「グウェンー」
小さい掌に掴めるものはなんだって掴ませたい
「どうした?」
異世界からの双黒の少女からグウェンダル大好きという地位を築いている身としてはあまり無様な所は見せられはしない。
そう、あの可愛らしい黒猫たんに誓って!!
の為にと編んだ黒猫を渡した時の喜びようを思い出して口元が緩むのを慌てて押さえた。
いかん、平常心が大切だ。
平常心、平常心。
「あのねー・・・いっしょにおふろはいろ?」
平常・・・っ!!
「ふ・・・・ふろふろふろ・・・風呂だとぉっ!!」
首を傾げて上目遣いのお強請りにぶはっと鼻辺りから何か出てきそうな気がして慌てて手で鼻を摘む。
平常心作戦失敗。
「わ・・・私では駄目だ。誰か他の者に・・・」
誰か適任者をと思うのだが考え付く前にの小さな掌はきゅっとグウェンの上着の裾を掴んでいた。
「いちばんじゃなきゃだめ、なの」
一番。
その言葉にどきゅんと胸を打ちぬかれる。
天然ラブハンターの誕生か。
これ以上可愛くなられてもとちょっとばかりグウェンダル冷や汗。
「だめ?」
だめならしょうがないよねとしょんぼり顔だ。
「少し聞きたいんだが、私以外では誰と入るつもりだ?」
「えー・・・ヴォルフとコンラッド?」
ツェリさまいないもんと言う少女に慌てて頷く。
「わ、わかった。わかった、私が入る!」
「ほんと!?」
ありがとう、グウェンだいすきーとに言われれば全てが些細なことに思えてしまう。
望むものはなんでも叶えてやりたいと思うのは相手を思うが故の気持ち
「少し用意があるから待っていなさい」
「うん、わかった」
満面喜色の少女の頭をくしゃりと撫でてグウェンダルは慌てて用意をしたのだった。
「グウェンー・・・おふろはおようふくぬがないとだめ、なんだよ?」
少女は目の前に魔族の貴族ご愛用下着着用のままの保護者に駄目だし。
「いやこれでいい、これは水場で着るものだからな」
つやつやの黒ヒモパンの上にしっかりとタオルを巻いたグウェンダルはきょろきょろと辺りを見回す。
「ねえ、どうしたの?」
上着を脱いだ少女にいやなんでもないと返事する。
自分は幼女はタイプではない。
小さくて可愛いものは好きだが、そういう趣味では決して、ない。
だから見ても邪な考えなど持たないはずだ、と言い聞かせる。
身体をざばりと掛け湯して風呂場の端に腰掛ければふよふよと湯の中で腰に巻いたタオルが舞う。
パチャパチャと湯を掻き分けて隣まで来た少女が不思議そうにたずねた。
「ねーグウェン。コレってなんでわたしにはついてないのー?」
ぎゅむっ
「○×■#$※☆っ〜〜〜〜〜!!!」
言葉にならない悲鳴を発してあえなくグウェンダル閣下敵前逃亡という記事が出なかったのはその浴場が王族専用だったからに他ならない。
「ごめんね、グウェン」
精神的ショックから寝込んでしまったグウェンダルにしょんぼり落ち込んでいる表情のに気にするなと髪を撫でた。
やはりどんな目にあわせられても小さくて可愛らしいものは憎めない。
「せきにんはちゃんととるからねっ!!」
誰かから入れ知恵されたのかそんな言葉も可愛らしい。
婚約しているのだから今更な言葉ではあったのだけど。
しかし、とグウェンダルは寝台に横になっていて思った。
小さい掌に掴めるものはなんだって、と思ったがやはりアレだけは握られたくなかったと。
掴ませたかったのはもっと綺麗で純粋なものばかりだったのに・・・・。
この日の出来事はになんの傷もつけず逆にグウェンダルのトラウマになりかけたのだった。