自分の生まれてから今までの家路、というもの。
それが味気ないものだったのだと知ったのは待っていてくれる人が出来て気付けた事だ。
暗い夜道に見つける暖かな灯りの燈った家を見つけるとほっと心が休まるのだ。
「今、帰った」
「パパっ!お帰りなさいっ」
リビングで待てばいいのに玄関に出てきて待っていた娘から迎えの言葉と熱烈な抱擁を貰い頬が緩むのを感じた。
「お帰りなさい。お疲れ様」
ふわりと夕飯のいい匂いをさせながら顔を覗かせた妻はまあ、妬けちゃうわねと笑っている。
ぶらんと首に齧り付いてる小さな軽い身体を抱え上げ妻と娘に口付けを落としてクローゼットへと向かった。
「パパ、早くきてね」
着替えるために下ろせばパタパタと軽い音を立てて走り去った姿を見送ってコートを脱いだ。
寛いだ服へと着替えてダイニングへと向かう。
結婚してからは妻の趣味もあり冬は手作りのベストやセーターを着るようになった。
独り身の時からはやはり変わった自分を再認識しながら部屋に入ればパーンと破裂音が鳴った。
テーブルの上には手の込んだ豪華な食事が並んでいた。
「ね、パパにおめでとうの歌をあげます」
ケーキを前にして最愛の妻と娘に誕生日を祝われる。
そのなんとも擽ったい幸福にますます頬が緩んだ。
ああ、生徒には見せられない。
鬼か悪魔のように思われている職場での自分が一瞬で崩れるだろうと思いながら幸福に感謝する。
「パパ、お誕生日おめでとうっ」
「セブルス、おめでとう」
祝福の歌で、共に祝ってくれる愛しい家族にセブルス・スネイプはもう一度それぞれに口付けを贈ったのだった。