パパぁー!
とてとてと軽い足音を立てながら近づいて来た子供はぽすりとローブにぶつかった。
「着物で走ると危ないぞ?」
結婚前に妻となった少女が危うくこけかけたのを思い出していた。
月日の流れるののなんと早いことか。
眼下にはその少女が妻となり産んだ愛しい娘。
子供用の着物は華やかで結上げている髪に付けられた飾りがよく黒髪に映えて小さな鈴がちりんと音を立てる。
「だいじょうぶだよー。えっと、えっとね・・・あれえ?」
の大きな瞳は些かきょろきょろとしていて眉も下がっている。
どうした?と聞こうとしたら疑問は解決したらしい。
「そーだっ!パパっ、あけましておめでとうございますっ」
にぱっと笑った表情は華が咲いた様で思わず笑ってしまう。
「ああ、あけましておめでとう」
母親から日本語の挨拶を聞いたのかときちんと言えたことを誉めてやる。
「は偉いな。日本語の挨拶をちゃんとできるなんて」
「ママがごーに入ればごーに従えって。パパごーってなぁに?」
少し誇らしげに頬を染めた娘は物知りな父親に聞いた。
キラキラと輝く瞳は大好きな父親ならなんでも知っているという期待と信頼に満ちていた。
娘の言葉に着物を着るからにはと妻が言ったのだろうなと苦笑した。
「郷というのはな、特別ルールみたいなものだ。はクィディッチを知ってるだろう?」
「うん!箒に乗るやつ!ポッターのお兄ちゃんが上手なんでしょ?」
娘からでた仇敵の息子の名に小さく舌打ちする。
勿論娘に聞こえないように。
「ポッターの奴はどうでもいいがな。クィディッチは箒から下りたらいけないだろう?」
こくこくと頷く娘に諭すように話す。
「クィディッチをする時は箒に乗る、けど今はは箒に乗っていないだろう?」
「うん!じゃあごーってお約束ってこと?」
聡い娘に満足しながら頭を撫でた。
「そうだな。その時に、合う約束みたいなものだ」
「またクィディッチを引き合いにして説明したの?」
呆れたような声が階段上から掛けられた。
「ママきれーい!」
ぴょこぴょこと飛び跳ねる娘の気持ちは少しわかる。
艶姿とはこの事だなとぼんやりと思う。
「ありがとう、。あけましておめでとう、セブルス。貴方は何かないの?」
見惚れていたスネイプはおもむろに口を開いた。
「惚れ直したな、ミセス・スネイプ」
綺麗だと耳元で囁く。新年の挨拶より先に。
「セブルスも素敵よ、じゃあ新年パーティーに行きましょうか」
するりとスネイプの右腕に最愛の妻が腕を絡めた。
左手には愛娘のがきゅっと手を握っている。
両手に花だなと思いながら口にする言葉。
「では我輩の大事な姫達をエスコートさせて貰う栄誉を賜ろうか」
愛しているぞとそれぞれにキスを落として会場へと向かったのだった。
「お兄ちゃん達あけましておめでとうございますっ!」
にっこり笑いパーティーでたくさんの異性に囲まれた娘を見てスネイプの口から些か気の早い「嫁にはやらんぞ!」発言が飛び出したのはお約束である。