その幼い小さな命は小さな手を精一杯伸ばして嬉しそうに幸せそうに笑った。











子供、それも生まれたばかりの赤ん坊は周りの感情に酷く敏感なのだと聞く。

それも付け焼刃で学んだ育児本の知識であるので甚だ心もとない。

専門分野である魔法薬学などは何冊も専門書を読み比べ研究しているから細部に至るまで理解できていると思っている。

だが目の前の生き物、いや子供はふえふえと泣いている。

何が気に入らないのかさっぱりわからない。

ミルクも人肌まで冷まして飲ませたし背中もちゃんと叩いた。

オムツも替えたばかりであるから眠いのだろうかとベビーベッドに寝かせても眠る気配など微塵もない。

大きな瞳を可愛らしくぱっちりと開けて手を伸ばしている。

仕方なしに抱き上げればぴたりと泣き止んだ。

「どうした?寂しかったのか?」

妻となった相手も恋人になってからいつの間にか抱きしめないと眠れなくなっていたなと思い出し思わず口の端が緩んだ。

似ているのは外見だけではなく寂しがりやな所まで似たらしい。

愛する者との子供なのだと改めて腕の中の温もりを再認識したのだ。

暫く床にボールを転がして遊んでやっていたが子供よりもセブルスの方が眠くなってしまった。

研究を今朝方までしていたせいだろう。

それとも甘いミルクの匂いのするがいたからかもしれない。

「そろそろ眠ってくれると我輩としても助かるのだがな」

ぱっちりと開かれた瞳に無理だろうなと苦笑しつつソファーへ横になる。

ひょいと抱き上げればきゃっきゃっと喜ぶ様がまた可愛らしい。

胸というか腹辺りにを乗せたままソファーの下の床にクッションを敷き詰める。

これで転落しても怪我はしないだろう。

掌でぽんぽんと暖かい柔らかい体をあやしながらゆるゆると瞼を閉じていった。
















「ぱーぱ」

















遠くで柔らかな甘い声が耳をくすぐった。

そっと撫でてやればその温もりもいつのまにかくぅくぅと規則正しい寝息を立て始めているようだった。

ミセス・スネイプが帰宅した時ソファーに眠る夫と娘、それに敷き詰められたクッションに目を丸くした後、

柔らかく、幸せそうに微笑んでそっと掛布を掛けてやったのは彼らの知らないこと。

その日の夜、がパパと初めて言ったと大喜びするスネイプの姿があるのだがそれはまたもう少し後の話。