連れて行かれた先は高級旅館。

ここって一見さんお断りな所じゃないデスカ!?

「あら・・・スネイプ教授ではないですか。こちらはお連れ様で?」

「ああ、二部屋あるか?」

「それが今年はご予約が多くて申し訳ありません」

「いや、ならいつもより少し広い部屋で」

綺麗で上品な女将さんがにっこりとを向いて笑った。

「可愛らしいお嬢さんですね。あら・・・どこかでお会いしたような?」

の娘だ」

あらあら、まあまあと女将さんは笑った。

またあの父親何かしでかしたんだろうか。

穴があったら入りたい・・。

「お父様とはホグワーツでお友達だったのよ」

にこりと笑う彼女はなんでも父親とスネイプ先生の先輩だったという。

忙しいから話が出来なくて残念だわ、ゆっくりして行ってねと笑う彼女が魔法使いだなんて信じられなかった。

「うわ〜〜っ!!凄い!!」

つい叫んでしまうのも仕方ない事だろう。

庭は区切られた中に箱庭がかなり大きいスケールで作られていて露天風呂まであった。

「三人様くらいまではゆったり入れる大きさですよ」

年配の女中さんはとスネイプを親子と思ったらしく一緒に入ればよろしいですよと笑って去った。

「入るか?」

「とんでもないです!!」

セクハラは犯罪なんですよと言い返す。

にやりと笑われては悔しいけれどからかわれていたと気付く。

でも年頃の乙女としてはココだけは譲れないといったところか。

結局お風呂は庭のものではなく備え付けられてるシャワー・バスルームを使う事になった。

スネイプが使った後が入って。

出たら座敷には見事な料理が並んでいる。

歌でいうなら「♪鯛や平目の舞踊り〜」ってトコ。

あ、ちょっと違うかも。

とにかく満腹なるまで食べて一息ついたときにノックの音がした。

「どうぞ〜vv」

入ってきたのは紺地の着物を持った女中さん。

「先程届きまして」

見てみれば浴衣。

紺地が男物でその下の紫紺のグラデーションかかったのが子供用。

手紙がついていましたと差し出されたのは女将さんから。

内容は近所でお祭りがあるので行って見ては?というもの。

「着付けはいかがします?」

「我輩は出来るのでこっちを」

こっちと指されて先生は着れるのかと少々羨ましくなった。

「ではこちらでお着替えなさいます?」

その言葉に慌ててスネイプ先生を追い出したのだった。















夜道に鳴る下駄の音。

カランコロンと鳴れば日本人は妖怪の少年とそのサイズからしてありえない親父を思うはず。

隣に立って歩く許婚者がスネイプ先生であるという事実と浴衣姿がイコールで結べない。

浴衣姿が似合いすぎてるのも問題があるのだろうけれど。

がそんな事を思っているときスネイプが同じような事を彼女に対して思っている事はお互い気付かない。

とにかく二人とも誂えたかのように浴衣が似合った。

パシャリとマグルの写真と魔法界の写真で撮ってもらう。

良い記念だと思って。

そして今は近くの神社に向かって歩いている最中である。

手をつないでるのは迷子対策。

迷子の呼び出しだけは嫌だと意見が一致した結果だ。

「スネイプ先生ー!!綿菓子食べたいです!!」

ぽしゃんとヨーヨーを叩きながら言えばあんな甘いものが食べたいのかという顔をされる。

「ラムネは飲んだしーとうもろこし食べて、たこ焼き食べたから後はリンゴ飴と金魚すくい!!」

渋るスネイプを引きずって金魚掬いを始める

スネイプがいつもより柔らかい眼差しで見ていることに気付かず。

「・・・・・取りすぎた〜〜っ」

の持つ金魚で溢れそうなお椀に視線を注ぐ金魚掬いのおっちゃんから勘弁してくれといわれて全てを返す。

「いいのか?」

背中に問われた言葉。

「だって飼えないのに持って帰っても可哀想ですから」

にこりと笑った先にドーンと大きく上がった花火。

「先生!!どこかで座ってみましょう!!」

故郷の祭りに浮かれる生徒で友人の娘で婚約者。

浮かれているその姿を嫌でない自分がいる。

スネイプがそう自覚したかもしれない瞬間だった。













旅館への帰り道。

「先生ー!花火綺麗でしたね」

リンゴ飴を持って足取りも軽い浴衣姿の少女と手を繋ぎゆっくりと歩く浴衣姿のスネイプの姿があった。

「来年も・・」

「何かいいました?」

「いや・・・」

男が呟いた言葉は祭りの名残と共に淡く消えた。