「スネイプ先生!出てきてください」
助けを求めてしまう。
こんなに私は弱かったのだろうかと思いつつ杖を握った。
気配がした。
「そこだぁ!!」
近くにあった皿を取って投げつけた。
「ああっ・・国宝の皿がっ!」
バリン
不協和音を伴って障子が破れて皿が割れた。
「そこにいるのはわかっているんですよ!」
抵抗せずに出てきなさいっ!
いや、抵抗する前に攻撃したら駄目だろ!というその場にいた者たちのツッコミはには届かなかった。
高らかに宣言して壊れてしまった(正確には壊してしまった)襖を勢い良く開けた。
「・・・・カァ」
いたのはベランダに止まったカラス。
「もしかして・・・・・スネイプ先生?」
カアカアと鳴いて人懐こいカラスに話しかけた。
「まさかっ!やっぱり誰か生徒に呪いでも掛けられてカラスにされちゃったんですか!?」
ホグワーツに行って治して貰おうと言って手を差し伸べた。
カラスに話しかけるにアヤコおばさんを初めとして誰も突っ込めない。
「何を馬鹿なことを言っている」
・・・・・・・・一人以外は。
「だってスネイプ先生!先生がカラスになっちゃったんですよ?」
もう大鍋もかき混ぜれないじゃないですかっ!!
くるりと声に振り向いた瞬間廊下に繋がる別室から現れたのはカラスになったはずのスネイプ先生。
「あれ?・・・・じゃあこのカラスは?」
アホゥー
バッサバッサと飛び去ったカラスに近くにあった灰皿を投げつけただった。
ようやく会えた少女は着物を着ていて器物を破損していた。
どこが危機なんだと思いつつもやっと会えた事に安堵する。
「で、どの男が我輩の婚約者に手を出そうというのかね」
じろり
睨みつけたスネイプに一同沈黙していたがアヤコさんが我に返り言った。
「まあ貴方が勝手に決められた婚約者?こんな歳にもなって御一人なんて。ちょっとロリコン入っているんじゃないですの」
言った!!
も含めて一同に衝撃が走った。
の中にまさかと思いたくないスネイプの嗜好の疑惑が生まれる。
「・・・・ロリコンとはなんだね」
スネイプだけが理解してない。
「えーっと・・・幼い少女に性的衝動を覚えたりする人のことですよ。あはははは」
なんで私が説明しなきゃいけないんだろう・・・。
嫌だなーとが思ったのは内緒である。
笑って誤魔化せなの言葉にスネイプは理解すると同時に言った。
「我輩はロリ・・っ」
「アヤコ叔母さん、結納はやっぱり早すぎだと俺も思うよ」
スネイプの心の叫びは無常にも遮られた。
「連・・・」
連兄はアヤコさんを笑顔で説得する。
「俺は大学生だけどはまだ中学生だし。俺にしてもこの人にしても変態の称号は受けたくないなあ」
「・・・・我輩は変態ではない」
ぼそりと呟かれたスネイプの言葉はアヤコさんに軽く流されてしまった。
「そうねえ・・。じゃあさん、連とあと数日よく話せばいいわ。絶対そちらの方よりいい話だと思うと思うわ」
スネイプ先生はパクパクと口を開けていたが結局傍観に徹することにしたようだ。
おばさんパワーには誰も勝てないと相場が決まってる。
「私・・・そろそろ帰らないと」
「貴女のお父さんが数日でいらっしゃられるらしいからそれまでにそちらとお別れしておいて頂戴ね」
アヤコさんはでは、と仲人のおじさんたちと部屋を出て行った。
佐和子お姉ちゃんも何か言いたげにこっちを見ていたけどアヤコさんの後をついて部屋から出て行った。
「危機一髪だったな」
ふうと焦っているように見えない笑顔で連兄が言った。
「いきなり結納って早すぎだよ」
何もわかってないだろうスネイプ先生に結納について説明した。
「・・・・・・何故そんなに急ぐのかね」
「遺産相続じゃないの?」
はアヤコさんが言っていた理由を口にした。
「違う。アヤコ叔母さんは祖父さんへの謝罪が欲しかったんだ」
それまで口を噤んでいた凛が言った。
「私のお祖母ちゃんが捨てた婚約者ってヤツ?」
「きっと自分の父親が捨てられたって言うのが悔しいんだと思う」
凛はちょっと苦笑気味に言った。
「なあ・・・ちょっといいか?」
凛の言葉にはわけもわからず頷いたのだった。
「ウチの事で巻き込んでごめん」
中庭に呼び出されて謝られる。
アヤコさんでも連兄でもなく凛に。
「別にいいって。連兄とか久しぶりに会えて楽しいし」
気にしなくていいと手を振って答えればぼそりと何か呟かれる。
「何?聞こえない」
「・・・・っだから本当にあんなヤツがいいのかって聞いたんだよ!」
「?・・・もしかしてスネイプ先生?」
凛のいう『あんなヤツ』にようやく思い至る。
「俺・・・ずっとが好きなんだ!だから兄貴だったら仕方ないかもって思っていたけど・・」
いきなりな言葉に驚く。
ずっと苛められていたのでそんなこと思いもしなかった。
「凛・・」
「我輩の婚約者に手を出すのはやめて貰おう」
後ろからがっちりホールドされて見上げれば不機嫌そうなスネイプ先生。
「俺はあんたに負けない、絶対の婚約者なんて認めない!!」
凛の言葉にスネイプ先生はふんと鼻で笑った。
「お前などに認めて貰わずともが選んだのは我輩だ」
そうだな?
耳元で囁かれて恥ずかしくなる。
日本人は基本的にシャイなんですって。
人前でこんな風に言われるのは出来れば謹んで遠慮したい。
てか先生別人じゃないですか?
「お前の気持ちはわかったがお前の兄はどう思っているんだ?」
当面のライバルは兄の方かと弟へスネイプは尋ねた。
にこにこ笑顔を浮べている男は信用できないというのが心情だ。
先ほど少し喋ったかぎりではそんなに乗り気と思えなかったがなとスネイプは一人呟いた。
「何か訳ありみたいですよ?」
きょとんとしつつ他人事のように呟いたに
「「お前の事だろ(うが)っ!!」」
とスネイプと凛は怒鳴りつけたのだった。
凛と別れてホテルのロビーで言った。
「いやー。でもスネイプ先生が来てくれるとは思いませんでした」
あははと笑うは照れているらしかった。
「でももうちょっと早くても良かったんじゃないですか?」
ヒーローは遅れてやってくると相場は決まっているけれど。
「散々な目にあったからな」
の最もな言葉にうんざりと自らに降りかかった受難に対して呟いた。
「へえ・・・誰かに呪われてたんじゃないですか?」
結構恨み買ってそうですもんねーと言うにむっとした表情で睨む。
「来てくれなかったら婚約解消の危機でしたねー」
「ふん。それ位でするつもりはない」
ヒーローというよりは断然悪役な笑みを浮かべ囁かれる。
真っ赤になったにスネイプは暇なら付き合いたまえと手を差し伸べた。
「宿題が・・・」
「まだ済ませてなかったのかね」
そんな話題を話しながら奇妙というか珍妙な二人組みはホテルの部屋へと向かったのだった。