まあ、そうよね」
意地悪言ってごめんねとそっと少しだけ握る手に力を込めれば緩められた表情。
「弟の恋人だったとしても私は諦めずに攫っていっただろう」
そう笑う姿にズルイとは俯き、不意打ち過ぎる言葉に胸を射抜かれ赤くなった頬を隠したのだった。