まっくらな道を走る

光を

温かい腕を求めて

貴方を求めて










『こっちへおいで』

生温かい風が首筋を撫でた。

汗がじわりと背を流れた。

「やだ」

言葉は微かにしか聞こえない。

「ヤダっ!!」

自らの発した声により少女は目を覚ました。

周りを見ると自分の家。

ただいつもと違うのは夕暮れ時なのにも関わらず灯りは灯っていない。

零れ落ちそうな涙を堪え寝ていたソファーから降りた。







「パパぁ」

耳を打った声にスネイプは視線を向けた。

キィと僅かに軋んだ扉の隙間から入ってきた少女にふっと表情が和らぐ。

それも少女の様子から変わるのだが。

「どうした!?・・・・泣いたのか?」

抱き上げるとその幼い頬に涙の後。

睫毛には水滴。

こくりと頷くが小さな腕をスネイプに廻した。

精一杯の力でしがみ付く娘をそっと撫でる。

「怖い夢でもみたか」

その言葉にの瞳に涙がまたあふれ出した。

「怖かったのっ・・パパもっ・・・ママもいなくてっ・・」

まっくらだったと泣く娘に夕暮れも過ぎた時間と気がついた。

「そうか。すまなかったな。灯りをつけていなかったな」

妻の帰りが遅くなると聞いたのを忘れたわけではなかったが研究に熱中しすぎていたらしい。

杖を一振りすると部屋にぽっと灯がともる。

「もう怖くないだろう」

そういって顔を覗き込めば頷く

「パパがいれば暗いのもかみなりも怖くないよ?」

ゴキブリだってやっつけてくれるもん。

娘のヒーローになって嬉しくない父親がいるはずもなくスネイプもその例に漏れなかった。

が怖いものはパパがやっつけてやると約束しよう」

十年後男友達をやっつけられると知らず少女はわーいと喜んだ。

「だからもう少し寝てなさい」

いつもより短い昼寝にそう言えば右手の人差し指をきゅっと小さなてのひらが握り締めた。

「パパも」

お願いと愛娘にみつめられてはスネイプとて断れるはずもなくを抱いたまま寝室へと場所を移した。

















数時間後、帰宅したミセス・スネイプが見たものは仲良く眠っている父娘。

カメラで一枚写真を撮って呟いた。

が一番のライバルね」

そう言って笑いながらキッチンで夕飯の用意を始めた。

愛する二人のために。

お腹をすかせた二人が起き出すのはもう少し後。