ホーンテッド・マンション後にして外に出ればいつの間にか夕暮れ時。
いつもならここら辺で帰っていたよなー。
小さい頃誰かに連れてってもらった遊園地。
手を引いていた人の顔は思い出せないけど楽しかったのは覚えてる。
「先生、どこか入ります?」
歳だし疲れたかな?と見ればぐいと手を引かれる。
「ど・・どこにいくんですか!?」
「黙ってついて来い」
そう言って引っ張るくせに歩調は合わせてくれる優しさに本当は優しい人なんだと夕闇の中スネイプ先生の横顔を見上げてた。
人込みがどんどん溢れている。
「ブレイジング・リズムだってさ」
楽しみだねと笑ってる家族連れ。
目がキラキラしてる子供たちにやっとショーがあるのかと思いつく。
「こっちだ」
人込みの中一番前に連れて行かれた。
「ここが一番良いらしい」
手にしてるのは鼠園のマップ。
そこにでかでかとマークして書かれてる文字に目を留める。
『ココが一番』
父親の入れ知恵かと思い至る。
本来なら抽選で当たらなければこの席には来れないらしいが何故に?と見れば抽選の券が同封されていたのだと言われる。
あの父親は・・・・・。
自分の父親の存在の不思議を思う。
きっとヤツはリトル・グレイかもしれない。
友人に石油王がいるらしいし。
ワァアアア
一斉に始まった音楽と打ち上げられた花火に目が奪われる。
「綺麗・・・」
踊る鼠達はこのテーマパークのマスコットだからかありえないくらいの動きで踊ってる。
「中に入ってる人は大変だなー」
呟きにスネイプが反応した。
「あれに人が入ってるのかね」
鼠を睨んでいるのは不審に思っているせいだろうか。
あのスカートからはみ出たブルマー型下着を破廉恥な!!と見ていたら嫌だなと思う。
「もしかして先生はああいう生物がマグル世界にいると思ってたんですか?」
暗闇の中まじまじと見つめるとゴホンと咳払いした。
思っていたらしい。
この人はなんて素直な人なんだ。
「ああ、先生しゃがんでください」
ローブはないので腕を掴んで引っ張る。
熱いのに長袖のシャツをきてる様は日焼けを気にするお姉さんみたいだとか思いながら。
いや、吸血鬼の方が地でいける。
「何だ」
渋々しゃがんだスネイプ先生に袋から取り出した鼠耳帽をセットした。
「はい、チーズvv」
鼠はチーズが大好物でしょうとかいいながらカメラでパシャリ。
これで文句は言われない。
父親からの指令完了。
慌てて鼠耳帽を取り去ったスネイプは忌々しそうにソレをみた。
「これがお前の父親の言ってたやつか」
ふんと鼻で笑ってからそれをそっとにつけた。
「我輩よりもお前のほうが良く似合う」
まあ先生よりは似合いたいと思いますよと笑う。
ショーは見学していた人々も参加して踊り出した。
「先生も踊りましょうよ!!」
ホグワーツ生が聞いたらなんて命知らずなといわれそうな事をは言った。
スネイプはただフンと鼻で笑って一蹴したが。
それでも踊ると一緒に廻ってくれたので満足だといえるだろう。
「楽しかったです」
が次は猫耳でとか思ってるのも知らずに二人はショーのフィナーレである花火を見届けてそっと鼠園を後にした。
「今日はここに泊まるんですか?」
すたすたと歩く先生について舞浜のホテルに入る。
フロントの男性に予約していた者だがとチケットを見せた。
「スネイプ様ですね。ご予約は伺っております」
渡されたのは鍵。
「後ほどお食事をお届けいたします」
そういって丁寧に頭を下げた。
エレベーターに向かうスネイプ先生に予約してたんですか?と問えばお前の父親だろうと言われた。
部屋の扉を開けると広い部屋。
テレビとテーブルのセットとベットが一つ。
「・・・・・・ベットがひとつぅ〜?」
なんで?と見ればスネイプ先生は扉を出ようとしている。
「フロントへ聞いてっ・・!」
「電話で聞けばいいですよ」
コール二回でフロントが出た。流石だ。
「すいません、あのこの部屋ベット一つなんですけど」
「はい。一つの部屋と言われましたので」
らちが明かないとスネイプ先生が受話器を奪い去る。
「どういうことか詳しく話してもらおう」
フロントと話してる先生を横目に窓から鼠園が見える。
窓を開けると熱い空気が入ってくる。
ひらり
拾い上げてみれば父親からの手紙。
エキサイトしている先生にひらひらと振って見せた。
手渡して電話を変わる。
「すいません。予約した人から連絡があったので詳しい事を聞いてみます」
あの、後で部屋を変わることって出来ますかと聞けば生憎今夜は全てお部屋は埋まっておりますと言われた。
「はい、お騒がせしました」
ぺこりと謝って受話器を置くと目に入る苛立たしそうなスネイプ先生。
「・・・・・・め!!!」
手渡された手紙を見て目眩がした。
『鼠園はどうだったかい?
君のことだからあんな珍妙な生物がマグル世界にはいるのかとか思ってそうだよねー。
少しは仲良くなったかい?
実はに・・・・いやこの話はまた今度にしておくよ。
ああ、今日はとなりのホテル予約しといたよ。
勿論ベットは一つの部屋だ。ふふ、理解ある親だろう僕は。こんな父親はいないと思うよ。
まあ手は出してもいいけど嫌われない程度にね。
ホテルの側には親戚だって言ってるからロリコンの変態とは多分思われてないはずだよ。
僕は今エジプトにいる。この後はローマに行く予定だからお土産を送るよ。
じゃあまた。』
君の親友よりとか書いてる部分を憎憎しく見ているスネイプ先生にこの父親とよく友人でいられるなあと尊敬の眼差しを送ってしまった。
そのあとはディナーを部屋で食べて。
シャワーを浴びて。
久しぶりに日本のテレビを見た。
スネイプ先生は教育番組がお気に召したようだ。
ちょうど夏休みの自由研究で野草特集があったから。
「そろそろ寝ます?」
覚悟を決めてシーツに潜り込む。
スネイプ先生は紳士だと思うしこんな子供に手は出さないはず。
「そうだな」
ギシリ
ベットが生々しい音を立てる。
・・・・・なんだか緊張してます。
・・・・・・・。
「先生、落ちますよ?」
すっごい端に寝ている先生にそこまでしなくてもと笑いが込み上げた。
少しだけ緊張がほぐれたかな。
「ほらほら、こっちを向いてくださいよー」
近寄って背を向けられた身体を引っ張った。
「・・・・・・」
「・・・何だ?」
顔が近すぎるっ!!!
ドスン
「あいたたた」
顔の近さに驚いて離れたらベットから落ちちゃいました。
「全く馬鹿者が」
そう言って抱き起こされて。
「えええええっ!!!!!」
「黙って寝ろ」
腕の中に閉じ込められた。
父親とは違う匂いに包まれて疲れた身体はすとんと眠りに落ちていった。
スネイプ先生がいつ眠ったのかは知らない。
優しく囁かれたような気がしたのもきっとその夜見た夢のせい。