スネイプがその一報を知ったのはある夏のとても暑い日だった。
ぐつぐつぐつ
大鍋で煮込んでいた薬から出る蒸気で部屋は外気より暑かった。
額に流れる汗を拭うと一息をつくべく部屋から出ようとした。
ヒラリ
扉に一ミリの隙間もないと言うのにソレはスネイプの目の前に現れた。
いかにも私を読めというような手紙。
ジリジリと端が燃え出して吼えメールという名を示すように内容をシャウトし始める前にチッと舌打ちをしてから手をかけた。
「・・・・嫌な予感がする」
そして大抵、嫌な予感ほど良く当たるものである。
日本のとある高級ホテル。
一人の少女が不機嫌です!という看板を背負っているようにして座ってる。
背後に立つ奴はコロス!
そんなゴル○13のような心の声が聞こえそうだ。
「お嬢様、お飲み物は?」
空になったグラスをすかさず聞きに来たホテルマンはプロの仕事で少女の結構ですという不機嫌丸出しの言葉にも笑顔で一礼して去って行った。
「何で私がここにいなきゃいけないのよ」
の家は日本にはもうない。
父親の仕事の都合でいらないからと売ってしまったのだ。
なので日本ではオーナーが知り合いだというホテルの一室に父親と仮住まいしていたのだが。
「スネイプ先生元気かなあ?」
遠く離れた婚約者になったばかり、本当はかなり前から婚約者の男の顔を思い出した。
「いや、元気でサンバ踊ってる先生はかなり引くけど」
水着のお姉さんをナンパしているかしら?なんて心配しなくていいのは十分に知ってる。
どちらかといえば御飯も食べずに実験をしていることの方が心配だ。
「アジの開きみたいになってたらどうしよう」
ホグワーツの面々が聞いたらアジの開きを食べれなくなりそうな事を考えていたのだがあいにくと突っ込める人物はそこにはいなかったのである。
『やあ!セブルス。
婚約したんだってね、おめでとう。
君らしいよ。二年もかかるなんて。もっと早くにするかと思っていたんだけど。
は可愛いからそろそろ虫が寄ってくる時期だしまあ及第点だろうね。
そうそうまたルシウスから話があってね。
今度は自分の愛人にしたいって行ってきたよ。自身が望んでなるならともかく最初から愛人だなんて彼も相変わらず面白い人だね。
それもセブルスが捨てられた後にでも考えて欲しいって言ってきてね。笑わせてもらったよ。
「セブルスにはを満足させられないだろう、年だしな」だって。
ルシウスってば全く馬鹿で困るよね。セブルスもしつこいと嫌われるから程ほどに・・・・って今日は大事な話があったんだった』
「先に言え!」
開けた手紙からとうとうと流れるような言葉。
スネイプのツッコミは勿論当たり前に無視してペラペラと喋っていく。
『実はに見合いの話が出ててね。僕が出かけていた時に連れてかれちゃったみたいなんだ』
「何!?」
少女の父親の言葉に聞き返す。
けれども手紙なのでスネイプのツッコミは以下同文。
『で、生憎僕は用事があって遅れそうだから代わりにセブルスが行ってくれないかな?』
よろしく〜という言葉と共に燃え尽きた手紙。
と同時に出現したのは地図と旅行券。
「・・・・・・マグルの方法で向かえというのか」
ウンザリとした表情だったが仕方がない。
杖を振って研究中の薬を火から降ろすと大急ぎで暖炉に飛び込んだのだった。
話の始まりはホテルにかかった電話だった。
「様、お客様がロビーでお待ちです」
フロントの声に誰だろう?と首を傾げながらも格好を整えてエレベーターへ向かった。
お気に入りのサマードレスは日本の気候には些か暑いがホテルの空調が効いている場所では調度いい。
ロビーについてエレベーターから降りるとフロントへ向かう。
「あの、今連絡を貰った・・・」
「じゃないか?」
かけられた声に振り向けば懐かしい顔。
「どうして・・・」
にっこりと笑う彼に言葉がでなかった。