暗い寝台の中で男は休んでいた。
もぞり
シーツの一部が大きく膨らんだ。
もぞもぞもぞ
ぷはっ
小さな顔が魘されるような表情で眠っているスネイプの顔の横にシーツの下から現れた。
「パパぁ起きてよぉ」
ぺちぺちと頬を叩いて起こすという手荒なまねがスネイプに出来るのは世界広しと言えどもこの少女と彼の妻、くらいなものだろう。
ようやく一段落した実験を片付けると扉をそっと開けた。
寝室の扉でなく愛娘の部屋の扉だ。
ベッドの上ですぅすぅと可愛らしい寝息を立てている様子に満足しそっと頭を撫でて毛布を肩まで掛けてから静かに部屋を後にする。
寝室へ戻るとベッドには妻が眠る前の読書をしていた。
「はよく寝ていたでしょ」
「ああ、お前に似ているな」
そう告げてからキス。
「明日は早いから駄目」
「わかっている」
ぎゅっと細い身体を抱き寄せて疲れた身体はすぐに眠りに落ちていった。
「パパぁ起きて〜」
頬に当たる子供特有の高い体温の掌はとても小さくていとおしい。
ホグワーツにいる生徒と違うのは自らの娘であると同時に愛する妻の娘だからだなと愛らしい声に笑う。
「やっと起きた〜パパったら寝ぼすけなんだから」
口を尖らして言う様は親ながら可愛らしいと思わずにいられない。
いや、親だから余計にそう思うのだろうか。
「レディーはそんな顔をしたら駄目だろう?」
ちゅっと頬にキスをしたらにこっと笑う愛しい娘。
「レディーだもん!」
えへへと笑いながらスネイプに強請る。
「今日はね、ママの作った御飯を持って遠足に行くんだって。パパも一緒に行ってくれる?」
お仕事が忙しいなら、ちゃんとがまんするよ?
そう言いつつも少しだけ涙目になっている。
「大丈夫だ。と一緒に行くと前に約束したろう?」
「ママも、だよ!」
やったーと言いながらベッドから飛び降りた小さな背中に言う。
「もう少ししたら降りると言ってくれるかね」
「わかったー」
ママ、パパも一緒に行ってくれるってと喜ぶ娘の声を聞きながらシャワーを浴びるべくベッドを降りたのだった。
「パパ、一緒に行って・・くれて・・ありがと・・う」
うとうとと夢の中に漕ぎ出しつつも礼をいうに苦笑する。
こんな所は母親にそっくりだなと思うのだ。
「との約束を破るはずがないだろう」
楽しかったなと呟いて髪を梳く。
野に咲く薬草を摘んで自分は実験の材料を確保し妻と娘はその薬草の花で冠を作った。
『ママは春の女王様みたい』
『じゃあはお姫様ね』
くすくすと世界一愛する妻と娘が笑う姿はとても幸せで。
「また一緒に出かけよう」
昼食の後は服が汚れるのも構わずに草の上で昼寝をした。
『そろそろもお姉さんになりたいのかもね』
そう言ったはとても綺麗で。
『では本人にどちらが欲しいか聞くべきかね』
弟か妹かと笑う。
自分としては娘の方がいいのだが。
「さて、もう少しやるか」
娘を寝かしつけたスネイプ教授が最愛の妻の待つ寝室へと向かうのは実験が終わる二時間後。